データde出〜た
第1086回 牡馬クラシックへの登竜門! 共同通信杯を分析する
2017/2/9(木)
今週は土曜東京でクイーンC、日曜に東京で共同通信杯、京都で京都記念と3鞍の重賞が行われる。京都記念は昨年の日本ダービー馬マカヒキの出走で注目を集めそうだが、馬券的な面白みはむしろ東の共同通信杯の方にありそうだ。過去5年で昨年のディーマジェスティをはじめ皐月賞馬を4頭も輩出しており、牡馬クラシックに向けて見逃せない一戦だ。今回のデータde出〜たでは、2012年以降の過去5年のデータから好走馬の特徴を探っていきたい。なお、データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 共同通信杯近5回の上位3着以内馬一覧(2012年以降)
馬場/頭数 | 着順 | 馬名 | 勝ちタイム | 人気 | 4角通過順 | 上がり3F | 前半1000m通過 | レース上がり |
2016 (やや重/10頭) |
1 | ディーマジェスティ | 1分47秒4 | 6 | 7 | 34秒9 | 60秒0 | 35秒6 |
2 | イモータル | 1馬身1/4 | 5 | 3 | 35秒5 | |||
3 | メートルダール | 1/2馬身 | 3 | 8 | 35秒0 | |||
2015 (良/12頭) |
1 | リアルスティール | 1分47秒1 | 3 | 4 | 34秒0 | 60秒0 | 34秒5 |
2 | ドゥラメンテ | 1/2馬身 | 1 | 7 | 33秒7 | |||
3 | アンビシャス | 1馬身1/4 | 4 | 3 | 34秒5 | |||
2014 (良/14頭) |
1 | イスラボニータ | 1分48秒1 | 1 | 4 | 33秒2 | 62秒2 | 33秒4 |
2 | ベルキャニオン | 1馬身1/4 | 3 | 7 | 33秒1 | |||
3 | サトノアラジン | 2馬身 | 2 | 2 | 33秒8 | |||
2013 (良/10頭) |
1 | メイケイペガスター | 1分46秒0 | 4 | 2 | 33秒8 | 60秒2 | 34秒0 |
2 | ゴットフリート | 1馬身1/2 | 2 | 4 | 33秒8 | |||
3 | マイネルストラーノ | 1/2馬身 | 9 | 2 | 34秒1 | |||
2012 (良/11頭) |
1 | ゴールドシップ | 1分48秒3 | 2 | 4 | 33秒3 | 62秒6 | 33秒6 |
2 | ディープブリランテ | 1馬身3/4 | 1 | 1 | 33秒9 | |||
3 | スピルバーグ | ハナ | 3 | 6 | 33秒2 |
まず表1は過去5年の3着以内馬一覧。この中から13年を除いて、ゴールドシップ、イスラボニータ、ドゥラメンテ、ディーマジェスティと4頭もの皐月賞が出ており、ディープブリランテとドゥラメンテは日本ダービーを制している。春の牡馬クラシックを占う上で非常に重要な前哨戦だ。それでは共同通信杯の中身を見ていこう。
勝ちタイムを見ると、かなりのスローペースとなった12年と14年は1分48秒を超えており、その他の3年は平均ペースで1分46〜47秒4の決着となっている。昨年は馬場状態がやや重で若干上がりを要したが、良馬場では上がり3Fで33秒台前半〜34秒5といった速い上がりを使える瞬発力タイプが上位に入っている。4角通過順では4コーナー先頭で3着以内に入ったのは12年ディープブリランテのみで、他の馬は4コーナーで2〜8番手に位置していた。
人気別では1番人気馬が【1.2.0.2】で、14年イスラボニータの1勝のみ。以下、2・3・4・6番人気馬が1勝ずつ。10番人気以下の激走はなく、昨年は1番人気ハートレーが9着に敗れてやや波乱となったものの、堅め〜小波乱の決着が多い一戦だ。
■表2 共同通信杯の所属別成績(2012年以降)
調教師分類 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
美浦 | 2- 3- 3-30/38 | 5.3% | 13.2% | 21.1% | 65% | 61% |
栗東 | 3- 2- 2-12/19 | 15.8% | 26.3% | 36.8% | 83% | 76% |
表2は出走馬の所属別成績。出走数は美浦所属の関東馬が多いものの、勝利数・勝率・連対率・複勝率いずれも栗東所属の関西馬が上回っている。関西馬は一昨年のリアルスティールら3勝で、昨年もイモータルが2着に入るなど毎年1頭は3着以内に入っている。
なお、関西馬で3着以内に入った7頭はすべて共同通信杯で上位5番人気以内に支持されていた。
■表3 共同通信杯のキャリア別成績(2012年以降)
キャリア | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
1戦 | 1- 0- 0- 2/ 3 | 33.3% | 33.3% | 33.3% | 203% | 63% |
2戦 | 0- 1- 2- 8/11 | 0.0% | 9.1% | 27.3% | 0% | 51% |
