データde出〜た
第1156回 混戦模様の秋華賞を制する馬は?
2017/10/12(木)
今週は、牝馬三冠の最終戦・秋華賞が行われる。既にスプリンターズSは終了したが、いよいよここから本格的な秋のG1シーズンの開幕だ。12年のジェンティルドンナや、14年のショウナンパンドラ、そして昨年のヴィブロスなど、後に牡馬相手の大レースを制する馬も優勝馬に名を連ねており、今後へ向けても注目の一戦になる。今年はどの馬が勝利を手にするのか、過去の傾向を分析してみよう。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JV、馬天楼 for データde出〜たを利用した
■表1 人気別成績
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
1 | 3-1-3-3/10 | 30.0% | 40.0% | 70.0% | 66% | 86% |
2 | 3-2-1-4/10 | 30.0% | 50.0% | 60.0% | 91% | 90% |
3 | 3-1-0-6/10 | 30.0% | 40.0% | 40.0% | 216% | 82% |
4 | 0-1-1-8/10 | 0.0% | 10.0% | 20.0% | 0% | 65% |
5 | 0-1-0-9/10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0% | 40% |
6 | 0-1-1-8/10 | 0.0% | 10.0% | 20.0% | 0% | 71% |
7 | 0-2-0-8/10 | 0.0% | 20.0% | 20.0% | 0% | 98% |
8 | 0-1-2-7/10 | 0.0% | 10.0% | 30.0% | 0% | 165% |
9〜 | 1-0-2-96/99 | 1.0% | 1.0% | 3.0% | 30% | 94% |
過去10年、1〜3番人気が3勝ずつを挙げ、4番人気以下の優勝は08年のブラックエンブレム(11番人気)のみ。また、9番人気以下の好走馬はほかに同年の3着プロヴィナージュと、13年3着のリラコサージュで、計3頭止まり。おおむね8番人気までが好走の目安となり、4〜5番人気よりは7〜8番人気のほうが複勝回収率は高い。
■表2 枠番別成績
枠 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | 過去5年 |
1枠 | 0-4-1-15/20 | 0.0% | 20.0% | 25.0% | 0% | 84% | 0-2-1-7/10 |
2枠 | 2-2-2-14/20 | 10.0% | 20.0% | 30.0% | 165% | 94% | 0-2-0-8/10 |
3枠 | 2-0-1-17/20 | 10.0% | 10.0% | 15.0% | 66% | 43% | 1-0-1-8/10 |
4枠 | 1-0-0-19/20 | 5.0% | 5.0% | 5.0% | 31% | 11% | 1-0-0-9/10 |
5枠 | 0-2-0-18/20 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0% | 35% | 0-1-0-9/10 |
6枠 | 0-1-2-17/20 | 0.0% | 5.0% | 15.0% | 0% | 29% | 0-0-1-9/10 |
7枠 | 3-0-3-23/29 | 10.3% | 10.3% | 20.7% | 22% | 320% | 1-0-2-11/14 |
8枠 | 2-1-1-26/30 | 6.7% | 10.0% | 13.3% | 27% | 37% | 2-0-0-13/15 |
枠番別では、2、7枠が好走6頭、1枠5頭、8枠4頭と続き、全体としては中枠が今ひとつ。特に過去5年では、1〜3枠と7〜8枠からは最低2頭の好走馬が出ているのに対し、4〜6枠は各1頭にとどまる。
■表3 脚質別成績
脚質 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
逃げ | 0-1-1-9/11 | 0.0% | 9.1% | 18.2% | 0% | 576% |
先行 | 2-2-2-29/35 | 5.7% | 11.4% | 17.1% | 16% | 57% |
中団 | 8-4-7-62/81 | 9.9% | 14.8% | 23.5% | 75% | 89% |
後方 | 0-3-0-48/51 | 0.0% | 5.9% | 5.9% | 0% | 15% |
マクリ | 0-0-0-1/1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
脚質別の成績では、「中団」からの好走馬が圧倒的に多く、3着以内30頭中19頭を占める。「中団」は該当馬が多く好走確率はさほど高く出ないレースも多いが、このレースでは勝率から複勝率まですべてトップだ。ただ、「後方」になると短い直線で勝ち切るには至っていない。
■表4 前走ローズS組の前走着順・人気別成績
前走 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
