セレクトセール2016
セレクトセールの歴史
2015年11月8日に行われたメイクデビュー京都。 芝2000Mという距離は、クラシックレースへの適性を見いだすに最適な条件であり、これまでの歴史を振り返っても、多くの活躍馬たちが、競走馬としての第一歩を記したレースでもある。
必然的にマスコミ、ファンからも注目されるレースとなるが、特に今回は別の意味でも話題を集めていた。 このメイクデビュー京都の見出しとなったのが「5億円対決」。 このレースで1番人気を集めたサトノダイヤモンドの、セレクトセール2013当歳セクションでの取引額が2億3000万円、そして2番人気に支持されたロイカバードの、セレクトセール2013当歳セクションでの取引額が2億4000万円。
左:サトノダイヤモンド(マルペンサの13)
右:ロイカバード(アゼリの13)
正確には消費税を含めても5億円を超えていないが、メイクデビューで血統、調教の動きだけでなく、セリでの評価額から話題を集める馬が現れてくるのは、ずばり、セレクトセールと、セールの取引馬がどれだけ注目されているかということでもある。
ちなみにこの「5億円対決」を制したのはサトノダイヤモンドで、2着はロイカバード。 のちにきさらぎ賞でも「5億円対決」は実現し、その際もサトノダイヤモンドが勝利と、3着に敗れたロイカバードに先着。 デビューから3戦3勝で重賞馬となったサトノダイヤモンドは、この後、皐月賞で1番人気の支持を集めて3着に好走。 今年、日本で生まれた3歳馬の頂点を決める日本ダービーではハナ差の2着と、改めてセレクトセールでの評価に相応しい走りを見せた。
サトノダイヤモンド(2016きさらぎ賞)
また、このセレクトセールでは8着のレインボーライン、10着のプロディガルサン、13着のヴァンキッシュラン、15着のイモータルもセレクトセールの取引馬。 レインボーラインとヴァンキッシュランの2頭が重賞を制してこの舞台に進んでおり、セレクトセールで競走馬を購入することが、重賞制覇だけでなく、日本ダービー出走への道が開かれているとも言える。
セール出身馬の活躍は、バイヤーの信頼度を揺るぎないものとしており、それは昨年の驚異的なセール結果にも証明されている。 昨年の1歳セクションにおける売上総額は、過去最高となる71億450万円、売却率の88.2%もまた、セレクトセール1歳セクションのレコード。 ミリオン(1億円以上の取引馬)どころか、ダブルミリオンを超える取引馬も誕生したことで、1頭辺りの平均落札額である3383万円は、1歳取引馬平均価格のレコードともなった。
セール2日目に行われた当歳セクションは、売却総額、売却率共に前年より数字を落としたものの、それでも売却総額60億6900万円、売却率は79.3%と、世界一の当歳市場の名にふさわしいハイアベレージなセールを展開。 当然のように2日間を合わせた、セール全体の売り上げ総額も131億7350万円とセールレコードを更新。売却率も83.8%を記録した。
毎年、セールの取材が終わる度に驚異的な数字を見ながら思ってしまうのだが、起爆剤はいくらでもあるのがセレクトセール。 それはセール出身馬の活躍によるところが大きいのだが、特に今年は、世界のホースマンからのディープインパクト産駒への注目度が著しく高い。 その後押しをしたのが香港カップ、イスパーン賞の連覇で、ワールド・サラブレッド・ランキングでは129ポンドと世界最高の評価がされた、エイシンヒカリの活躍によるところが大きい。
しかも、今年のセレクトセールには、1歳、当歳の両セクション共に、海外のグレードレースで優れた成績を残してきた名牝と、ディープインパクト産駒たちが多数上場。 日本のGIレースどころか、世界のGIさえも席巻しようとしているディープインパクト産駒たちが鑑定台に姿を見せた際には、これまで以上に激しい競り合いが起こりそうだ。
その他にも1歳セクションには、来年、初年度産駒がデビューを控えたオルフェーヴルやロードカナロア、当歳セクションにもジャスタウェイと、国際的な評価を受けた産駒たちが上場。 まだ産駒のデビュー前とはいえ、世界のホースマンたちもこれらの産駒が目の前を通り過ぎたのなら、無視するわけにはいかないだろう。
何よりも凄いのは、ここに名を記したディープインパクトとジャスタウェイ、そしてセールでは主取りとなったロードカナロアも含めて、セレクトセールに上場されていたという事実。 セール上場馬の父を見てもキングカメハメハ、ゼンノロブロイ、ダノンシャンティ、ディープブリランテ、トーセンジョーダン、トーセンホマレボシ、ブラックタイド、マンハッタンカフェが該当する。 競馬ファンには未来のクラシックホース、あるいはGI馬を探すセールというだけでなく、未来の日本競馬を作る父を探すセールとしても注目して欲しい。
※金額は、全て税別金額。
過去のGIウイナー
- ・ミッキークイーン(秋華賞)
昨年のセール以降の重賞勝ち馬
- ・スマートオリオン(中京記念)
- ・ジェベルムーサ(エルムS)
- ・アドマイヤエイカン(札幌2歳S)
- ・パッションダンス(新潟記念、新潟大賞典)
- ・オースミムーン(阪神ジャンプS)
- ・アルバート(ステイヤーズS)
- ・フルーキー(チャレンジC)
- ・ロジクライ(シンザン記念)
- ・サトノダイヤモンド(きさらぎ賞)
- ・ストロングサウザー(佐賀記念)
- ・サトノクラウン(京都記念)
- ・レインボーライン(アーリントンC)
- ・ミッキーアイル(阪急杯)
- ・サトノノブレス(中日新聞杯、鳴尾記念)
- ・ヴァンキッシュラン(青葉賞)
- ・サトノアラジン(京王杯SC)
ライタープロフィール
村本浩平(競馬ライター)
北海道在住の“馬産地ライター”として、豊富な取材をもとに各種競馬雑誌で活躍中。