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第1143回 明日のG1馬はいるか!? 札幌2歳Sの傾向とは
2017/8/28(月)
今週は土曜日に札幌2歳Sが行われる。年末のG1に向けて重要な一戦だが、その後のクラシックなどにもつながる注目の一戦だ。いつものように過去10年の同レースを分析し、傾向を探ってみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 過去10年の札幌2歳S好走馬
年 | 着順 | 馬名 | 人気 | 間隔 | 前開催 | 前走レース名 | 前距離 |
16年 | 1 | トラスト | 5 | 2 | 2札2 | クローバ | 1500 |
2 | ブラックオニキス | 10 | 2 | 2札2 | クローバ | 1500 | |
3 | アドマイヤウイナー | 7 | 6 | 2函6 | 新馬 | 1800 | |
15年 | 1 | アドマイヤエイカン | 2 | 7 | 2函4 | 新馬 | 1800 |
2 | プロフェット | 1 | 5 | 1札2 | 新馬 | 1800 | |
3 | クロコスミア | 8 | 3 | 1札5 | コスモス | 1800 | |
14年 | 1 | ブライトエンブレム | 5 | 10 | 3東7 | 新馬 | 1600 |
2 | マイネルシュバリエ | 11 | 6 | 2福8 | 新馬 | 1800 | |
3 | レッツゴードンキ | 7 | 2 | 2札2 | 新馬 | 1800 | |
※13年 | 1 | レッドリヴェール | 2 | 13 | 3阪1 | 新馬 | 1600 |
2 | マイネグレヴィル | 4 | 3 | 3函5 | コスモス | 1800 | |
3 | ハイアーレート | 6 | 6 | 2福8 | 新馬 | 1800 | |
12年 | 1 | コディーノ | 3 | 3 | 1札8 | 新馬 | 1800 |
2 | ラウンドワールド | 1 | 3 | 1札7 | コスモス | 1800 | |
3 | エデンロック | 9 | 6 | 1札2 | 新馬 | 1800 | |
11年 | 1 | グランデッツァ | 1 | 2 | 2札3 | 未勝利* | 1800 |
2 | ゴールドシップ | 2 | 3 | 2札1 | コスモス | 1800 | |
3 | マイネルロブスト | 5 | 5 | 1札6 | クローバ | 1500 | |
10年 | 1 | オールアズワン | 3 | 5 | 1札5 | 未勝利* | 1800 |
2 | アヴェンチュラ | 2 | 15 | 3阪2 | 新馬 | 1600 | |
3 | アドマイヤセプター | 1 | 6 | 1札3 | 新馬・牝 | 1500 | |
09年 | 1 | サンディエゴシチー | 3 | 2 | 2札7 | クローバ | 1500 |
2 | モズ | 4 | 4 | 2札4 | 新馬 | 1800 | |
3 | アーバンウィナー | 6 | 7 | 2新1 | 新馬 | 1800 | |
08年 | 1 | ロジユニヴァース | 1 | 13 | 3阪6 | 新馬 | 1800 |
2 | イグゼキュティヴ | 5 | 3 | 2札1 | コスモス | 1800 | |
3 | モエレエキスパート | 3 | 5 | 1札6 | クローバ | 1500 | |
07年 | 1 | オリエンタルロック | 6 | 4 | 1札7 | 未勝利* | 1800 |
2 | サブジェクト | 1 | 7 | 1札2 | 新馬 | 1800 | |
3 | ホウザン | 13 | 3 | 2札1 | コスモス | 1800 |
表1は過去10年の札幌2歳Sの好走馬。函館開催で行われた13年の分も含めている。08年優勝のロジユニヴァース(日本ダービー)、10年2着のアヴェンチュラ(秋華賞)、11年2着のゴールドシップ(皐月賞・菊花賞)など、後にG1を勝つことになる馬が多数いる。一般的には年末のG1へ向けての前哨戦という位置づけだが、翌年のクラシックにつながる一戦となっている。そこにはやはり距離が影響しているのだろう。1800mという中距離で行われていることが大きい。同時に洋芝という特殊な条件下にあるのだが、中央のレースにも対応はできている。ただ、東京などの広いコースで瞬発力を生かすというよりも、スピードの持続力で勝負するタイプが多いような気がする。
好走馬の人気を見ると二けたでの激走は3例ある。フルゲートが14頭ということを考えると、決して少なくない印象だ。昨年2着のブラックオニキスと、07年3着のホウザンは前走札幌のオープン特別を使っていた。二けた人気ではなかったが、昨年優勝のトラストも前走クローバー賞を使い2着と好走。同レースの1、2着馬が入れ替わっただけであり、結果的には昨年はクローバー賞のレベルが高かったということになる。オープン特別のレベルを正しく判断できるかは、このレース攻略のカギになると言えるだろう。
前走とのレース間隔はやや極端な傾向。表では2と示している(厳密には中1週のローテーション)馬の好走が多い。また、10(中9週)週以上開いていた馬の好走もあり、総合的にはこのタイプが多くなっている。特に中9週以上の馬は、前走北海道以外を使っていた馬となる。以前は他場で勝ち上がってきた馬の好走はほとんどない傾向だったが、近年はそんなことはなくなってきた。ただ、長距離輸送を伴い、環境がガラリと変わるのでゆったりとしたローテーションが逆に必須になると言えるかもしれない。
そうした他場からきて結果を残した馬がロジユニヴァースやアヴェンチュラ、レッドリヴェールなどである。今後、このようなタイプの馬が出てきたら後々のG1でも注目してみたいところだ。
■表2 札幌2歳S出走馬の前走距離別成績(過去10年)
前走距離 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
1200m | 0- 0- 0- 10/ 10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
