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競馬かわらVAN(リレーコラム)

競馬かわらVANバックナンバー

第67回 ブエナビスタの誤算

2009/8/31(月)

札幌競馬場のパドックは2重、3重の人垣に囲まれていた。8月23日、第45回札幌記念には、今春、桜花賞・オークスの2冠に輝いたブエナビスタ(牝3歳、栗東・松田博資厩舎)が出走することになっていた。

札幌記念2009年(平成21年)

パドックに向かおうとする僕に、口の悪い知り合いは言った。「足の短い人はダメだよ。背伸びしても、パドックなんて見えないからね」

牝のクラシック馬が3歳時に札幌記念に出走するのは史上初めてのこととあって、札幌競馬場には2万6937人ものお客さんが詰めかけた。これは対前年比15.1%の伸びを示していた。

ブエナビスタの札幌記念には「壮行レース」の意味合いも込められていた。このレースをステップに渡仏。10月4日にパリ・ロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞に挑む計画が着々と進められていた。

69年のスピードシンボリを皮切りに、これまで日本調教馬は8頭が凱旋門賞に出走しているが、牝馬の遠征はなかった。しかも3歳馬は54.5キロで出走することができ、59.5キロを背負うことになる4歳以上の牡馬とは負担重量で5キロもの「アドバンテージ」を与えられる。桜花賞、オークスで見せたパフォーマンスをロンシャン競馬場でも発揮することができれば、ブエナビスタにも十分優勝のチャンスがあるのではないだろうか。誰もがそう期待した。

札幌記念でファンはブエナビスタをオッズ1.5倍の圧倒的な1番人気に支持した。16頭立てのレースはドリームサンデーの逃げで始まった。1000メートル通過1分0秒2。平均ペースだ。そのころ、ブエナビスタの背中で安藤勝己騎手は違和感を感じていた。

「こんなブエナは初めてだ」。若い牝馬にもかかわらず、ブエナビスタはおっとりした性格の持ち主だ。それがオークス以来3カ月ぶりの実戦だったせいか、珍しく「戦闘モード」に入っていたという。

「僕もびっくりした。これまでにないほどガツンとゲートを出ていった。1コーナーまではなだめるのに苦労した」。戦前、安藤騎手は、いつものようにゆっくりスタートして後方集団を進み、縦長になった馬群をコースの内側を通って、少しずつ馬順を上げていくというイメージを持っていた。それがいきなり崩れた。

6枠11番という外枠だったため、スタートが良すぎたことで内に入り込むタイミングを逸した。年上の牡馬を相手に3歳牝馬が外々を回る距離的なロスをこうむることになった。

3コーナー手前、ブエナビスタをマークするように進んでいた有馬記念馬マツリダゴッホ(牡6歳、美浦・国枝栄厩舎)が一気にスパートした。すぐ外側をかすめるように通過されたブエナビスタだが、動揺することもなく、追走を開始した。直線を向いたところではマツリダゴッホに並びかけ、手応え十分で先行集団を追った。

だが終始、インの経済コースを進んだヤマニンキングリー(牡4歳、栗東・河内洋厩舎)に対し、ブエナビスタはずっと外を走ってきた。ゴール寸前の追い比べになった時、その差が出た。一歩先に抜け出した柴山雄一騎手のヤマニンキングリーが優勝。ブエナビスタは首差届かず2着に終わった。

この日の札幌競馬場にはファンばかりでなく、多くの報道陣も集まっていた。ブエナビスタのレースぶりと凱旋門賞への展望を取材するためだった。その報道陣の顔色が一斉に変わったのは札幌記念が終わって、およそ1時間後だった。

札幌記念の2レース後のルスツ特別にタガノプルミエールを出走させていたブエナビスタの松田博資調教師が本馬場に馬を送り出し終えたところで報道陣に囲まれた。そこで驚きの第一声が発せられた。

「やめ、やね」。僕は一瞬、耳を疑った。凱旋門賞遠征は既定の事実だと思っていたが、札幌記念の敗戦からわずかの間に遠征計画は白紙になってしまった。松田調教師に聞きたかったのは凱旋門賞への手応えだった。負けたとはいえ、歴戦の古馬を相手に2着になり、かっこうはつけていた。

