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競馬かわらVAN(リレーコラム)

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第66回 落語と競馬実況

2009/8/24(月)

春の東京開催が終わり、サマーシリーズ、いわゆる夏のローカル開催に入って、10週間が経過した。私の場合、ここ数年は決まって福島に4週、そして新潟で8週を過ごすのが通例で、涼しい北海道へ向かう同僚達を横目に、黙々と新幹線で福島・新潟を往復している。
毎年の例では、ちょうど新潟の前半の4週間が過ぎた頃に、いわゆる夏バテの現象が起こるのだが、今年は後半の新潟開催に入ってからも元気である。涼しい夏は、体調管理の面から言えば非常にありがたいのだが、桃、すいか、枝豆、トマトなど、本来の味がない。この分では米への影響も思いやられる。

さて、金曜日になると新幹線で移動し、日曜の夜に再び新幹線で戻ってくる生活が毎週つづいているのだが、この新幹線の中での過ごし方に、今年は多少、変化を加えてみた。東京〜福島間は、約1時間半。従って1週間で3時間、4週間では12時間を過ごすことになる。新潟では、更に片道で30分余計にかかるので、8週往復すると32時間、新幹線の中で過ごしていることになる。金曜の車中では競馬新聞や競馬週刊誌を見ることが多かったのだが、目を酷使してきたせいか、最近ちょっと辛くなってきた。目をやすませるつもりで閉じていると、いつの間にか眠ってしまって風邪をひきかねないので、今年は耳を使うことにしたのである。娘や息子に勧められて試したiPod。これが思わぬスグレモノであった。5000曲以上収録できるというのも有り難い。

さて、そのiPodの中に、音楽はまだ1曲も入っていない。では何が入っているかというと、落語である。アーティスト欄で検索してみると、金原亭馬生、桂文楽、古今亭志ん生、古今亭志ん朝、三遊亭金馬、三遊亭圓生、春風亭柳好、柳家小さん、林家正蔵という、いわば昭和の名人と言われた人々の噺が50席以上入っており、現在、着々とその数を増やしているところである。新幹線のシートに座って、思わずニヤニヤしてしまうのは仕方がないとして、時おりこらえきれずに吹き出してしまうこともあり、周りの乗客にとっては気味の悪い人間と思われたかも知れないが、とにかく面白い。只、私の場合は、単なる時間つぶしや、楽しさだけの為に聴いているのではないことをわかって頂きたい。落語は講談と並んで日本古来の話芸であり、非常にラジオ的な要素を多く含んでいる。音声言語だけで全てを描写し、猶且つ相手の注意を惹き付け、笑わせたり感動させたりすることができるわけで、そこに使われている手法は、洗練され、長い年月の間、伝承されてきたものばかり。アナウンサーと言えども、それを学ばない手はないのである。

現在、私が最も集中して聴いているのは、リズムとスピードである。とにかく聴く、何十回も、只、ひたすら聴いて、それを体の中に取り入れたいと思っている。リズムとスピードというと、古今亭志ん朝のように、スピーディでリズミカルで、勢いを感じさせる話し方は、競馬の実況に於いて欠かせない要素であるが、逆にゆっくりとしたリズムで、一音一音を噛んでふくめるように話す、林家正蔵改め彦六の噺を飽きるほど聴いている。実況というのは話すことの延長線上にあるので、結局はその基となる部分を改めて磨いていきたいという思いである。中村仲蔵という噺はもともと好きなので、何度でも聴くことができるのだが、本当に誰が聞いてもわかる、ゆったりとしたスピードとリズムの話し方である。その基があるからこそ、スピードアップしたときの効果はより大きく、鰍沢(かじかざわ)と言う噺で、主人公が筏で流される際の描写など、息を呑むほどの迫力が表現できるのであろう。全体に淡淡と語り進む中に、何とも言えない深い味わいを感じるのだが、どうやって学んだらいいのか皆目、見当がつかないが、とにかく人前で話すときには彦六を意識するようにしている。

さて、長く音の世界で過ごしてくると、最終的に決め手となるのは、やはり声ということになる。ただ“いい声”の定義というのは難しく、透明感のあるきれいな声ばかりがいい声とは限らず、安定した響きのある声、力強い迫力のある声、時にはかすれている声、ダミ声といわれる声さえ良く思えることもある。ちなみにアナウンサーの世界では、“いい声”と言われて大成するアナウンサーは半分ぐらいではないだろうか?後の半分は、声の質だけを問われるとクエスチョンマークがつく人達である。彼等はそれを自覚して、声の質で勝負するより、自分自身の武器を見い出し、それに磨きをかけて、常にレベルアップをはかりつづけている。落語は講談と違って、状況や行動を説明する場合にセリフを用いることが多いが、それによって圧倒的にセリフの大い種目になっている。壮年の熊さんに八つぁん、老齢の横丁のご隠居さん、若い娘やおかみさん、そしておなじみの与太郎と、多くの登場人物を演じわけているのだが、その技法は大旨、声にたよっている。高い声と低い声、強い声と弱い声、それにスピードと口調が加われば、かなり多くの人間を演じわけることができる。声の出る仕組みは筋肉の作用が大きくかかわっており、当然、筋力は強いにこしたことはない。したがって、加齢によって筋力が衰えてきたときに、どうカバーしていくかが鍵になるわけだが、名人達の録音を聴き比べてみると、案外、その秘密が解き明かされるかもしれない。私にとっては、年々深刻な問題になるので、何としても突き止めたいのだが、もう一つ掴みきれないでいる。私の声の質は、ボワっとしたソフトな感じで、シャープでパリっとしたイメージが求められるスポーツの実況には不向きであると、若い頃、大先輩に言われたことがあった。只、当時の会社の環境としては、競馬を担当しなければ生き残っていけない状況だった為に、どうすれば迫力のある声が出せるか試行錯誤を繰り返した。その結果行き着いたのが、歌手の前川清さんの声だった。宿直の晩は欠かさずスタジオに籠り、前川さんのレコードをかけながら、何度も何度も一緒に唄っては、その録音を聴き直したものだが、喉には多少負担がかかるが、グっと力を入れて押しつけるように息を出していくと、雰囲気的に近づけるような気がした。今でも前川さんの唄を聴くと、当時のことを思い出すが、前川さんには感謝している。

現在、三遊亭金馬さんの声にハマっている。何とも伸びやかで力強く、心が晴れ晴れとする朗らかさに憧れている。やはり声の力の偉大さを改めて感じる。

さて、新幹線での新潟往復も残すところ2週間。車内で過ごす時間も8時間しか無くなったわけだが、どうやら中山、東京への往復でも落語を聴く作業はつづいていきそうだ。

ライタープロフィール

白川 次郎 (しらかわ じろう)

1945年11月生まれ、高知県出身。元日本短波放送・ラジオたんぱ・ラジオNIKKEIアナウンサーで現在はフリーアナウンサー。ラジオNIKKEIにて『中央競馬実況中継』など、競馬番組を中心に担当している。また、関東地方の独立UHF放送局放送『中央競馬ハイライト』の土曜日キャスターとしても出演している。

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