DataLab.(データラボ)第14回 HRPTV5C
- 「一般的に『穴馬』と言われる馬でも、私のロジックでは『最も強いと思われる馬』だったりします」 井野元雄(HRPTV5C)
- 愛知県出身、60歳。仕事でイギリスに出張した際にデータ解析に触れ、その後78年に「回帰分析」を利用した競馬予想プログラムを発表。その後、ファミコン用競馬ソフト「井崎脩五郎の競馬必勝学」や、パソコン用「HRPTV5C」を開発。JRA-VAN NEXTの「データマイニング」作成にも協力する。
インタビュー記事 インタビュアー/市丸博司(2008/3)
AppleIIのBASICで競馬予想ソフトを開発
市丸:そこから競馬ソフト開発へ…、ということになるのでしょうが、その頃、競馬はどんな形で楽しまれていたのでしょうか?
井野:今でもそうですが、「馬」という生物については興味があります。たとえば、馬の気持ちとしてどうだとか。ただ、ギャンブルとして馬が走っている、という点にはあまり…。
市丸:それは大学や仕事の関係もあって、そういうところに至ったのでしょうか?
井野:そうですね。あとは、人間の予想そのものよりも、予想家の方々がどういう思考をもってその結論に至ったのか、といった「感覚」と言いますか。本質からどこまでずれているんだ、という面もありますけれど、人間観察と生物としての馬には興味がありますね。
市丸:それで、最初に競馬予想ソフトを作られたのが…。
井野:78年です。今の「速度」を考える理論とは違って、タイム分析を行うものでしたが。
市丸:PC-9801とかより前の時代ですよね?
井野:AppleIIというマイコンの「12K BASIC」で…、このBASICはあのビル・ゲイツ氏が作ったものですが(笑)。ちょっと出してみましょうか。
(「AppleII」を取り出す)
市丸:うわぁ〜! これはすごいですね。これ、当時100万円とかしました?
井野:いや、そんなにはしないですよ(笑)。これで「BASICによる競馬予想プログラム 勝ち馬推理」というのを作りまして、当時あった「I/O」という雑誌にも掲載されました。マイコンのBASICで回帰分析をするプログラムなんて、日本では初公開だったかもしれません。
「BASICによる競馬予想プログラム」が掲載された「I/O」誌とAppleII
市丸:その78年というと、私が見始めた頃、トウショウボーイとかテンポイントとか走っていたあたりですよね。
井野:当時は新聞に競馬エイトを使っていまして、そこに掲載されていた大橋巨泉さんの予想を上回る結果を出せれば良いなあ、と考えていましたね。それからしばらく「休憩」があったのですが、その後90年にイマジニアという会社から、井崎脩五郎さんのソフト(「井崎脩五郎の競馬必勝学」)を作成しました。
市丸:そろそろパソコンも、少しずつですが普及してきた頃ですね。
井野:市丸さんもご存じかと思いますが、NIFTYとかPC VANといった、パソコン通信にソフトをアップロードしていました。
市丸:それが「HRPTV5C」ですね。実は当時から疑問だったのですけれど、この「HRPTV5C」ソフト名は…。
井野:「ホースレーシングペーパーバージョン5C」です。その頃はN88BASICで、それからQuick Basic、そして今はVisual Basicと、ずっとBASICですね(笑)。当時は数量化II類という方法でタイム分析を行ってしましたが、その後、現在の数量化I類と「速度」を使う形になって、今の「HRPTV5C」は昨年7月から公開しています。
データ解析というと、一般のファンには理解しがたい面もありますよね?