3戦 | 2- 4- 1-10/17 | 11.8% | 35.3% | 41.2% | 165% | 106% |
4戦 | 2- 0- 1-12/15 | 13.3% | 13.3% | 20.0% | 42% | 32% |
5戦 | 0- 0- 0- 5/ 5 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
6戦 | 0- 0- 1- 4/ 5 | 0.0% | 0.0% | 20.0% | 0% | 150% |
8戦 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表3はキャリア別成績。表の黄色で強調した1〜4戦の馬から好走馬がほぼ出ている。出走馬最多の3戦の馬は昨年のディーマジェスティら2勝で、連対率35.3%・複勝率41.2%と非常に高い。4戦の馬は14年イスラボニータら2勝、1戦の馬は一昨年のリアルスティールが勝利している。
■表4 共同通信杯の前走レース別成績(2012年以降)
前走レース名 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
東スポ杯2歳S(G3) | 1- 1- 0- 2/ 4 | 25.0% | 50.0% | 50.0% | 55% | 55% |
ラジオNIKKEI杯2歳S(G3) | 1- 0- 1- 2/ 4 | 25.0% | 25.0% | 50.0% | 102% | 60% |
2歳未勝利 | 1- 0- 0- 2/ 3 | 33.3% | 33.3% | 33.3% | 753% | 190% |
新馬 | 1- 0- 0- 1/ 2 | 50.0% | 50.0% | 50.0% | 305% | 95% |
若駒S(OP) | 1- 0- 0- 0/ 1 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 560% | 200% |
朝日杯FS(G1) | 0- 2- 0- 1/ 3 | 0.0% | 66.7% | 66.7% | 0% | 206% |
ホープフルS(OP) | 0- 1- 0- 1/ 2 | 0.0% | 50.0% | 50.0% | 0% | 80% |
セントポーリア賞(500万下) | 0- 1- 0- 0/ 1 | 0.0% | 100.0% | 100.0% | 0% | 130% |
京成杯(G3) | 0- 0- 2- 6/ 8 | 0.0% | 0.0% | 25.0% | 0% | 127% |
500万下 | 0- 0- 1- 1/ 2 | 0.0% | 0.0% | 50.0% | 0% | 95% |
千両賞(500万下) | 0- 0- 1- 0/ 1 | 0.0% | 0.0% | 100.0% | 0% | 270% |
その他のレース | 0- 0- 0-25/25 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表4は前走レース別成績。東スポ杯2歳S組は14年イスラボニータが勝利し、12年ディープブリランテが2着。ただし、近2年は一昨年アヴニールマルシェが5着、昨年はスマートオーディンが6着に敗れている。勝ち馬はすべて別々のレースから出ているものの、前走距離は芝1800〜2000mを使われていた。
その他では朝日杯FS組が好相性だが、今年は出走予定馬がいない。京成杯組は連対馬がいないものの、3着2回。なお、前走500万条件の馬はのべ【0.1.2.15】で勝ち星がなく、連対率5.6%・複勝率16.7%と低い。これら3着以内に入った3頭は前走500万下で連対を果たしていた。
■表5 共同通信杯の前走着順別成績(2012年以降)
前走着順 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収値 | 複勝回収値 |
前走1着 | 3- 2- 1-12/18 | 16.7% | 27.8% | 33.3% | 171% | 76% |
前走2着 | 1- 1- 1- 5/ 8 | 12.5% | 25.0% | 37.5% | 51% | 57% |
前走3着 | 1- 1- 2- 3/ 7 | 14.3% | 28.6% | 57.1% | 80% | 110% |
前走4着 | 0- 0- 0- 3/ 3 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
前走5着 | 0- 0- 0- 2/ 2 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
前走6〜9着 | 0- 1- 1-11/13 | 0.0% | 7.7% | 15.4% | 0% | 92% |