前走1着 | 2-3-1-3/9 | 22.2% | 55.6% | 66.7% | 45% | 105% |
前走2着 | 2-2-1-5/10 | 20.0% | 40.0% | 50.0% | 62% | 127% |
前走3着 | 0-2-1-7/10 | 0.0% | 20.0% | 30.0% | 0% | 146% |
前走4着 | 2-0-0-7/9 | 22.2% | 22.2% | 22.2% | 83% | 35% |
前走5着 | 0-1-0-2/3 | 0.0% | 33.3% | 33.3% | 0% | 133% |
前走6〜9着 | 0-0-0-19/19 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
前走10着〜 | 1-0-1-14/16 | 6.3% | 6.3% | 12.5% | 186% | 199% |
前走1人気 | 5-0-1-3/9 | 55.6% | 55.6% | 66.7% | 140% | 80% |
前走2人気 | 0-2-0-8/10 | 0.0% | 20.0% | 20.0% | 0% | 24% |
前走3人気 | 0-1-0-7/8 | 0.0% | 12.5% | 12.5% | 0% | 77% |
前走4人気 | 2-1-0-5/8 | 25.0% | 37.5% | 37.5% | 438% | 178% |
前走5人気 | 0-2-0-5/7 | 0.0% | 28.6% | 28.6% | 0% | 85% |
前走6〜9人 | 0-2-1-18/21 | 0.0% | 9.5% | 14.3% | 0% | 69% |
前走10人〜 | 0-0-2-11/13 | 0.0% | 0.0% | 15.4% | 0% | 194% |
前走レース別では、ローズS出走馬が【7.8.4.58】と3着以内30頭中19頭を占める。そのローズS組について、同レースでの着順、人気別成績を見ると、まずローズS連対馬は【4.5.2.8】複勝率57.9%で、複勝回収率も116%を記録。3着から優勝した馬はいなかったが、こちらも複勝回収率146%と狙いは立つ。 また、表では6〜9着はすべて馬券圏外としたが、10着以下も含め、同レース6〜14着馬は【0.0.0.32】に終わっている。ただ、2桁着順でも2頭(ブラックエンブレム、リラコサージュ)が好走して、10着以下の単複回収率は100%を突破。確率は低いが、一発大穴を狙うなら大敗馬狙いも悪くはない。人気面では、同レース1番人気馬が勝率55.6%の好成績。下位人気からでも好走は可能だが、1着候補なら4番人気以内に推されていた馬が望ましい。
■表5 ローズSで1〜2着とも4番人気以下だった年(過去10年)
年 | 馬名 | 秋華賞 | ローズS | ||
人気 | 着順 | 人気 | 着順 | ||
08 | マイネレーツェル | 5 | 15 | 7 | 1 |
ムードインディゴ | 8 | 2 | 9 | 2 | |
レジネッタ | 2 | 8 | 1 | 3 | |
10 | アニメイトバイオ | 6 | 2 | 4 | 1 |
ワイルドラズベリー | 4 | 4 | 6 | 2 | |
エーシンリターンズ | 9 | 15 | 5 | 3 | |
17 | ラビットラン | ? | 8 | 1 | |
カワキタエンカ | 6 | 2 | |||
リスグラシュー | 3 | 3 |
今年のローズSは、勝ったラビットランが8番人気、2着のカワキタエンカは6番人気と、穴馬のワンツー決着だった。そこで、ローズSの1〜2着がともに4番人気以下だった年を調べると、過去10年では08年、10の2回あり、08年はムードインディゴ、10年はアニメイトバイオと、両年とも連対馬のうち1頭が本番でも2着に好走していた。ローズS上位馬をフロック視するのは危険だ。
■表6 ローズS4着以下から巻き返した馬
年 | 馬名 | 秋華賞 | ローズS | 主な実績 | ||
人気 | 着順 | 人気 | 着順 | |||
08 | ブラックエンブレム | 11 | 1 | 4 | 15 | フラワーC |
10 | アパパネ | 1 | 1 | 1 | 4 | オークス |
13 | メイショウマンボ | 3 | 1 | 4 | 4 | オークス |
リラコサージュ | 15 | 3 | 12 | 18 | スイートピーS | |
15 | クイーンズリング | 5 | 2 | 5 | 5 | フィリーズR |
ローズSで馬券圏外から巻き返した馬は表6の5頭で、リラコサージュを除く4頭は同レース5番人気以内。そして、最低でもオープン特別勝ちの実績を持っていたことで共通している。もう少し細かく見ると、メイショウマンボはほかにフィリーズR優勝、リラコサージュはフラワーC3着があるため、オークス優勝・フィリーズR優勝・フラワーC3着以内のいずれかの実績を持つことで5頭は共通している。
■表7 ローズS6番人気以下からの好走馬
年 | 馬名 | 秋華賞 | ローズS | 前々走以前の優勝 | ||
人気 | 着順 | 人気 | 着順 | |||
08 | ムードインディゴ | 8 | 2 | 9 | 2 | 忘れな草賞 |
11 | キョウワジャンヌ | 7 | 2 | 7 | 3 | 1000万 |
13 | リラコサージュ | 15 | 3 | 12 | 18 | スイートピーS |
