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競馬かわらVAN(リレーコラム)

競馬かわらVANバックナンバー

第41回 心に残る名馬たちNo.10 ナスノチグサ

2009/3/2(月)

馬房の前に置かれた1台の小さなラジオ。そこから流れてくる軽快な音楽や、やさしい話し言葉に、毎日耳を傾けて激戦の疲れをいやし、めきめき力をつけて菊の大輪を手にしたアカネテンリュウを、前回のこの欄では取り上げた。

今回は、狭い馬房の中で、兎や山羊と寝起きをともに、心穏やかな日々を過ごして、激しい気性を是正、持てる力を存分に発揮して、オークスの女王の座を射止めたナスノチグサを思い出してみた。

ナスノチグサ 1973年(昭和48年) 優駿牝馬

いまでは防疫上、馬房内はもとより、厩舎内への小動物の持ち込みは規制されているが、ナスノチグサのオークス優勝は昭和48年、私が足しげく厩舎を取材して歩いていた、いまから30数年前の話である。

雨上がりの不良馬場で争われた25頭立ての桜花賞で、1番人気にこたえて優勝したのが2歳上の姉ナスノカオリ。その全妹ということで、ナスノチグサはデビュー前から将来を嘱望され、2歳時はその評判どおり、7月末のデビュー戦から、暮れの2歳牝馬Sまで、7戦して5勝2着2回と期待にこたえてきた。

しかし順風満帆とはいかなかった。一息入れての3歳初戦のクイーンCを、好位追走ながら7着と敗れてから、御大稲葉幸夫調教師も頭を痛めるナスノチグサに変わっていった。

名伯楽といわれた尾形藤吉師、藤本冨良師など、名門厩舎が軒を並べる東京競馬場内の厩舎群。稲葉幸夫厩舎も桜花賞馬ナスノカオリはじめ、関屋記念、新潟記念連覇のアマノガワなど、実力馬めじろ押しで、水、木曜の朝の調教後は、記者の私は毎週のように馬房を訪ねていた。

運動を終えて朝のカイバを食べたあとは、馬房の中で静かにくつろぐ馬が多い中で、ナスノチグサだけは、片ときもじっとしていなかった。狭い馬房の中をぐるぐる歩き回ったり、カイバ桶にぶつかるほど、首を左右に大きく振り続けたり。担当の村山厩務員はもとより、稲葉幸夫師もナスノチグサの気性の激しさには、頭を痛めてきた。

「姉のカオリはおとなしい性格なのに、同じ姉妹とは思えないチグサの気の強さですネ。調子が悪くなるといらいらしてきて、イレ込みも激しくなって・・・・・・。そんないら立ちを鎮めるために、馬房の中に兎や山羊を入れたんですが、兎はダメでしたが、山羊の方は効果がありましたネ。」記者にこう話してくれた稲葉幸夫師の、眼鏡の奥のやさしい眼差しと笑顔が、いまでも思い出されてくる。

馬房の中の兎は大きな体のナスノチグサにおびえているのか、すみっこにうずくまったまま、身動き一つしない。これでは効果は表れない。山羊の方はナスノチグサの目に入ってくる体や動きで、メイ、メイと鳴きながら、馬房の中を駈けずり回ったり、ナスノチグサに突進したり。取材に訪れてこんな光景を何度となく目にしてきたが、日を追うごとにナスノチグサは落ち着きを取り戻し、山羊と戯れ遊ぶ日々に、我々記者でも感じ取れる変化が見られてきた。

本来なら“姉妹制覇”を目指す桜花賞だろうが、稲葉幸夫師はナスノチグサの気性と将来を考えて、桜花賞遠征を断念。たくましく、おとなしく成長していくナスノチグサの姿に、姉ナスノカオリが1番人気で10着と期待を裏切ったオークスでの雪辱に、自信を深めていくのである。

クイーンC凡走後、調子を取り戻して挑んだフラワーCは3着、オークストライアルの3歳牝馬特別は、同厩舎のレデースポートの2着と惜敗も、上昇気運に乗ってのオークス挑戦に、取り囲んだ大勢の報道陣の輪の中で、主戦嶋田功騎手は胸を張っての強気の言葉を口にしたのである。

それはこのコラム“ハイセイコー”のときにも触れた「ナスノチグサのオークスより、タケホープのダービーの方が自信がある」の豪語ともいえる名ゼリフである。

中央競馬へ移籍後も、負け知らずでコマを進めてきた怪物ハイセイコー。その断然ムードのハイセイコーに、前走を勝ってダービーの出走権を手にしたばかりのタケホープである。唖然として聞き流した報道陣。しかし嶋田功騎手はナスノチグサのオークスに次いで、タケホープでも晴れのダービーの表彰台に立ったばかりか、前年のタケフブキに次いで、稲葉幸夫師、嶋田功騎手はオークス2年連続Vを果たしている。

オークスを勝って頂点に立ったナスノチグサ。次戦の牡馬相手の安田記念でも3着と力走、無事に暑い夏も乗り越えて、秋はビクトリアC(現秋華賞)でGT2勝目を狙ったが、オークス2着のニットウチドリの2着。勝てないまでも元気な走りを見せてきたが、オークス後に勝利の女神が訪れるまでは、1年以上の月日が流れてきた。