しかし、関係者には不満と不安が残った。松田調教師は言った。「勝ちに等しいじゃダメ。勝たなきゃいけなかった」

そして、こうも付け加えた。「体が思うほど増えなかった。これでフランスに行けば、もっと減るだろう」。札幌記念に出走したブエナビスタの体重は454キロ。これは2走前の桜花賞の時とまったく同じ数字だった。東京競馬場までの長距離輸送があったオークスでは446キロ。滞在競馬だった札幌記念で期待ほど増えることのなかった数字は関係者を不安にさせた。松田調教師の話しぶりを聞いていると、遠征断念の理由は、この体重の方が大きな部分を占めているようだった。

ブエナビスタがロンシャン競馬場を走る姿を見てみたかった。それはファンも同じ気持ちだろう。ただ、ここは身近に接している関係者の判断を尊重したいと思う。時差や環境の違いを克服しなければならない海外遠征は、我々の想像以上に競走馬に負担を強いる。少しでも不安な点があれば回避すべきだし、撤退する勇気も大事だ。準備を進めていたからといって、計画を強行し、取り返しのつかないことになっては本末転倒だ。

幸い、札幌記念後もブエナビスタの体調は変わりなく順調である。松田調教師によると、秋華賞に目標を切り替えた。新たに挑むことになる記録は、メジロラモーヌ(86年)、スティルインラブ(03年)に続く史上3頭目の「牝馬3冠」だ。

この記録に挑戦した後、僕はぜひジャパンカップに出走してほしいと願っている。期待しているのはウオッカ(牝5歳、栗東・角居勝彦厩舎)との現役最強牝馬決定戦だ。この対決が実現すれば、凱旋門賞断念でいくらか下がったテンションも再び上がる。ウオッカか、ブエナビスタか。この秋最大の見せ場になるかもしれない。

 

2009年8月23日 第45回札幌記念

着順
枠番
馬番
馬名
性齢
斤量
騎手
タイム
着差
調教師
1
2
3
ヤマニンキングリー
牡4
57
柴山雄一 2.00.7   河内洋
2
6
11
ブエナビスタ
牝3
52
安藤勝己 2.00.7 クビ 松田博資
3
2
4
サクラオリオン
牡7
57
秋山真一郎 2.00.8 3/4 池江泰郎
4
3
6
マンハッタンスカイ
牡5
57
吉田稔 2.00.8 アタマ 浅見秀一
5
6
12
トーセンキャプテン
牡5
57
藤岡佑介 2.00.9 クビ 角居勝彦
6
4
8
ブラックアルタイル
セ7
57
丸田恭介 2.01.2 1 3/4 二ノ宮敬宇
7
5
10
ドリームサンデー
牡5
57
中舘英二 2.01.2 ハナ 池江泰郎
8
1
2
マイネカンナ
牝5
55
津村明秀 2.01.2 クビ 国枝栄
9
7
14
マツリダゴッホ
牡6
57
横山典弘 2.01.3 クビ 国枝栄
10
1
1
シェーンヴァルト
牡3
54
池添謙一 2.01.4 3/4 岡田稲男
11
4
7
シャドウゲイト
牡7
57
三浦皇成 2.01.5 1/2 加藤征弘
12
8
15
マヤノライジン
牡8
57
藤田伸二 2.02.2 4 梅内忍
13
3
5
フミノサチヒメ
牝6
55
長谷川浩大 2.02.3 3/4 西浦勝一
14
7
13
ミヤビランベリ
牡6
57
福永祐一 2.02.4 1/2 加藤敬二
15
5
9
タスカータソルテ
牡5
57
岩田康誠 2.02.5 クビ 藤原英昭
16
8
16
ステキシンスケクン
牡6
57
武幸四郎 2.05.0 大差 森秀行

ライタープロフィール

有吉 正徳 (ありよし まさのり)

1957年1月生まれ、福岡県出身。1984年東京中日スポーツ入社、競馬を担当。92年朝日新聞社入社。東京本社運動部(現スポーツ部)、大阪本社スポーツ部で競馬、サッカー、アメリンカンフットボールなどを取材。02年10月から半年間、英国に留学、現在は東京本社スポーツグループに所属。

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