データde出〜た
第1123回 春のG1と宝塚記念の関連は?
2017/6/19(月)
今週は阪神競馬場で、宝塚記念が行われる。競馬番組上は既に夏競馬だが、春のG1戦線を締めくくるグランプリとの位置づけだ。そこで月曜掲載分の今回は、春のG1優勝馬と宝塚記念の関係を、騎手、厩舎、種牡馬から見てみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。なお、通常の宝塚記念過去10年の傾向については、木曜掲載分で紹介する予定だ。
■表1 宝塚記念優勝騎手の春G1成績
年 | 馬名 | 騎手 | 騎手の春G1 | 主な成績 | G1優勝馬 |
07 | アドマイヤムーン | 岩田康誠 | 0-0-1-6 | ダービー3着 | … |
08 | エイシンデピュティ | 内田博幸 | 0-0-0-9 | ダービー6着 | |
09 | ドリームジャーニー | 池添謙一 | 0-0-1-3 | 天皇賞(春)3着 | |
10 | ナカヤマフェスタ | 柴田善臣 | 0-0-1-2 | オークス3着 | |
11 | アーネストリー | 佐藤哲三 | 0-0-0-3 | 皐月賞4着 | |
12 | オルフェーヴル | 池添謙一 | 1-0-0-6 | 高松宮記念1着 | カレンチャン |
13 | ゴールドシップ | 内田博幸 | 1-0-1-5 | ヴィクトリアM1着 | ヴィルシーナ |
14 | ゴールドシップ | 横山典弘 | 1-0-0-7 | ダービー1着 | ワンアンドオンリー |
15 | ラブリーデイ | 川田将雅 | 1-0-0-5 | 安田記念1着 | モーリス |
16 | マリアライト | 蛯名正義 | 1-0-1-6 | 皐月賞1着 | ディーマジェスティ |
まず、今回このデータを調べるきっかけになった宝塚記念優勝騎手から。近年の宝塚記念では、既に春のG1を勝っているジョッキーが優勝する例が多く思えたため、過去10年の優勝騎手について春G1成績を調べたのが表1である。G1だけに実績のある騎手が勝ち、そうなれば春に他のG1を制していても当たり前、とも思えるが、実際は12年を境にきっちり傾向が分かれた。
07年〜11年は、この宝塚記念が同年春のG1初制覇だった騎手ばかり。対して12年以降は、春のG1優勝騎手ばかりが勝利を挙げている。また、春G1を制した馬とは異なる馬で、この宝塚記念を制しているのも特徴的だ。00年以降の宝塚記念で、春のG1優勝馬が2勝目を挙げたのは、00年テイエムオペラオー、03年ヒシミラクル、06年ディープインパクトの3頭。過去10年では宝塚記念を含む春G1・2勝を挙げた馬がいないため、このような結果になっている。
■表2 宝塚記念優勝厩舎の春G1成績
年 | 馬名 | 厩舎 | 厩舎の春G1 | 主な成績 | G1優勝馬 |
07 | アドマイヤムーン | 松田博資 | 0-0-1-4 | ダービー3着 | … |
08 | エイシンデピュティ | 野元昭 | 不出走 | ||
09 | ドリームジャーニー | 池江泰寿 | 0-0-1-0 | 天皇賞(春)3着 | |
10 | ナカヤマフェスタ | 二ノ宮敬宇 | 不出走 | ||
11 | アーネストリー | 佐々木晶三 | 0-0-0-1 | ヴィクトリアM13着 | |
12 | オルフェーヴル | 池江泰寿 | 0-2-1-3 | 皐月賞2着 | |
13 | ゴールドシップ | 須貝尚介 | 0-0-0-4 | 天皇賞(春)5着 | |
14 | ゴールドシップ | 須貝尚介 | 1-1-0-4 | 安田記念1着 | ジャスタウェイ |
15 | ラブリーデイ | 池江泰寿 | 1-1-0-2 | オークス1着 | ミッキークイーン |
16 | マリアライト | 久保田貴士 | 不出走 | … |
続いて、同様に厩舎成績を見てみよう(表2)。こちらは騎手とは違い、宝塚記念が春G1・2勝目だったのは、14年の須貝尚介厩舎、15年の池江泰寿厩舎のみ。ただ、春のG1初出走も含めれば、10年で半数の5回、そして3年連続、ということになる。近3年の傾向としては、勝っているか出走させていない厩舎が狙いだ。
■表3 宝塚記念優勝種牡馬の春G1(平地)成績
年 | 馬名 | 種牡馬 | 種牡馬の春G1 | 主な成績 | G1優勝馬 |
07 | アドマイヤムーン | エンドスウィープ | 0-0-0-1 | ヴィクトリアM9着 | … |
08 | エイシンデピュティ | フレンチデピュティ | 2-0-1-3 | 天皇賞(春)1着 | アドマイヤジュピタほか |
09 | ドリームジャーニー | ステイゴールド | 0-0-1-5 | 天皇賞(春)3着 | … |
10 | ナカヤマフェスタ | ステイゴールド | 0-0-0-2 | 天皇賞(春)7着 | |
11 | アーネストリー | グラスワンダー | 0-0-0-3 | 天皇賞(春)14着 | |
