データde出〜た
第246回 あらためて主要4重賞を分析する
2008/12/18(木)
今週は中山競馬場で朝日杯FSが行われる。来週にラジオNIKKEI杯2歳も控えるため、本競走は賞金を持っている2歳牡馬のすべてが集結するわけではないが、重賞ウイナーを数頭含み、数多くの出走予定馬が揃った。過去10年の本競走を振り返り、注目馬を探してみたい。データの分析にはJRA-VAN Data Lab.とTarget frontier JVを利用した。
■表1 過去10年の朝日杯FSの好走馬
年 |
着順 |
人気 |
馬名 |
前走成績 |
2走前成績 |
07年 | 1 |
3 |
ゴスホークケン | 東スポ杯2歳S4着 | 新馬1着 |
2 |
10 |
レッゴーキリシマ | 京王杯2歳S3着 | かえで賞1着 | |
3 |
4 |
キャプテントゥーレ | デイリー杯2歳S1着 | 野路菊S3着 | |
06年 | 1 |
2 |
ドリームジャーニー | 東スポ杯2歳S3着 | 芙蓉S1着 |
2 |
7 |
ローレルゲレイロ | デイリー杯2歳S2着 | 函館2歳S2着 | |
3 |
1 |
オースミダイドウ | デイリー杯2歳S1着 | 野路菊S1着 | |
05年 | 1 |
2 |
フサイチリシャール | 東スポ杯2歳S1着 | 萩S1着 |
2 |
5 |
スーパーホーネット | くるみ賞1着 | デイリー杯2歳S3着 | |
3 |
1 |
ジャリスコライト | いちょうS1着 | 新馬1着 | |
04年 | 1 |
2 |
マイネルレコルト | 京王杯2歳S5着 | 新潟2歳S1着 |
2 |
3 |
ストーミーカフェ | 札幌2歳S1着 | 未勝利1着 | |
3 |
1 |
ペールギュント | 東スポ杯2歳S2着 | デイリー杯2歳S1着 | |
03年 | 1 |
4 |
コスモサンビーム | 京王杯2歳S1着 | ききょうS1着 |
2 |
1 |
メイショウボーラー | デイリー杯2歳S1着 | 小倉2歳S1着 | |
3 |
10 |
アポインテッドデイ | 京王杯2歳S2着 | 500万2着 | |
02年 | 1 |
8 |
エイシンチャンプ | 京都2歳S1着 | 黄菊賞2着 |
2 |
1 |
サクラプレジデント | 札幌2歳S1着 | 新潟2歳S1着 | |
3 |
5 |
テイエムリキサン | 萩S1着 | 札幌2歳S2着 | |
01年 | 1 |
1 |
アドマイヤドン | 京都2歳S1着 | 新馬1着 |
2 |
2 |
ヤマノブリザード | グラスワンダー特別2着 | 札幌2歳S1着 | |
3 |
9 |
スターエルドラード | デイリー杯2歳S13着 | 新潟2歳S2着 | |
00年 | 1 |
10 |
メジロベイリー | 未勝利1着 | 未勝利3着 |
2 |
1 |
タガノテイオー | 東スポ杯3歳S1着 | 札幌2歳S2着 | |
3 |
4 |
ネイティヴハート | 京王杯3歳S2着 | アイビーS1着 | |
99年 | 1 |
4 |
エイシンプレストン | 新馬1着 | 新馬2着 |
2 |
1 |
レジェンドハンター | デイリー杯3歳S1着 | 兼六園J1着 | |
3 |
3 |
マチカネホクシン | 東スポ杯3歳S3着 | いちょうS1着 | |
98年 | 1 |
1 |
アドマイヤコジーン | 東スポ杯3歳S1着 | 新馬1着 |
2 |
2 |
エイシンキャメロン | デイリー杯3歳S1着 | 野路菊S1着 | |
3 |
4 |
バイオマスター | 500万1着 | 新馬1着 |
上の表1は過去10年の朝日杯FSで3着以内に入った馬たちの一覧。これらの馬たちの前走成績、2走前成績などが記してある。05年の本競走を分析した際(第48回データde出〜た)にすでに述べさせていただいたように、東京スポーツ杯2歳S、京王杯2歳S、デイリー杯2歳、札幌2歳Sの4重賞がいわゆる主要ステップレース。過去10年の好走馬30頭中24頭が、近2走以内に主要4重賞を使っている。この主要4重賞を使っている馬から中心馬を探すのがセオリーと言えるだろう。
