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競馬かわらVAN(リレーコラム)

競馬かわらVANバックナンバー

第50回 鏡の部屋のサラブレッド

2009/5/4(月)

トレセンに入厩してきた競走馬が馬房で過ごす時間は、1日20時間に及ぶという。馬にとって厩舎の馬房は、疲れを癒し、気分的にもリフレッシュされる唯一の場所であろう。厩舎関係者ならば、快適な居住空間であって欲しいと願っているのは言うまでもない。

浄水器 撮影:白川次郎 換気扇 撮影:白川次郎

厩舎の構造は、真中に馬糧庫があり、その両サイドに10室ずつの馬房、それに人間用の居住施設が一列に繋がった、細長い長屋状になっている。その施設をJRAが調教師に貸与しているのだが、多少のリフォームは認められている。最近、調教師の考えで馬房の扉や、馬房の中の敷物、あるいは洗い場と呼ばれる馬のシャワー設備の周辺に、独自の施設を工夫しているのをよく見かける。高松宮記念の公開調教のイベントの一環としてファンと共に岩戸厩舎に伺ったとき、数々の工夫の跡を見て改めて感心した。興味深い設備が多かったので、改めて取材させて頂いたわけだが、幾つかを御紹介しよう。

岩戸厩舎に入っていって、まず目につくのは浄水器である。通路にそって5台ほど設置されている。馬の飲み水に関しては、昔からその有効性を耳にしている。かつて関西馬が府中の東京競馬場に遠征してきて滞在中に、水質の良さからめきめき状態がよくなったという話や、府中の水を遠征先まで持参していったという例が数多くあって、水の重要性を改めて認識した次第である。トレセンでは、浄水器はどこの厩舎でも必需品だが、これだけ数多く並んでいるのは珍しい。

次に目についたのは、一つ一つの馬房に取りつけられた大型の換気扇。馬房内に敷きつめられた乾燥した稲藁は、どうしてもホコリが出やすいので厩舎作業の際、担当者にとってマスクは必需品なのだが、馬にマスクをかけさせる訳にもいかず、少しでも外に排出する為の装置ということになる。又、長時間馬が馬房に居れば、当然、排泄物が溜まってしまうのは仕方のないことだが、そこから発生するアンモニア臭は、馬の呼吸器にとって大敵とのこと。業務用の大型換気扇が威力を発揮することになる。

更に馬房内の三面の壁には、床から30センチ、50センチのあたりに板が2枚、水平に取り付けられている。馬は慣れてくると、馬房の中で横になって眠ることがあるのだが、起き上がろうとする際、滑って脚を故障してしまうことがあるそうだ。壁に取り付けられた板は、起き上がる際の足がかりになって不用意な怪我を防ぐ役に立っている。それから敷藁の下は、普通、土の床になっているが、岩戸調教師は床の部分にゴム製のマットを敷き、更に滑りにくくする工夫をしていた。

さて、これからの時期は、馬の暑さ対策が重要になってくるが、岩戸厩舎では、まず大型の葭簀によって直射日光を遮っている。直射日光の下と日陰では、気温は5度違うと言われているので、かなり有効な手段といえる。それに加えて、最近あちこちで話題になっている、細かい霧状の水滴をファンで送り込むエアミストも併用するとのこと。岩戸調教師はクーラーの導入も考えたそうだが、競馬は暑い中で行われ、又、遠征先の馬房には当然クーラーは無い。クーラーに慣れてしまうと、無いときとのギャップが心配になる為、なるべく自然に近い状態での快適さを求めて、様々な手段を講じていることが伺える。それから強い運動を消化したあと、筋肉は炎症を起こして熱を持つことが多いが、効果的な処置として、患部を冷やすのが一般的である。野球のピッチャーのアイシングなどはよく知られているが、馬にもこの方法はとり入れられている。ビニールパイプや布を脚に巻いて、そこに冷たい水を流す光景を見かけたことがあるが、夏場は水温も上がって効果が期待できないこともあるそうだ。そこで岩戸調教師は、水の冷却装置を購入して設置している。

鏡に見入るブラストクロノス 撮影:白川次郎

さて、今回の取材で、私が最も驚いたのは、鏡張りの馬房があったことである。馬の全身が映るほど大きな鏡が一方の壁にはめこまれている。ガラス製ではなく、ステンレスのような金属製の磨きこまれた板である。この馬房に入っているブラストクロノスは、3歳の牡馬であるが、ややおちつきがなく、テンションが高くなりがちな性格とか。そこで常に自分以外の馬の姿を見せることによって、慣れさせるのが目的になっている。他の馬を恐がったり、あるいは馬に対して攻撃的な性格の馬などが、この鏡張りの馬房に入ることになるようだ。中には驚いて鏡の中の馬の姿に攻撃を加えた馬もいたそうだが、じっと己の姿を見つめているブラストクロノスはどう感じているのであろう。その他、この鏡の効果として岩戸調教師が期待しているのが、気分転換、あるいは気を紛らすことだそうだ。やはり20時間馬房にいると、退屈して船揺すりや、あちこちを齧ったり、ろくなことを覚えないので、その予防策ということになりそうだ。元来、馬は自分の姿を映して見たことは無いだろうから、やはり他の馬が居ると認識しているのだろうが、この成果については非常に興味深いので、ひきつづき注目したい。

マイクロレーダー 撮影:白川次郎 岩戸調教師 撮影:白川次郎

その他に目についた物といえば、医療機器である。整形外科や整骨院でよく見かけるマイクロレーダーが、岩戸厩舎では5台も設置されている。患部を温める為に使用するそうだが、診療所に行けば、当然使える機器を何故5台も揃えたのだろうか。この疑問に岩戸調教師は、診療所でプレッシャーを感じながら療養するより、自分の馬房でリラックスした状態で手当をしてやりたいと答えてくれた。なるほど獣医師の白衣に過剰に反応する馬の例を聞いたことがあるので、確かに納得できる。更に岩戸厩舎では整体師を定期的に招き、施術と共に一頭ずつのカルテを作成し、その指導のもとに担当厩務員がそれぞれの馬のケアを心がけている。プリティオードリーは、そのおかげで走れるようになった例だそうだ。このマイクロレーダーの他に、超音波で腫れやむくみを散らすウルトラソニックが3台、骨や周辺の痛みをとるハンディレーザー3台が備えられて効果をあげている。

鳩が入らないように工夫された天井、急に頭を振り上げて鼻をぶつけないよう、出入り口にゴムのクッションをとりつけたりと、いたる所にアイデアをこらしてある設備を見終わって、何故ここまで私財を投じて設置するのかを聞いてみると、「もちろん馬主さんに対しての責任が一番ですが、何もしないでいて、やっておけばよかったという後悔だけはしたくないんです。何が正解か、ということはなかなかわかりませんがね。」と岩戸調教師は答えてくれた。岩戸厩舎は、一昨年、昨年と20勝のラインをクリアして注目していたのだが、その勝因の一端を見た思いがする。

今後、岩戸厩舎がどのような新兵器を導入するのか、楽しみである。


ライタープロフィール

白川 次郎 (しらかわ じろう)

1945年11月生まれ、高知県出身。元日本短波放送・ラジオたんぱ・ラジオNIKKEIアナウンサーで現在はフリーアナウンサー。ラジオNIKKEIにて『中央競馬実況中継』など、競馬番組を中心に担当している。また、関東地方の独立UHF放送局放送『中央競馬ハイライト』の土曜日キャスターとしても出演している。

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