データde出〜た
第1124回 春のグランプリ・宝塚記念を分析する
2017/6/22(木)
今週は阪神競馬場で、春のグランプリ・宝塚記念が行われる。大阪杯がG1に昇格した今年は、その大阪杯と春の天皇賞を連勝したキタサンブラックが出走を予定しており、断然の1番人気が予想される。果たして「春の古馬三冠」馬がいきなり誕生するのか、それともライバルが意地を見せるのか。データから分析したい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JV、馬天楼 for データde出〜たを利用した。
■表1 人気別成績
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
1 | 2-4-2-2/10 | 20.0% | 60.0% | 80.0% | 59% | 106% |
2 | 2-2-1-5/10 | 20.0% | 40.0% | 50.0% | 100% | 78% |
3 | 1-1-2-6/10 | 10.0% | 20.0% | 40.0% | 67% | 73% |
4 | 0-0-1-9/10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 19% |
5 | 1-1-0-8/10 | 10.0% | 20.0% | 20.0% | 113% | 67% |
6 | 2-0-1-7/10 | 20.0% | 20.0% | 30.0% | 278% | 94% |
7 | 0-0-0-10/10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
8 | 2-0-1-7/10 | 20.0% | 20.0% | 30.0% | 629% | 188% |
9 | 0-1-0-9/10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0% | 81% |
10 | 0-1-0-9/10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0% | 64% |
11〜 | 0-0-2-49/51 | 0.0% | 0.0% | 3.9% | 0% | 45% |
過去10年、1番人気は連対率60.0%、複勝率80.0%と安定した成績。ただ勝率は20.0%にとどまり、優勝馬は8番人気まで出ている。また、人気薄の2〜3着も多く、特に8番人気以下の好走馬7頭中5頭は14年以降の近3年から。今年は登録馬が11頭と少ないが、12頭立てだった14年には1→9→8→12→6番人気と、勝ち馬以外は穴馬が掲示板を占めた例もあり、頭数が少ないからといって波乱度が低いと考えるのは危険だ。
■表2 性齢別成績
性別 | 年齢 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | 過去5年 |
牡・セン | 3歳 | 0-0-0-2/2 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 0-0-0-1 |
4歳 | 4-2-4-31/41 | 9.8% | 14.6% | 24.4% | 123% | 52% | 2-1-2-13 | |
5歳 | 3-3-1-27/34 | 8.8% | 17.6% | 20.6% | 70% | 49% | 2-2-0-12 | |
6歳 | 2-2-2-22/28 | 7.1% | 14.3% | 21.4% | 88% | 85% | 0-1-0-11 | |
7歳以上 | 0-0-0-28/28 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 0-0-0-12 | |
牝馬 | 3歳 | 0-0-0-1/1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | 0-0-0-0 |
4歳 | 0-1-2-6/9 | 0.0% | 11.1% | 33.3% | 0% | 207% | 0-0-2-5 | |
5歳 | 1-2-1-4/8 | 12.5% | 37.5% | 50.0% | 313% | 241% | 1-1-1-3 |
