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競馬かわらVAN(リレーコラム)

競馬かわらVANバックナンバー

第46回 最近よく聞かれること

2009/4/6(月)

競馬の仕事を始めて38年。あっという間に過ぎ去ったような気がするが、周りの人々の変化が、長い月日を思い出させてくれる。新しい人達が加わってくると殊更、その思いが強くなる。そういえば、この人の父親は自分より年下なのか、と知るとなんとも言えない気分である。二回りどころか、三回りも年下の人達と同じ仕事をしているわけだから・・・・・・。それでも実況をやらせてもらえる間は、昔話や、思い出に耽るのはやめようと思っている。年齢を自覚せざるを得ないのは仕方がないとして、体力や気力が衰えてしまえばとてもレースの実況はできない。

長い間実況の仕事を続けてきた御蔭で、人前で話す機会が増えてきたように思う。一般的な競馬教室や、ロータリークラブの卓話などだが、生涯教育のカリキュラムに競馬の項があったのには、正直驚いた。世の中変われば変わるものだ。

そうした会で必ず受ける質問がいくつかある。なんといっても一番多いのは、「よくあれだけ、次から次へと馬の名前が出てきますね。」というもの。これは、昭和46年に競馬場へつれていかれて初めて競馬の研修を受けたときに、私自身が驚き、何故こんなことができるのだろうと感じた素朴な印象である。それも1レースだけではなく、仮に12レースの半分、6レースを実況するだけでも、90頭あまりの馬名を記憶しなければならない。確かにこれは凄いことに違いない。現在入社したてで実況の練習で苦労している後輩を見ていると、改めて私の研修時代のことを思い出す。先輩から懇切丁寧にノウハウを伝授されるのだが、それが実践できるまでには、かなりの時間を要する。600mから700m先の馬を判別する為には、数字のついたゼッケンでは見え難いので、ジョッキーのヘルメットの色と、着用している勝負服の色と柄で判別していくのだが、頭では理解できる。しかし、瞬時にそれが馬名として口をついて出てくるかというと、これは別問題である。目が認識した帽色と服色を頭の中で馬名に変換していく、いわば単純作業だが、どうしても時間がかかってしまう。スピードが身上のレースにおいて、このもたつきは命とりになってしまう。つまり脳が憶えるというより、口が憶えなければならない。目から口へ抜けるようにならなければ、一人前でないということになる。それには結局、反復練習しかないので、レース前に双眼鏡で馬を判別し、繰り返し繰り返し馬名を口にする作業が必要になる。出走馬が馬場に出てきてからスタートの時間までの間、何度も馬名を口にするのが実況アナウンサーの習慣になっている。もちろん慣れてくると、この時間はどんどん短縮されていく。私も40代のころは、集合合図のかかる3分前から始めて記憶できていたが、今は倍から3倍近い時間を要するようになってしまった。致し方のないところと諦めながら励んでいる。前日から憶える手もあるが、場合によっては他のレースに走る馬の名前と混同してしまうデメリットが出てきてしまう。同じ冠号の馬が多いときには、より注意が必要になる。やはり最終的には直前に憶えきってしまう方法がベストで、どれだけ集中できるかが鍵になる。更に、一つのレースを実況した後には、必ず記憶した馬名を消去してしまうことも大事な条件になる。ホワイトボードに記された馬名をきれいに拭い去るようなものだ。この作業がうまくいかないと、次のレースの馬名を鮮明に刻むことができず、あやふやな気持ちのままレースに臨んでしまって、納得のいく実況にならなくなってしまうことが多い。単純な反復練習と集中力を維持することが、何よりも実況には大事な条件と言えるだろう。これは何も日本に限ったことではない。オーストラリアの競馬場で実況のブースを見学させてもらったときに、現地のアナウンサーも「5分前になったら話しかけないで欲しい。」と語っていたことを思い出す。

それからもう一つよく言われるのは「言いにくい馬名を、よく舌を噛まずに言えますね。」ということ。確かに片仮名で9文字以内と決められた馬名の中には、かなり発音しにくいものがあるのは確かである。日本人が総体的に発音しにくいとされるラ行の音などはその最たるものであろう。舌先を上顎で強くはじいて出すラ・リ・ル・レ・ロの音は、連続して出てくるとより発音しにくくなる。シンボリルドルフを明瞭に発音する為には、かなり意識する必要がある。更にラ行の音の間に、微妙に舌先の位置を変える「ド」の音が入っていることも発音しにくい原因になっている。「ダラダラ」とか「ドロドロ」と実際に発音してみると、つい「ダアダア」「ドオドオ」になりがちになることに気がつく筈である。

又、唇を一旦閉じて、開けながら発音するマ行の音も、連続すると案外言いにくいものだ。「モモモモモ、スモモモモモ、モモモスモモモ、モモノウチ」という早口言葉の文があるくらい、発音しにくい音である。タマモモノノフがその代表選手。早く引退して欲しいと願ったアナウンサーがいたという不謹慎な噂が流れたほどだった。

後は、小さな「ュ」を使う拗音が落とし穴になる場合がある。フレンチデピュティの産駒で、○○デピュティ、デピュティ○○○という名前には、かなり気を遣ってしまう。とは言っても、アナウンサーは入社以来、早口言葉はもちろん、さまざまな発音のトレーニングを積んできているので、言いにくい馬名というのはそれほど大きな障害とは思っていないのが事実である。

さて、一番困る質問というのは、「失敗談を教えて下さい。」というもの。人の失敗は確かに我が身にとっては面白いのかもしれないが、他のスポーツ実況と違って、競馬の場合は一つの間違いが惹き起こす影響は桁違いに大きい。一つのレースに投入された金額を見る度に気持ちがひきしまる。とても笑い話になるような他愛のない話ではない。そこで仕方がないので、放送時間に間に合わなかった例とか、東京競馬の開催初日に、うっかり中山競馬場に行ってしまったことなどを話して許して頂くことにしているが、1着馬を間違えそうになった時など、心臓が凍るような思いをしている話など、とてもできない。

さて、ラジオNIKKEIを停年退職後も実況をさせて頂いている身としては、1年1年が勝負となる。体力と反射神経の衰えをどれだけ遅らせることができるかが、私の義務と考えて、テニスやゴルフに積極的にとりくむようにしている。尤も妻や子供達に言わせると、ただ遊んでいるだけと見ているようだが、見解の相違であろう。

これから忙しくも、一番楽しいシーズンがやってくる。体力負けしないよう、精一杯取りくんでいこう。

ライタープロフィール

白川 次郎 (しらかわ じろう)

1945年11月生まれ、高知県出身。元日本短波放送・ラジオたんぱ・ラジオNIKKEIアナウンサーで現在はフリーアナウンサー。ラジオNIKKEIにて『中央競馬実況中継』など、競馬番組を中心に担当している。また、関東地方の独立UHF放送局放送『中央競馬ハイライト』の土曜日キャスターとしても出演している。

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