1500m | 2- 1- 3- 19/ 25 | 8.0% | 12.0% | 24.0% |
1600m | 2- 1- 0- 6/ 9 | 22.2% | 33.3% | 33.3% |
1700m | 0- 0- 0- 9/ 9 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
1800m | 6- 8- 7- 64/ 85 | 7.1% | 16.5% | 24.7% |
前走距離はそれほど大きな特徴はない。古馬のレースに比べてまだ距離のバリエーションが少ないということもある。札幌2歳S出走馬の前走距離別成績は表2にまとめた。1200m組の好走はない。1500m組はクローバー賞。1600m組は主に前走中央場所であり、総合的にはこの組の好走率が高くなっている。1700m組の好走はなし。1800m組は好走馬の数として最多だ。
■表3 札幌2歳S出走馬の前走レース別成績(過去10年)
前走レース名 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
新馬 | 5- 5- 5-60/75 | 6.7% | 13.3% | 20.0% |
未勝利* | 3- 0- 0-16/19 | 15.8% | 15.8% | 15.8% |
クローバ | 2- 1- 2- 9/14 | 14.3% | 21.4% | 35.7% |
コスモス | 0- 4- 2-15/21 | 0.0% | 19.0% | 28.6% |
新馬・牝 | 0- 0- 1- 3/ 4 | 0.0% | 0.0% | 25.0% |
函館2歳G3 | 0- 0- 0- 4/ 4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
中京2歳 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
前走レース別成績にも触れておくと、新馬組と未勝利組の差はあまりない。実際に勝ち上がった際のレース内容を重視すべきだろう。クローバー賞組は2勝に対し、コスモス賞組は未勝利。距離的には完全に後者が前哨戦として重要に思えるが、実際には前者の方がつながっている。
■表4 札幌2歳Sの騎手別成績(過去10年)
騎手 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
岩田康誠 | 2- 1- 1- 1/ 5 | 40.0% | 60.0% | 80.0% |
横山典弘 | 2- 0- 0- 3/ 5 | 40.0% | 40.0% | 40.0% |
柴田大知 | 1- 2- 0- 1/ 4 | 25.0% | 75.0% | 75.0% |
安藤勝己 | 1- 2- 0- 1/ 4 | 25.0% | 75.0% | 75.0% |
藤岡佑介 | 1- 0- 0- 4/ 5 | 20.0% | 20.0% | 20.0% |
武豊 | 1- 0- 0- 2/ 3 | 33.3% | 33.3% | 33.3% |
田辺裕信 | 1- 0- 0- 1/ 2 | 50.0% | 50.0% | 50.0% |
秋山真一郎 | 1- 0- 0- 1/ 2 | 50.0% | 50.0% | 50.0% |
池添謙一 | 0- 1- 0- 5/ 6 | 0.0% | 16.7% | 16.7% |
津村明秀 | 0- 1- 0- 3/ 4 | 0.0% | 25.0% | 25.0% |
■表5 札幌2歳Sの調教師別成績(過去10年)
調教師 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
(栗)須貝尚介 | 2- 1- 1- 1/ 5 | 40.0% | 60.0% | 80.0% |
(美)小島茂之 | 1- 0- 1- 0/ 2 | 50.0% | 50.0% | 100.0% |
(美)藤沢和雄 | 1- 0- 0- 6/ 7 | 14.3% | 14.3% | 14.3% |
(栗)田所秀孝 | 1- 0- 0- 4/ 5 | 20.0% | 20.0% | 20.0% |
[地]河津裕昭 | 1- 0- 0- 0/ 1 | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
(栗)平田修 | 1- 0- 0- 0/ 1 | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
(美)萩原清 | 1- 0- 0- 0/ 1 | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
(栗)作田誠二 | 1- 0- 0- 0/ 1 | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
(栗)領家政蔵 | 1- 0- 0- 0/ 1 | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
(美)和田正道 | 0- 2- 0- 0/ 2 | 0.0% | 100.0% | 100.0% |
最後にこのレースとの相性を考え、騎手別成績(表4参照)と調教師別成績(表5参照)をチェックしておく。騎手では岩田康誠騎手が2勝で、複勝率は80%。先日のエルムSもそうだったが、札幌重賞での岩田騎手の強さは目立つ。あとは柴田大知騎手にも注目。トラスト(5番人気)、マイネルシュバリエ(11番人気)、マイネグレヴィル(4番人気)と、伏兵馬をかなり持ってくる傾向だ。横山典弘騎手は2勝で、いずれも藤沢和雄厩舎の馬だ。安藤勝己騎手は引退しているので、詳細は割愛する。
調教師は須貝尚介調教師の活躍が目立つ。複勝率は80%で、送り込んできた馬のほとんどが勝負になっている。美浦では小島茂之調教師。ブライトエンブレムで勝利し、12年は9番人気のエデンロックが3着に好走している。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。