牡・セン馬の性齢別では、4歳から6歳まで好走馬は分散しており、7歳以上は好走なし。また、過去5年にかぎると、6歳馬の好走は14年2着のカレンミロティック1頭のみで、15年には1番人気のゴールドシップが15着。昨年も、連覇を狙ったラブリーデイが、上位3頭からはやや離れた4着に敗退した。こうした近年の傾向も踏まえると、4〜5歳馬が中心になる。そして牝馬は計【1.3.3.11】で複勝率38.9%。表1で触れた近3年、8番人気以下の好走馬5頭中4頭を牝馬が占めており、特に穴党なら注目を欠かせない。
■表3 枠番・脚質別成績
枠・脚質 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 | 過去5年 |
1枠 | 1-0-4-11/16 | 6.3% | 6.3% | 31.3% | 85% | 186% | 0-0-2-6 |
2枠 | 0-1-2-13/16 | 0.0% | 6.3% | 18.8% | 0% | 27% | 0-0-1-7 |
3枠 | 1-1-2-14/18 | 5.6% | 11.1% | 22.2% | 37% | 102% | 0-1-1-6 |
4枠 | 0-4-0-14/18 | 0.0% | 22.2% | 22.2% | 0% | 43% | 0-2-0-6 |
5枠 | 0-3-0-16/19 | 0.0% | 15.8% | 15.8% | 0% | 57% | 0-2-0-7 |
6枠 | 3-0-0-17/20 | 15.0% | 15.0% | 15.0% | 108% | 32% | 1-0-0-9 |
7枠 | 0-0-1-20/21 | 0.0% | 0.0% | 4.8% | 0% | 5% | 0-0-0-10 |
8枠 | 5-1-1-16/23 | 21.7% | 26.1% | 30.4% | 359% | 92% | 4-0-1-6 |
1〜4枠 | 2-6-8-52/68 | 2.9% | 11.8% | 23.5% | 29% | 88% | 0-3-4-25 |
5〜8枠 | 8-4-2-69/83 | 9.6% | 14.5% | 16.9% | 125% | 47% | 5-2-1-32 |
逃げ | 1-0-2-7/10 | 10.0% | 10.0% | 30.0% | 113% | 127% | 0-0-2-3 |
先行 | 4-7-3-28/42 | 9.5% | 26.2% | 33.3% | 79% | 94% | 3-3-1-14 |
中団 | 4-1-4-44/53 | 7.5% | 9.4% | 17.0% | 144% | 68% | 1-1-1-21 |
後方 | 1-2-1-42/46 | 2.2% | 6.5% | 8.7% | 6% | 25% | 1-1-1-19 |
枠番別では、8枠が10年で5勝の好成績。この10年のうち、11年までは開催4日目に行われていたが、12年以降の5年間は8日目に行われており、その過去5年の優勝馬はすべて6枠から外から出ている。中〜内を引いても2〜3着の可能性は残されるが、まず勝ち馬は外めの枠を引いた馬から検討すると良さそうだ。 一方脚質は、先行した馬の連対が多く、過去10年では連対率26.2%、過去5年でも連対馬10頭中6頭を占める。ただ、昨年は3コーナー10番手のマリアライト、ドゥラメンテのワンツー決着。一昨年は先行したラブリーデイを、道中最後方近くからデニムアンドルビーが追い詰めており、先行型ばかりにこだわる必要性も薄そうだ。
■表4 前走レース別成績(好走馬輩出レース)
前走レース名 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
天皇賞(春) | 4-3-2-32/41 | 9.8% | 17.1% | 22.0% | 38% | 46% |
金鯱賞 | 2-1-2-12/17 | 11.8% | 17.6% | 29.4% | 146% | 94% |
鳴尾記念 | 1-2-1-9/13 | 7.7% | 23.1% | 30.8% | 109% | 144% |
目黒記念 | 1-0-1-17/19 | 5.3% | 5.3% | 10.5% | 132% | 28% |
QE2世C | 1-1-0-3/5 | 20.0% | 40.0% | 40.0% | 134% | 72% |