主要4重賞を使っていない場合は、前走OPクラスの芝1600m以上での勝ち鞍が重要。ジャリスコライト、エイシンチャンプ、アドマイヤドンがこの実績を持っていた。前走新馬、未勝利を勝ち上がったばかりの馬にとっては、かなりハードルが高く、メジロベイリー、エイシンプレストンの2頭しか好走馬が出ていない。
■表2 近2走以内の主要4重賞経験頭数と本番での着順
レース名 |
合計 |
朝日杯FS着順 |
デイリー杯2歳S | 9頭 |
【0.5.4】 |
東スポ杯2歳S | 7頭 |
【4.1.2】 |
札幌2歳S | 6頭 |
【0.4.2】 |
京王杯2歳S | 5頭 |
【2.1.2】 |
次に上の表2では近2走以内に主要4重賞を経験し、本競走で3着以内に入った馬たちの頭数と本番での成績を調べた。4重賞の中で最も好走馬を出しているのがデイリー杯2歳Sの出走経験馬。昨年のキャプテントゥーレを含め過去10年で9頭の好走馬が出ている。しかし、本番の朝日杯FSでの好走内訳を見ると、驚くべき結果。勝ち馬が出ておらず、2着馬が5頭、3着馬が4頭。3連複などの軸としては有力だが、頭から狙うには心もとない成績・傾向だ。
続いて東スポ杯2歳Sに出走経験がある好走馬は7頭。好走馬の内訳は昨年のゴスホークケンを中心に優勝馬が4頭、2着馬が1頭、3着馬が2頭。続く札幌2歳Sの出走経験馬は6頭。その内訳はデイリー杯に似ていて、優勝馬がゼロ。04年のストーミーカフェら2着馬が4頭、3着馬が2頭となっている。最後に京王杯2歳Sに出走経験がある好走馬は5頭。主要4重賞の中では最も頭数が少ないが、04年のマイネルレコルトなど優勝馬が2頭出ている。
■表3 過去10年、デイリー杯2歳Sに出走し朝日杯FSで好走した馬
年 |
着順 |
人気 |
馬名 |
デ杯成績 |
デ杯通過順位 |
07年 | 3 |
4 |
キャプテントゥーレ | 1着 |
【 - -2-2】 |
06年 | 2 |
7 |
ローレルゲレイロ | 2着 |
【 - -4-6】 |
3 |
1 |
オースミダイドウ | 1着 |
【 - -8-6】 |
|
05年 | 2 |
5 |
スーパーホーネット | 3着 |
【 - -9-9】 |
04年 | 3 |
1 |
ペールギュント | 1着 |
【 - -12-12】 |
03年 | 2 |
1 |
メイショウボーラー | 1着 |
【 - -1-1】 |
01年 | 3 |
9 |
スターエルドラード | 13着 |
【- -13-14】 |
99年 | 2 |
1 |
レジェンドハンター | 1着 |
【 - -1-1】 |
98年 | 2 |
2 |
エイシンキャメロン | 1着 |
【 - -1-1】 |
ここからは主要4重賞組の好走馬を詳しく見ていこう。まずはデイリー杯2歳S組(表3参照)。01年3着のスターエルドラード以外は、デイリー杯2歳Sで3着以内に入っている馬で、基本的には好走馬のみが今回の対象となる。そして、さらに注目したいのはデイリー杯2歳Sでの各コーナーの通過順位。結論から言うと、デイリー杯2歳Sで前目のポジションにつけて好走していた馬の方が、今回良績を残せる可能性がある。過去の朝日杯FSで連対を果たしたエイシンキャメロン、レジェンドハンター、メイショウボーラーは、デイリー杯2歳Sを逃げて好走していた馬。ペールギュントのような差し・追い込みタイプは、中山コースへ替わることがマイナス材料になりやすい。
■表4 過去10年、東スポ杯2歳Sに出走し朝日杯FSで好走した馬
年 |
着順 |
人気 |
馬名 |
東スポ杯成績 |
東スポ杯通過順位 |
RPCI |
07年 | 1 |
3 |
ゴスホークケン | 4着 |
【 -2-3-3】 |
50.9 |
06年 | 1 |
2 |
ドリームジャーニー | 3着 |
【 -5-6-7】 |
60.7 |
05年 | 1 |
2 |
フサイチリシャール | 1着 |
【 -1-1-1】 |