前走10着以下 | 0- 0- 0- 6/ 6 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表5は前走着順別成績。表の黄色で強調したように前走3着以内だった馬が好成績をあげている。3着以内馬15頭中13頭を占めており、前走1着馬は昨年のディーマジェスティら過半数の3勝をあげている。また、前走3着馬は13年メイケイペガスター(前走若駒S)が勝利し、昨年もメートルダール(前走京成杯)が3着に入っている。
なお、前走6着以下から巻き返したのは13年3着マイネルストラーノ(前走京成杯8着)、 昨年2着イモータル(前走朝日杯FS9着)の2頭。両馬はオープンで連対した過去があった。
■表6 共同通信杯の前走上がり順位別成績(過去10年)
前走上がり順位 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
3F 1位 | 3- 2- 2- 9/16 | 18.8% | 31.3% | 43.8% | 214% | 103% |
3F 2位 | 1- 1- 1- 3/ 6 | 16.7% | 33.3% | 50.0% | 68% | 90% |
3F 3位 | 0- 1- 0- 8/ 9 | 0.0% | 11.1% | 11.1% | 0% | 18% |
3F〜5位 | 1- 0- 1- 8/10 | 10.0% | 10.0% | 20.0% | 22% | 24% |
3F6位以下 | 0- 1- 1-14/16 | 0.0% | 6.3% | 12.5% | 0% | 75% |
表6は前走上がり順位別成績。前走上がり1位馬が昨年のディーマジェスティら過半数の3勝をあげており、連対率・複勝率ともに高い。また、上がり2位の馬は12年ゴールドシップが勝利し、昨年もメートルダールが3着に入っている。この組の3着以内馬3頭はすべて前走オープンか重賞を使われていた。
<結論>
■表7 今年の共同通信杯の出走予定馬(2/8現在)
馬名 | 所属 | キャリア | 前走成績 |
アサギリジョー | 美浦 | 4戦 | 京成杯 5着 |
エアウィンザー | 栗東 | 3戦 | 福寿草特別 2着 |
エテレインミノル | 栗東 | 5戦 | 梅花賞 5着 |
エトルディーニュ | 美浦 | 8戦 | セントポーリア賞 2着 |
コマノレジーナ | 美浦 | 1戦 | 新馬・牝 1着 |
サイバーエレキング | 地方 | 9戦 | 浦和・ニューC 8着 |
スワーヴリチャード | 栗東 | 3戦 | 東スポ杯2歳S 2着 |
タイセイスターリー | 栗東 | 3戦 | シンザン記念 2着 |
チャロネグロ | 美浦 | 2戦 | 3歳未勝利 1着 |
ディアシューター | 美浦 | 6戦 | 若竹賞 5着 |
ハナレイムーン | 美浦 | 1戦 | 新馬・牝 1着 |
ビルズトレジャー | 美浦 | 3戦 | ホープフルS 7着 |
ムーヴザワールド | 栗東 | 2戦 | 東スポ杯2歳S 3着 |
ヴェルラヴニール | 美浦 | 2戦 | 2歳未勝利 1着 |
今年の出走予定馬は表7のとおり。
人気を集めそうなのは前走東スポ杯2歳S組から2着スワーヴリチャード、3着ムーヴザワールド、そして福寿草特別で2着に敗れたものの好素材と名高いエアウィンザーの3頭だろう。
この3頭の比較ではスワーヴリチャードを最上位に挙げたい。前走は直線で一旦外にヨレながら、勝ち馬ブレスジャーニーを上回る上がり最速の33秒6の脚で2着に入っている。関西馬で好成績をあげているキャリア3戦というのも強調材料。これまでのデータから勝つ可能性が最も高いのはスワーヴリチャードと見る。
ムーヴザワールドがデビュー戦でエアウィンザーにクビ差勝利しており、2戦目の東スポ杯2歳Sが3着。前走は上がり33秒8で僅差ながらメンバー中3位。デビューから2戦連続で手綱をとっていたルメール騎手から今回戸崎騎手への乗り替わりもやや気にかかるところ。成長力は見込めそうだが、押さえまでにとどめておきたい。エアウィンザーは断然人気に支持された前走500万下で2着。エアスピネルの全弟で、関西馬かつキャリア3戦は好材料だが、前走500万下組で人気ほどの信頼度はないだろう。
ならば、前走シンザン記念2着のタイセイスターリーを推奨したい。関西馬でキャリア3戦、前走は重馬場のコンディションながら上がり2位をマークしている。一昨年リアルスティール1着、12年ディープブリランテ2着の矢作厩舎所属というのも買い材料だろう。
最後に穴で関東馬からキャリア3戦で前走ホープフルS7着ながら上がり2位で勝ったレイデオロから0秒6差だったビルズトレジャー、前走未勝利戦の勝ちタイムが京成杯を上回ったチャロネグロの2頭を挙げておきたい。
ライタープロフィール
ケンタロウ(けんたろう)
1978年6月、鹿児島県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。初めて買った馬券が大当たりし、それから競馬にのめり込むように。データでは、開催日の馬場やコース適性に注目している。好きなタイプは逃げか追い込み。馬券は1着にこだわった単勝、馬単派。料理研究家ではない。