メトロポリタンS | 1-0-0-0/1 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 3780% | 710% |
ヴィクトリアM | 0-2-2-6/10 | 0.0% | 20.0% | 40.0% | 0% | 269% |
ドバイシーマC | 0-1-1-4/6 | 0.0% | 16.7% | 33.3% | 0% | 38% |
安田記念 | 0-0-1-7/8 | 0.0% | 0.0% | 12.5% | 0% | 13% |
前走レース別では、天皇賞(春)出走馬が最多の7連対だが、出走数も多く好走確率はさほど高くない上、好走馬が人気馬中心のため単複の回収率は低めだ。その他では、中3週で行われていた11年までの金鯱賞、12年以降中2週になった鳴尾記念組の好走が多い。ほかに、勝ち馬こそ不在ながら好走馬4頭を出すヴィクトリアM組にも注目。また、大阪杯からの直行馬は【0.0.0.5】だが、G1昇格で傾向が変わる可能性もある。
■表5 前走天皇賞(春)からの好走馬
年 | 馬名 | 性齢 | 人気 | 着順 | 前走人気 | 前走着順 |
07 | メイショウサムソン | 牡4 | 2 | 2 | 2 | 1 |
08 | メイショウサムソン | 牡5 | 1 | 2 | 2 | 2 |
09 | ドリームジャーニー | 牡5 | 2 | 1 | 5 | 3 |
11 | エイシンフラッシュ | 牡4 | 3 | 3 | 3 | 2 |
12 | オルフェーヴル | 牡4 | 1 | 1 | 1 | 11 |
13 | ゴールドシップ | 牡4 | 2 | 1 | 1 | 5 |
14 | ゴールドシップ | 牡5 | 1 | 1 | 2 | 7 |
15 | デニムアンドルビー | 牝5 | 10 | 2 | 9 | 10 |
16 | キタサンブラック | 牡4 | 2 | 3 | 2 | 1 |
表5は前走天皇賞(春)組の好走馬9頭である。まず年齢はすべて4〜5歳。そして牝馬・デニムアンドルビーを除く8頭は3番人気以内。この4〜5歳かつ3番人気以内を満たした馬は【4.2.2.2】で全馬4着以内。このうち、4番枠以内は【0.1.2.2.】、9番から外は【4.1.0.0】と、ここでも枠順で差がついている。 また、天皇賞(春)での人気や着順はさまざまだが、同レース連対馬は【0.2.2.9】と勝利なし。対して3着以下は【4.1.0.23】。3着以下の馬が馬券圏内にまで食い込めれば、1着まで持って行く可能性が高い。
■表6 前走天皇賞(春)以外のG1からの好走馬
年 | 馬名 | 性齢 | 人気 | 着順 | 前走 | 人気 | 着順 |
07 | アドマイヤムーン | 牡4 | 3 | 1 | QE2世C | … | 3 |
09 | ディープスカイ | 牡4 | 1 | 3 | 安田記念 | 2 | 2 |
10 | ブエナビスタ | 牝4 | 1 | 2 | ヴィクトリアM | 1 | 1 |
11 | ブエナビスタ | 牝5 | 1 | 2 | ヴィクトリアM | 1 | 2 |
12 | ルーラーシップ | 牡5 | 2 | 2 | QE2世C | … | 1 |
13 | ジェンティルドンナ | 牝4 | 1 | 3 | ドバイシーマC | … | 2 |
14 | ヴィルシーナ | 牝5 | 8 | 3 | ヴィクトリアM | 11 | 1 |
15 | ショウナンパンドラ | 牝4 | 11 | 3 | ヴィクトリアM | 7 | 8 |
16 | ドゥラメンテ | 牡4 | 1 | 2 | ドバイシーマC | … | 2 |
続いて表6は、前走が天皇賞以外のG1(海外含む)だった好走馬9頭である。こちらも天皇賞(春)同様、好走馬はすべて4〜5歳馬。また、9頭中7頭は3番人気以内で、残る2頭は牝馬という点も天皇賞(春)の傾向と似ている。大きく異なるのは前走着順で、9頭中8頭が前走でも3着以内に好走した馬だった。そして、この組で唯一優勝したアドマイヤムーンは前走3着。前走連対馬に勝利がないのは天皇賞(春)と同様だ。
■表7 前走G2以下からの好走馬
年 | 馬名 | 性齢 | 人気 | 着順 | 前走 | 人気 | 着順 | 過去1年芝20〜22 |