58.6 |
04年 | 3 |
1 |
ペールギュント | 2着 |
【 -8-9-8】 |
54.3 |
00年 | 2 |
1 |
タガノテイオー | 1着 |
【 -5-6-6】 |
53.5 |
99年 | 3 |
3 |
マチカネホクシン | 3着 |
【 -7-8-7】 |
45.9 |
98年 | 1 |
1 |
アドマイヤコジーン | 1着 |
【 -5-3-2】 |
56.6 |
次に東スポ杯2歳S組(表4参照)を見ていこう。ここも昨年のゴスホークケン以外が、同レースで3着以内に好走していた馬。そして、この組も各コーナーでの通過順位が大きなヒントになる。本競走の優勝馬4頭のうちゴスホークケン、フサイチリシャール、アドマイヤコジーンの3頭は、東スポ杯2歳Sでの4コーナー通過順位は3番手以内だった。残りの優勝馬であるドリームジャーニーは、差し・追い込みタイプだが、この年の東スポ杯2歳SはRPCI(レースペースチェンジ指数・第203回の本稿参考)が60.7で、いわゆる上がりの競馬。後ろから行く馬にとっては不向きな展開だった。RPCIを参考にすると、50.9だった昨年は例年よりも確実に厳しいペースで、先行したゴスホークケンにとっては苦しい競馬だったことがわかる。やや複雑な話になってしまうが、前哨戦での展開の有利・不利を考えることも、ここでは大きなヒントとなる。
■表5 過去10年、京王杯2歳Sに出走し朝日杯FSで好走した馬
年 |
着順 |
人気 |
馬名 |
京王杯成績 |
京王杯通過順位 |
RPCI |
07年 | 2 |
10 |
レッゴーキリシマ | 3着 |
【 - -1-2】 |
46.2 |
04年 | 1 |
2 |
マイネルレコルト | 5着 |
【 - -11-7】 |
51.6 |
03年 | 1 |
4 |
コスモサンビーム | 1着 |
【 - -4-4】 |
49.6 |
3 |
10 |
アポインテッドデイ | 2着 |
【 - -5-5】 |
||
00年 | 3 |
4 |
ネイティヴハート | 2着 |
【 - -3-6】 |
43.9 |
次は順番から言うと札幌2歳S組だが、今年の出走予定馬の中に、同レースの上位馬がいない。よって、詳しい分析は割愛させていただき、京王杯2歳S組を見ていくことにする(表5参照)。同組もまずはそこで良績を残していることが大前提。マイネルレコルト以外は、京王杯2歳Sで3着以内に入っていた。そして、東スポ杯2歳S組と同じように通過順位と、RPCIを分析することが有効となる。該当馬5頭のうち、4コーナーの通過順位が一番後ろだったのは、マイネルレコルト(7番手)。だが、同年のPRCIは51.6と、上がりが問われる流れ。一方、昨年の京王杯2歳SはPPCIが46.2と、前半からペースが厳しく、後半は上がりがかかる流れ。実際に上位を独占したのは、レッツゴーキリシマ以外はすべて後ろから差してきた馬たちだった。4コーナー2番手から踏ん張ったレッツゴーキリシマが、より力を示したと言えるのではないだろうか。
【結論】
それでは今年の朝日杯FSを占っていこう。まずは札幌2歳Sを除く主要重賞について調べていく。■表6 今年のデイリー杯2歳Sに出走した朝日杯FS出走予定馬
馬名 |
デ杯成績 |
デ杯通過順位 |
シェーンヴァルト | 1着 | 【 - -8-7】 |
ホッコータキオン | 2着 | 【 - -1-1】 |
ピースピース | 4着 | 【- -11-11】 |
トップオブピーコイ | 10着 | 【 - -3-2】 |
今年のデイリー杯2歳S組は上の表6。基本的には連対馬のシェーンヴァルト、ホッコータキオンまでが上位争い可能と見るが、同レースでの通過順位からホッコータキオンの方に注目。レコードを誘発させるほどの速いペースで飛ばし、逃げ粘っての2着。それでいながら勝ち馬のシェーンヴァルトとはタイム差なしのクビ差ということで、中山コースに替わっての逆転が見込めるかもしれない。


■表7 今年の東スポ杯2歳Sに出走した朝日杯FS出走予定馬
馬名 |
東スポ杯成績 |
