データde出〜た
第107回 短距離戦線異常アリ!?
2007/1/31(水)
07年最初の古馬による芝短距離重賞のシルクロードSが今週末、京都競馬場で行われる。昨年のこの路線を振り返ると波乱続き。傑出した実力馬が不在の影響からか、重賞レースの勝ち馬がコロコロ替わる状況だった。その傾向は今年も続くのだろうか?
今週は京都競馬場でシルクロードSが行われる。年内最初の古馬芝短距離重賞だが、予想が難しくて頭が痛いのは筆者だけだろうか。同レースが多頭数のハンデ戦ということではなく、この古馬の芝短距離路線そのものが常に混戦という意味である。この路線の実力馬の不在・混戦模様は数年前から見てとれた現象だが、昨年の06年は特に凄かった。いきなりだが、下に示した表1をご覧いただきたい(表の作成・分析は、JRA-VAN Data Lab.とTarget frontier JVを利用)。
■表1 2006年に行われた芝1000〜1400mの重賞(3・4歳以上)の勝ち馬
レース名 | 勝ち馬 | 人気 | 前走成績 | コース勝利 |
阪神C | フサイチリシャール | 8 | JCダート13着 | 未経験 |
京阪杯 | アンバージャック | 4 | 京洛S1着 | 京洛S1着 |
スワンS | プリサイスマシーン | 14 | 函館SS9着 | 未経験 |
スプリンターズS | テイクオーバーターゲット | 1 | セントウルS2着 | 未経験 |
セントウルS | シーイズトウショウ | 1 | キーンランドC2着 | CBC賞1着 |
キーンランドC | チアフルスマイル | 4 | クイーンC5着 | 500万(牝)1着 |
北九州記念 | コスモフォーチュン | 11 | 疾風特別1着 | 未勝利1着 |
アイビスSD | サチノスイーティー | 7 | 白河特別1着 | 未経験 |
函館スプリントS | ビーナスライン | 13 | フリーウェイS11着 | 下北半島特別1着 |
CBC賞 | シーイズトウショウ | 4 | 阪神牝馬S6着 | 03年CBC賞1着 |
京王杯SC | オレハマッテルゼ | 3 | 高松宮記念1着 | 甲斐駒特別1着 |
阪神牝馬S | ライクンクラフト | 1 | 高松宮記念2着 | フィリーズR1着 |
高松宮記念 | オレハマッテルゼ | 4 | 阪急杯3着 | 未経験 |
オーシャンS | ネイティヴハート | 14 | スワンS16着 | 03年オーシャンS1着 |
阪急杯 | ブルーショットガン | 11 | シルクロードS13着 | 未経験 |
シルクロードS | タマモホットプレイ | 4 | 淀短距離S9着 |
これは昨年行われた芝1000〜1400mの重賞(3・4歳以上)の勝ち馬の一覧である。全部で16レース組まれたわけだが、そのうち2勝以上マークしたのはオレハマッテルゼ(高松宮記念、京王杯SC)とシーイズトウショウ(CBC賞、セントウルS)2頭のみ。この点についてはこの年が特に少ないというわけではないのだが、それよりも注目したいのが勝ち馬の人気。二ケタ番人気(10番人気)以下の馬が5勝もマークしているという点だ。阪急杯のブルーショットガンに始まり、ネイティヴハート(オーシャンS)、ビーナスライン(函館スプリントS)、コスモフォーチュン(北九州記念)、プリサイスマシーン(スワンS)。16レース中5レース、全体の30%弱も単勝で大穴が飛び出した現実は、やはり異常に思える。中には複数のレースをバッチリ的中させたファンの方もいると思うが、おそらく多くのファンがレース後に首をかしげたことだろう。極端に言えば、まともに予想しても当たらないレースばかりだった。しかし、そうやって諦めるのは簡単。一連のレース結果を振り返ることによって見えてくることもあるはずだ。
昨年の古馬の芝短距離路線の勝ち馬をザッと見渡すと、思い浮かぶ好走パターンがいくつかある。
(1)スプリント戦の経験が浅い芝のマイル前後の重賞実績馬の一発
(2)近走不振もコース実績(勝利実績)がある馬が、得意コースでドカン
(3)前走条件戦1着の昇級馬が勢いで快走