14 | タガノエトワール | 4 | 3 | 15 | 2 | 未勝利戦 |
16 | カイザーバル | 8 | 3 | 6 | 3 | 500万 |
ローズSからはもうひとつ。同レースで6番人気以下だった秋華賞好走馬も見ておきたい。引き続き秋華賞でも人気薄の馬も多い上、オープン、重賞実績も不問。ただし、リラコサージュ以外の4頭は、同レースで馬券に絡んだ馬だった。ローズSが6番人気以下で馬券圏外では、さすがに好走の余地は少なくなる。
■表8 前走ローズS以外からの好走馬
年 | 馬名 | 秋華賞 | 前走 | 芝2000m実績 | |||
人気 | 着順 | レース | 人気 | 着順 | |||
07 | ウオッカ | 1 | 3 | 宝塚記念 | 1 | 8 | 未経験 |
08 | プロヴィナージュ | 16 | 3 | シリウスS | 11 | 16 | 未経験 |
09 | ブエナビスタ | 1 | 2→3 | 札幌記念 | 1 | 2 | 0-1-0-0 |
10 | アプリコットフィズ | 2 | 3 | クイーンS | 2 | 1 | 未経験 |
11 | アヴェンチュラ | 2 | 1 | クイーンS | 1 | 1 | 未経験 |
12 | アロマティコ | 6 | 3 | ムーンライトH | 1 | 3 | 1-0-1-1 |
13 | スマートレイアー | 2 | 2 | 夕月特別 | 1 | 1 | 未経験 |
14 | ショウナンパンドラ | 3 | 1 | 紫苑S | 1 | 2 | 2-1-0-0 |
15 | マキシマムドパリ | 8 | 3 | 甲武特別 | 1 | 1 | 1-0-1-0 |
16 | ヴィブロス | 3 | 1 | 紫苑S | 3 | 2 | 1-1-0-0 |
パールコード | 4 | 2 | 紫苑S | 2 | 5 | 1-1-0-1 |
最後に、ローズS以外からの好走馬は表9の11頭になる。表からもわかる通り、昨年以外はすべて1頭ずつ。逆に言えば、ローズS組2頭+別路線1頭だった。この組の11頭中9頭は前走2番人気以内で、前走が芝だった10頭はすべて前走3番人気以内である。また、11頭中8頭は前走3着以内のため、3番人気以内かつ3着以内が理想だ。加えて、近年は芝2000mで優勝実績のある馬ばかりが好走(過去5年の6頭中5頭)するようになっていることにも注意したい。 なお、紫苑Sが重賞に格上げされた昨年は2頭好走。一方、12年から中10週になったクイーンS組は、同年以降に出走した3頭が3、5、8番人気で6、11、16着と、すべて人気を下回る結果に終わっている。
【結論】
過去10年の優勝馬10頭中9頭が3番人気以内から出ている秋華賞。2〜3着候補は8番人気以内が一応の目安になる。前走はローズS組が好走馬の多数を占めており、特に同レース1番人気馬や連対馬は好走確率が高く、人気薄で連対した馬も侮れない。ローズS以外からの好走馬では、前走上位人気で馬券に絡んでいる馬が中心になる。そして芝2000m優勝実績を持つことも、近年の別路線組に共通する傾向だ。
今年は各馬とも一長一短、特に1着候補の選定は難しい一戦となった。表1に挙げたように、まず1〜3番人気から選ぶのが妥当で、今年はアエロリット、ファンディーナ、リスグラシューあたりになりそうな下馬評だ。このうち、傾向から穴が少ないのはリスグラシュー。表4でローズS「3着」や「3番人気」を個別に見ると勝ち馬が出ていないのは気になるものの、大きく「4番人気以内」「4着以内」と見れば問題ない。道中の位置取りも桜花賞やオークスくらい、前走より少し前で運べれば好走馬の多い「中団」になる(表3)。ただ、仮に3番人気以内を外すと、1着候補としては評価が下がる点には注意したい。
4番人気以下が予想されても優勝は可能と考えるなら、まずは昨年2頭が好走した紫苑S組から、優勝馬のディアドラ。同レース1番人気1着で、芝2000m優勝実績もクリア(表8)。差し脚質も好材料だ。もし3番人気以内に食い込めば一気に優勝候補筆頭格まで浮上する。 その他では、ローズS組は連対馬の成績が良く(表4)、4番人気以下のワンツーだった年でも、どちらか1頭は2着に入っているため(表5)、今年のラビットラン、カワキタエンカも侮れない。ただ、ローズSで5番人気以下だった馬から優勝馬が出ていないことは(表4、7)、今回の人気とあわせて気になるところで、2〜3着候補という色合いが強くなる。
なお、上位人気が予想されるファンディーナは、ローズS1番人気(表4)や、同レース馬券圏外でもフラワーC好走実績を持つ点は好材料(表6)。ただし、ローズS6〜14着馬はまったく好走がなく(表4本文)、6着馬だけ見ても【0.0.0.6】。トールポピー(10着)、マルセリーナ(7着)、ローブティサージュ(11着)、レッドリヴェール(6着)と、G1優勝実績馬ですら掲示板外敗退を喫している。 そしてアエロリットは、クイーンSを2番人気で制してきた点は良いが(表8)、2000m未勝利馬は別路線組過去5年の好走馬6頭中1頭のみ。加えて中10週になってからのクイーンS組は、すべて人気を下回る結果に終わっている(表8本文)。また、本文では触れていないが、関東馬は過去10年連対率5.2%止まり(関西馬15.7%)。特に美浦で追い切られた関東馬は昨年1番人気10着のビッシュなど、馬券圏外が続いているのも不安材料だ。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。