東スポ杯通過順位 |
RPCI |
ブレイクランアウト | 2着 |
【 -10-9-9】 |
58.3 |
サンカルロ | 3着 |
【 -8-7-7】 |
|
マッハヴェロシティ | 6着 |
【 14-14-13】 |
次に東スポ杯2歳S組を見ていこう(表7参照)。今年の同レースはRPCIが、58.3と例年の本競走と比べて、ペースが遅い部類に入る。本来は厳しい流れを先行して好走している場合の方が、本競走には繋がりやすいが、4コーナー9番手で2着まで押し上げたブレイクランアウトに可能性を託したい。
■表8 今年の京王杯2歳Sに出走した朝日杯FS出走予定馬
馬名 |
京王杯成績 |
京王杯通過順位 |
RPCI |
ゲットフルマークス | 1着 |
【 - -1-1】 |
54.1 |
フィフスペトル | 2着 |
【 - -4-4】 |
|
エイシンタイガー | 3着 |
【 - -6-4】 |
|
トップオブピーコイ | 15着 |
【 - -15-15】 |
次に京王杯2歳S組を見ていこう(表8参照)。今年の同レースはRPCIが54.1。例年の本競走に比べると、確実に遅い流れだ。優勝したのは逃げ切ったゲットフルマークスだが、展開に恵まれた感が否めない。2着のフィフスペトル、3着のエイシンタイガーも4コーナーはともに4番手と、先行しており、極端に展開が不利だったとは言えないが、勝ち馬よりも脚を余した内容だったと言えるだろう。したがって、この組はフィフスペトル、エイシンタイガーにのみ注目してみたい。
■表9 表6〜8に該当しなかった今年の朝日杯FS出走予定馬
馬名 |
前走成績 |
2走前成績 |
オメガユリシス | 福島2歳S1着 | くるみ賞6着 |
カノンコード | もちの木賞2着 | 新馬1着 |
ケイアイマッシブ | 500万7着 | 未勝利1着 |
ケンブリッジエル | 500万2着 | 未勝利1着 |
サトノエクスプレス | 新馬1着 | |
シングンレジェンド | 新馬1着 | |
セイウンワンダー | 新潟2歳S1着 | 未勝利1着 |
タイフーンルビー | 未勝利1着 | 未勝利3着 |
ツルマルジャパン | クリスマスS9着 | 小倉2歳S3着 |
トウカイフィット | 500万3着 | いちょうS5着 |
トレノパズル | 新馬1着 | |
ナンヨークイーン | マカオJCT6着 | 未勝利1着 |
ブライトクロノス | ベゴニア賞7着 | いちょうS6着 |
ベルベットロード | ベゴニア賞5着 | 未勝利1着 |
ボンジュールボン | 未勝利1着 | 未勝利4着 |
ミッキーパンプキン | 萩S1着 | 新馬1着 |
メジロチャンプ | 札幌2歳S9着 | コスモス賞4着 |
リーチマイドリーム | ベゴニア賞6着 | 未勝利1着 |
レッドスパーダ | 新馬1着 |
最後に主要4重賞に出走しなかった馬たちを上の表9に記した。表9の該当馬の大半は賞金が足りずに、抽選の結果に委ねられそう。前述したように基本的には前走OPクラスの芝1600m以上での勝利が必要になることから、セイウンワンダー(新潟2歳S1着)とミッキーパンプキン(萩S1着)のみがチャンスと言えそう。ただし、セイウンワンダーは新潟2歳S以来の休み明け。過去10年の好走馬で、最も間隔が開いていたのは、前走札幌2歳S1着(9月末)のサクラプレジデント。その他の馬は10月以降に一度はレースを使っていた。この点がどうかということで、ミッキーパンプキンの方を上位に取りたい。
まとめると、勝ち切れないものの2、3着候補として有力なデイリー杯2歳S組からはホッコータキオン。勝ち馬を多く出している東スポ杯2歳S、京王杯2歳S組からブレイクランアウト、フィフスペトル、エイシンタイガー。別路線組からはミッキーパンプキンを推奨してみたい。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
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