穴が出たレースに限ると大体この3つのケースだ。(1)は高松宮記念のオレハマッテルゼ、阪神Cのフサイチリシャールなど。前者は1200mのレースが初めて、後者はマイル〜中距離路線で活躍。そして前走はダートだった。(2)はオーシャンSのネイティヴハート、函館スプリントSのビーナスラインらが代表例。いずれも前走のレースで二ケタ着順(しかも後者は準OP)に大敗しており、加えて前者は休み明け。普通に考えて人気になる方がおかしいし、好走も難しいはずだった。ところが、結果は周知の通り。しかし、ネイティヴハートは重賞昇格前のオーシャンSを勝った実績があり、ビーナスラインは500万クラスだが、函館芝1200mの圧勝実績があった。
また、キーンランドCのチアフルスマイルは(1)と(2)を合わせたようなタイプ。
(3)は京阪杯のアンバージャックやアイビスSDのサチノスイーティー、北九州記念を勝ったコスモフォーチュンも同様のタイプで、加えて過去に未勝利戦だが小倉芝1200mの圧勝実績もあった。
■表2 2006年に行われた芝1000〜1400mの重賞(3・4歳以上)の2着馬
レース名 | 勝ち馬 | 人気 | 前走成績 | コース勝利 |
阪神C | プリサイスマシーン | 6 | マイルCS6着 | 未経験 |
京阪杯 | コパノフウジン | 3 | 福島民友C1着 | |
スワンS | シンボリグラン | 8 | 函館SS5着 | 葵S1着 |
スプリンターズS | メイショウボーラー | 10 | セントウルS7着 | 未経験 |
セントウルS | テイクオーバーターゲット | 2 | ジュライC7着 | 未経験 |
キーンランドC | シーイズトウショウ | 1 | 函館SS2着 | 未経験 |
北九州記念 | ゴールデンキャスト | 4 | 北九州短距離S1着 | 北九州短距離S1着 |
アイビスSD | マリンフェスタ | 3 | バーデンバーデンC4着 | はやぶさ賞1着 |
函館スプリントS | シーイズトウショウ | 1 | CBC賞1着 | 05年函館SS1着 |
CBC賞 | ワイルドシャウト | 2 | TV愛知OP1着 | TV愛知OP1着 |
京王杯SC | インセンティブガイ | 5 | ダービー卿CT11着 | 未経験 |
阪神牝馬S | エアメサイア | 2 | 中山記念3着 | |
高松宮記念 | ラインクラフト | 2 | 阪神牝馬S4着 | 未経験 |
オーシャンS | コパノフウジン | 6 | シルクロードS4着 | 市川S1着 |
阪急杯 | コスモシンドラー | 3 | 山城S1着 | 未経験 |
シルクロードS | マイネルアルビオン | 7 | サンライズS1着 | 未経験 |
続いて昨年の古馬の芝短距離戦の2着馬についても見ていこう(表2参照)。表1に比べて10番人気以下の大穴の好走は少ないが、全体的には波乱含み。1番人気の該当馬は2頭しかなく、決して堅いとは言えない。表1と同じように好走馬の前走成績、コース実績(勝利実績)に注目してみると、やはり同じように上記の(1)〜(3)に該当するようなタイプが多々好走していることがわかる。
【結論】
いつもは過去の同レースの結果を元に分析を行ってきたが、今回は別の角度から占ってみた。今年の古馬の芝短距離戦線がどうなるかはわからないが、昨年の全体の傾向を元にシルクロードSを展望してみたい。まずは、今年の出走予定馬は以下の通り(表3参照)。
■表3 今年のシルクロードSの出走予定馬優先 | 馬名 | 斤量 | 前走成績 | コース勝利 |
2 | アンバージャック | 57 | 京阪杯1着 | 京阪杯1着 |
3 | タマモホットプレイ | 57 | 淀短距離S1着 | 06年シルクロードS1着 |
4 | ディバインシルバー | 55 | 兵庫GT9着 | 未経験 |
5 | コスモフォーチュン | 53 | 淀短距離S11着 | |
6 | サチノスイーティー | 52 | ガーネットS5着 | 未経験 |
7 | コパノフウジン | 56 | ガーネットS10着 | |
8 | スピニングノアール | 56 | 尾張S1着 | |
9 | ビーナスライン | 54 | 阪神C8着 | 未経験 |
10 | タガノバスティーユ | 54 | 淀短距離S8着 | |
12 | コスモシンドラー | 55 | 京都金杯10着 | |
