セリは勢い、まず出だしが肝心。今年の1歳セリのトップバッターは、ルーラーシップ×ラルケット。おお、つい先月の6月、東京・芝マイルで、半兄のステルヴィオ（2歳、父ロードカナロア）が、1分34秒8の快時計で新馬勝ち。兄のアレコレと弟の上場は、当然意識してのことでしょうが（笑）、本年の第1番は5200万円で落札。暑く熱い、2017年のセレクトセールが始まった。

　人の記憶というものは、例えば馬券を予想する際も「前走重視」という言葉を使うように、近い出来事、より近い記憶を大切にすることが多い。ロードカナロア産駒は、思った以上に人気になるだろうなと思ってはいたが、上場番号19番のキングスローズが、早くも1億8000万円の高値に沸騰。半兄のサトノアーサー（現3歳、父ディープインパクト）は、当セレクトセール出身で、きさらぎ賞・毎日杯を2着。3歳クラシックの道中で、一番人気があった馬だった。

　父がカナロアに変わり、腹袋が発達し、やや背中は短めだが、個人的には、薄めの造りのディープ産駒の兄アーサーより、仕上げや使い出しにも悩まないように思う。

　カナロア産駒は、イメージだけではなく、そうした使い勝手のよさと健康感を、多くの産駒たちが宿しているし、上場番号44番のピーチブローフィズ、52番のエアジャメヴー等々、お買い得感と安心感がいっぱい。それが今年のセリの勢いや、雰囲気にもつながったのかなぁ…。

　なんて、現2歳シーンのスタートと成績そのまま。本年の1歳がセカンドクロップとなるヘニーヒューズ産駒は、21番ヒアーズトウショウが4100万円。101番のヴィヴィッドカラーは、牝馬で4700万円。エイシンフラッシュの産駒も勢いよくアチコチから手が挙がる。セリのつい前日、JRA初勝利馬が出たオルフェーヴルも、この流れに乗り、69番のウィーミスフランキーは6200万円となった。

　一番のお買い得だろうこのあたりの種牡馬の仔の値が高値を呼ぶと、ハーツクライ、キングカメハメハ、ディープインパクトの仔は、いったいどうなっちゃうのか。元々のリザーブ設定が4000万〜1億円クラスの馬がゴロゴロいるが、それが2倍、3倍と上がると、普通に2〜3億近くになってしまい、全体の売り上げの記録をグングンと押し上げることになる。

　13番のシルヴァースカヤは、2億6000万円。全兄のシルバーステートは、「幻のダービー馬」という例えをする人もいるし、現2歳のヘンリーバローズは、今週にもデビュー予定（きっと、ぶっちぎりで新馬勝ち？）。弟は兄たちとは少しタイプが違うが、この落札額はほぼ想定内。34番のライフフォーセールは9000万円。本年のエースと思しき53番サミターは、2億5000万円。なんか、サトノダイヤモンドっぽい、切れも厚みもある凄い馬だなぁ。

　いやいや、78番のラヴズオンリーミーは、どうしても手に入れたいという人がたくさんいる。98番のシャンパンドーロの艶々の皮膚感が好き。151番のヘアキティーは、新味があっていいね。重量感なら107番リッスンでしょう（2億7000万円）。175番のマイジェンは、今年こそがアタリという人もいた。

　いくらなんでも2億のディープは買えない。ならばキングカメハメハ――しかし、24番のミスセレンディピティは、牝馬で1億500万円。45番のラストグルーヴは1億2500万円。75番のガールオンファイアは1億8000万円等々、ディープのライバルであるキンカメ産駒の価値が、ダイレクトに落札価格に表れている。

　こうなったらハーツクライ。61番のバランセラの半姉はオークス3着ビッシュ（現4歳、父ディープインパクト）は、1億3500万円でハンマーが落ちた。グラマラスな118番のパレスルーマーは、1億3500万円。ハーツは、昨年あたりから最低価格がグンと上がったが、今年は中間価格も天井もさらに上昇。なんだか手が出せない、高嶺の花になってしまった。

　ブラックタイド産駒も、昨年からキタサンブラック効果で、しっかりとした馬造りと血統配合ができたと、見どころにも記したが、高くなることはあっても安くはならない（笑）。

　いやはや、セリの途中からマスコミブースで、隣りの血統センターの人が、「平均価格は4000万円近くになっちゃうかも」と、つぶやいていましたが、終わってみればチョー・コーフンものの、売り上げは前年比106％の86億3450万円。

　ふう。この溜息は何なのか。いやいや今年の1歳セリは、妙に長い一日だったなぁ。

※金額はすべて税抜き