12 | オルフェーヴル | ステイゴールド | 1-1-1-3 | 皐月賞1着 | ゴールドシップ |
13 | ゴールドシップ | ステイゴールド | 1-0-0-4 | 天皇賞(春)1着 | フェノーメノ |
14 | ゴールドシップ | ステイゴールド | 1-1-0-4 | 天皇賞(春)1着 | フェノーメノ |
15 | ラブリーデイ | キングカメハメハ | 3-1-1-11 | ダービー1着 | ドゥラメンテほか |
16 | マリアライト | ディープインパクト | 3-5-5-25 | ダービー1着 | マカヒキほか |
そして最後は種牡馬成績。こちらは騎手同様に5年連続。08年にも勝っているため、春のG1優勝種牡馬の産駒が、10年で6勝を挙げている。騎手や厩舎に比べれば、あまり「勢い」云々は関係ないようにも思えるが、その年代に活躍馬を多く輩出し、リーディング上位につけるような種牡馬の産駒が勝ちやすいと、シンプルに捕らえればいいのかもしれない。
このように近年の宝塚記念では、騎手、厩舎、種牡馬とも、春のG1で勝っていることが望ましい。ただ、厩舎や種牡馬は同一G1に複数頭が出走することもあるのに対し、騎手は各レース騎乗馬1頭のみということを踏まえると、特に騎手は重視したい。
■表4 本年春のG1優勝馬と騎手、厩舎、種牡馬
レース | 優勝馬 | 騎手 | 厩舎 | 種牡馬 |
高松宮記念 | セイウンコウセイ | 幸英明 | 上原博之 | アドマイヤムーン |
大阪杯 | キタサンブラック | 武豊 | 清水久詞 | ブラックタイド |
桜花賞 | レーヌミノル | 池添謙一 | 本田優 | ダイワメジャー |
皐月賞 | アルアイン | 松山弘平 | 池江泰寿 | ディープインパクト |
天皇賞(春) | キタサンブラック | 武豊 | 清水久詞 | ブラックタイド |
NHKマイルC | アエロリット | 横山典弘 | 菊沢隆徳 | クロフネ |
ヴィクトリアM | アドマイヤリード | ルメール | 須貝尚介 | ステイゴールド |
オークス | ソウルスターリング | ルメール | 藤沢和雄 | Frankel |
ダービー | レイデオロ | ルメール | 藤沢和雄 | キングカメハメハ |
安田記念 | サトノアラジン | 川田将雅 | 池江泰寿 | ディープインパクト |
■表5 本年の宝塚記念登録馬(騎手は想定)
馬名 | 騎手 | 厩舎 | 種牡馬 |
キタサンブラック | 武豊 | 清水久詞 | ブラックタイド |
クラリティシチー | … | 上原博之 | キングカメハメハ |
ゴールドアクター | 横山典弘 | 中川公成 | スクリーンヒーロー |
サトノクラウン | M.デムーロ | 堀宣行 | Marju |
シャケトラ | ルメール | 角居勝彦 | マンハッタンカフェ |
シュヴァルグラン | 福永祐一 | 友道康夫 | ハーツクライ |
スピリッツミノル | 幸英明 | 本田優 | ディープスカイ |
ヒットザターゲット | … | 加藤敬二 | キングカメハメハ |
ミッキークイーン | 浜中俊 | 池江泰寿 | ディープインパクト |
ミッキーロケット | 和田竜二 | 音無秀孝 | キングカメハメハ |
レインボーライン | 岩田康誠 | 浅見秀一 | ステイゴールド |
表1〜3を受けて、今年の春のG1の結果と、宝塚記念登録馬をみてみよう。表5はあくまで「登録馬」のため、出走しない馬が含まれていたり、騎手が変わったりする可能性があることは了承いただきたい。この中でもちろん注目は、大阪杯、天皇賞(春)と連勝を飾ってきたキタサンブラック。乗り替わりや転厩はないため、騎手、厩舎、種牡馬揃って「春のG1優勝」の実績をひっさげての登場になる。気になるのは、表1本文で触れたように、過去10年では宝塚記念で「春のG1・2勝目(以上)」を挙げた馬がいないこと。ここさえ問題にならなければ、当然最有力ということになる。
その他では、ともに5連勝中の「騎手+種牡馬」でクリアした馬がいれば良かったが、現時点の想定では該当馬は不在だ。「騎手+厩舎」でクリアしているのがスピリッツミノル。そして「厩舎+種牡馬」はクラリティシチーとミッキークイーン。もしクラリティシチーやスピリッツミノルが勝てば大波乱になるが、どうだろうか。ミッキークイーンは、牡馬相手のG1で馬券に絡んだことこそないものの、15年のジャパンCは8着でも0.3秒差。そして昨年の有馬記念は0.4秒差5着と、展開ひとつでチャンスはありそうな雰囲気だ。また、表3の最後に触れたように騎手重視と考えれば、一昨年の有馬記念馬・ゴールドアクター。そして同馬を日経賞で下し、2500m以下では馬券圏外がないシャケトラにも注目したい。
以上、宝塚記念を「春のG1」との関係という視点からまとめてみた。冒頭にも触れたように、通常の過去10年の傾向は木曜掲載分で取り上げる予定だ。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。