13 | サイキョウワールド | 55 | サンタクロースS1着 | |
13 | ナリタシークレット | 51 | 淀短距離S10着 | 三年坂特別1着 |
16 | エイシンボーダン | 54 | ガーネットS8着 | |
16 | エムオーウイナー | 55 | 新春S1着 | 新春S1着 |
18 | リキアイタイカン | 55 | ギャラクシーS16着 | |
20 | ロードマジェスティ | 54 | 東京新聞杯8着 | 未経験 |
21 | カフェボストニアン | 54 | ガーネットS7着 | |
22 | アイルラヴァゲイン | 56 | サンライズS1着 | |
23 | マルカキセキ | 57 | 福島民友C6着 | アンドロメダS1着 |
今週も多くの馬はエントリー。除外ラッシュの中、運良く出走にこぎつけられそうなのは表3の馬たちだ。まずは、前述した(1)のタイプ馬だが、残念ながら見当たらない。単純に別路線組という意味では、ディバインシルバーやエイシンボーダン、ロードマジェスティがいるが、芝のレースそのものでの実績が不足しているので厳しいだろう。
次は(2)のタイプだが、まず過去に京都芝1200mで勝ち鞍がある馬に限るとアンバージャック、タマモホットプレイ、ナリタシークレット、エムオーウイナー、マルカキセキの5頭が該当する。その内、アンバージャック、タマモホットプレイは前走同コースのOPのレースを勝っているので、普通に誰でもマークするはず。ここで声を大にして推奨しなくてもいいだろう。
よって、ここで注目したいのは残りの3頭。ナリタシークレットは前走淀短距離Sで大きく負けている点が微妙だが、ここはあえて注意。エムオーウイナーは前走準OPの新春Sを勝利しており、(3)にも通じる。あとは、もし出走が叶えばマルカキセキ。前走別コースのOPで負け、今回休み明けだが、この手のタイプが怖い。京都芝1200mの通算成績は【1022】と、決して得意とは言えないが、OPのアンドロメダSを勝った実績がある。
最後に(3)の前走準OP以下を勝ち上がったばかりの昇級馬。過去に京都芝1200mを勝ったことがない場合は、むしろ未経験である方が望ましいのでその点が割引材料だが、サイキョウワールドとアイルラヴァゲインに注目。
■表4 過去5年のシルクロードSの枠順別成績
枠順 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
1 | 0-0-0-9/9 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
2 | 1-0-0-8/9 | 11.1% | 11.1% | 11.1% | 1083% | 171% |
3 | 0-0-2-8/10 | 0.0% | 0.0% | 20.0% | 0% | 83% |
4 | 1-1-1-7/10 | 10.0% | 20.0% | 30.0% | 19% | 127% |
5 | 1-1-1-7/10 | 10.0% | 20.0% | 30.0% | 124% | 54% |
6 | 2-3-0-5/10 | 20.0% | 50.0% | 50.0% | 124% | 131% |
7 | 0-0-1-9/10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 15% |
8 | 0-0-0-10/10 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
最後にシルクロードS特有のデータを一つ紹介。同レースは枠順成績に特徴が出ている。上の表4はハンデ戦に変わった02年以降、過去5年のシルクロードSの枠順別成績。これまで中枠に良績が集中しており、内・外枠が不振。この点も参考にしていただきたい。
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2006/2/5京都11R シルクロードステークス(G3) |
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
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