07 | ポップロック | 牡6 | 4 | 3 | 目黒記念 | 1 | 1 | 京都記念2着 |
08 | エイシンデピュティ | 牡6 | 5 | 1 | 金鯱賞 | 2 | 1 | 金鯱賞1着 |
インティライミ | 牡6 | 11 | 3 | 金鯱賞 | 4 | 7 | 朝日CC1着 | |
09 | サクラメガワンダー | 牡6 | 3 | 2 | 金鯱賞 | 1 | 1 | 金鯱賞1着 |
10 | ナカヤマフェスタ | 牡4 | 8 | 1 | メトロポリタンS | 3 | 1 | セントライト記念1着 |
アーネストリー | 牡5 | 3 | 3 | 金鯱賞 | 1 | 1 | 金鯱賞1着 | |
11 | アーネストリー | 牡6 | 6 | 1 | 金鯱賞 | 3 | 3 | 札幌記念1着 |
12 | ショウナンマイティ | 牡4 | 6 | 3 | 鳴尾記念 | 1 | 2 | 大阪杯1着 |
13 | ダノンバラード | 牡5 | 5 | 2 | 鳴尾記念 | 3 | 3 | アメリカJCC1着 |
14 | カレンミロティック | セ6 | 9 | 2 | 鳴尾記念 | 2 | 4 | 金鯱賞1着 |
15 | ラブリーデイ | 牡5 | 6 | 1 | 鳴尾記念 | 2 | 1 | 京都記念1着 |
16 | マリアライト | 牝5 | 8 | 1 | 目黒記念 | 1 | 2 | 女王杯1着 |
最後に表7は、前走G2以下からの好走馬12頭で、ここでようやく6歳馬の好走がある。また、G1組とは違い、12頭中10頭が4番人気以下と、穴馬の好走も多く見られるのが特徴だ。前走は12頭中10頭が3着以内で、11頭が3番人気以内。基本的には上位人気で馬券に絡んできた馬が狙いだ。また、12頭中10頭は、過去1年に芝2000〜2200mのG2以上で優勝した実績を持っていた。残る2頭、08年のインティライミは前年の京都大賞典優勝、07年のポップロックは前走目黒記念を制しており、芝2000〜2500mとすれば、全馬1年以内にG2以上を制している。
【結論】
1番人気は安定しているが、勝率は20.0%にとどまる宝塚記念。人気薄でも8番人気まで優勝馬が出ているほか、頭数が少ない年でも穴馬の激走が見られる。近年は外枠の成績が良く、年齢は4〜5歳が中心。特に前走G1出走馬の好走は4〜5歳馬ばかりだ。また、前走G1連対馬は過去10年勝利なし。G2以下なら前走人気で好走し、なおかつ1年以内に芝2000〜2500mのG2以上での勝利が欲しい。
冒頭にも触れたように、今年は春のG1を連勝したキタサンブラックが大きな注目を集めている。しかし、表5〜6触れたように、前走G1連対馬が勝てていないのが過去10年の宝塚記念で、計【0.6.5.18】。複勝率37.9%と2〜3着候補としては良いものの、1着候補としてはシュヴァルグラン(天皇賞2着)ともども不安が残る。
そこで、天皇賞(春)3着以下からの逆転候補として挙げたいのが、同レースでは9着に敗退したシャケトラだ。前走G1組の好走条件となる、4〜5歳馬(本馬は4歳)で今回も上位人気の一角が予想される上、天皇賞組なら上位人気(本馬は3番人気)で3着以下に敗れた馬が逆転候補という傾向。走り慣れた距離に戻って一変もあり得る。
一方、天皇賞(春)1、2着のキタサンブラック、シュヴァルグランは5歳で、2〜3着候補としては特にこれといったマイナス材料はない。ともに今回も上位人気が予想されるが、表5本文で触れたように、天皇賞組の4〜5歳馬かつ今回3番人気以内なら【4.2.2.2】と安定している。また、表3や表5本文で触れたように外枠の優勝馬が多いため、枠順抽選の結果次第ではシャケトラも含め3頭が互角になる可能性もある。
前走天皇賞(春)以外の登録馬は前走3着以内が目安だが、今年は全馬4着以下で上記3頭との比較では苦しい。そんな中では、近年の傾向から牝馬のミッキークイーン。15年にはヴィクトリアM8着のショウナンパンドラが11番人気で3着に好走しており、同レース7着でも穴馬としては注目できる。その他では、前走レース別から鳴尾記念組のスピリッツミノル。そしてG1昇格で傾向が変わる可能性のある大阪杯組・サトノクラウン、ミッキーロケットあたりは、資金やオッズとの相談で余裕があれば押さえておきたい。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。