ジュピック、カネヒムロ、タケフブキの前3年のオークス馬は、その後1勝も挙げられず引退している。「オークス馬は勝てない」とまでいわれてきたものである。そんな周囲の風評を吹き飛ばしたのは、ナスノチグサ4歳の夏。“ベストに仕上げて勝てないなら、運命とあきらめるしかない”(稲葉幸夫師)と送り込んだのが、炎天下の新潟、重賞新潟記念だった。

わずか8頭の競馬ながら、スガノホマレ、ニューサントなど牡馬の強豪相手、BSN杯、七夕賞(ともに新潟コース)を2、3着後のナスノチグサは、55キロを背負っての1番人気。その期待にこたえるレコード勝ちだった。

ナスノチグサ 1975年(昭和50年) 京王杯オータムハンデキャップ

ナスノチグサは5歳の秋にも京王杯オータムハンデを勝って、39戦8勝2着6回、大きな故障もなく、有馬記念を最後にターフを去っていったが、稲葉幸夫調教師はその後もテイタニヤ、テンモンでオークスの表彰台に立ち、“牝馬作りの名人”とまでいわれてきた。

イレ込みが激しい牝馬をいかに落ち着かせベストに仕上げてレースに送り出すか、山羊との馬房の中での共同生活はいまでは考えられないことだが、それを思いついた稲葉幸夫調教師の手腕、功績、そしてナスノチグサの激走は、いまでも忘れない思い出として強く残っている。

ナスノチグサの血統

ナスノチグサ
鹿毛 1970年生
パーソロン
1960年生
Milesian
1953年生
My Babu
Oatflake
Paleo
1953年生
Pharis
Calonice
ナスノホシ
1962年生
Faux Tirage
1946年生
Big Game
Commotion
ロゼッタ
1954年生
Fair's Fair
Rose Marie

 

ナスノチグサの成績

開催日
開催場
競走名
着順
騎手
コース
タイム
1972/7/23
東京
新馬
1
嶋田功
芝1100
1.06.3
1972/8/12
福島
オープン
1
嶋田功
芝1000
58.6
1972/8/27
福島
福島3歳S
2
嶋田功
芝1100
1.05.8
1972/10/22
東京
オープン
1
中島啓之
芝1400
1.24.8
1972/11/3
東京
3歳S
2
中島啓之
芝1400
1.23.5
1972/11/26
東京
府中3歳S
1
中島啓之
芝1600
1.37.4
1972/12/17
中山
3歳牝馬S
1
中島啓之
芝1600
1.38.2
1973/2/25
中山
クイーンC
7
嶋田功
芝1600
1.40.1
1973/4/7
中山
フラワーC
3
嶋田功
芝1600
1.38.3
1973/4/29
東京
4歳牝馬特別
2
嶋田功
芝1800
1.49.7
1973/5/20
東京
優駿牝馬
1
嶋田功
芝2400
2.28.9
1973/6/10
東京
安田記念
3
嶋田功
芝1600
1.35.9
1973/10/28
京都
京都牝馬特別
12
増沢末夫
芝1600
1.41.9
1973/11/18
京都
ビクトリアC
2
増沢末夫
芝2400
2.29.4
1974/1/6
東京
金杯
13
増沢末夫
芝2000
2.02.8
1974/2/3
東京
東京新聞杯
8
増沢末夫
芝2000
2.03.1
1974/3/16
中山
中山牝馬S
6
嶋田功
芝1800
1.51.7
1974/4/6
中山
オープン
4
嶋田功
芝1800
1.51.8
1974/5/4
東京
京王杯SH
10
嶋田功
芝1800
1.49.6
1974/5/19
東京
オープン
4
嶋田功
芝1800
1.49.4
1974/6/9
東京
安田記念
5
嶋田功
芝1600
1.36.1
1974/7/14
新潟
BSN杯
2
嶋田功
芝1600
1.34.9
1974/8/4
新潟
七夕賞
3
嶋田功
芝1800
1.48.2
1974/8/25
新潟
新潟記念
1
嶋田功
芝2000
2.01.7
1974/10/13
中山
オールカマー
5
嶋田功
芝2000
2.05.4
1974/11/24
東京
天皇賞
6
嶋田功
芝3200
3.23.3
1975/1/6
東京
金杯
10
嶋田功
芝2000
2.03.8
1975/2/2
東京
東京新聞杯
6
嶋田功
芝2000
2.04.2
1975/3/16
中山
中山牝馬S
5
嶋田功
芝1800
1.51.4
1975/4/20
東京
京王杯SH
3
中島啓之
芝1800
1.49.3
1975/5/11
東京
アルゼンチン共和国杯
7
中島啓之
芝2400
2.28.8
1975/6/8
東京
安田記念
3
中島啓之
芝1600
1.37.6
1975/7/13
新潟
BSN杯
2
嶋田功
芝1800
1.49.0
1975/8/3
新潟
関屋記念
3
嶋田功
芝1600
1.34.0
1975/8/24
新潟
新潟記念
3
嶋田功
芝2000
2.02.5
1975/9/7
中山
京王杯AH
1
嶋田功
芝1800
1.47.4
1975/10/12
東京
オールカマー
9
嶋田功
芝2000
2.03.3
1975/11/23
東京
天皇賞
6
嶋田功
芝3200
3.30.6
1975/12/14
中山
有馬記念
12
嶋田功
芝2500
2.39.3

ライタープロフィール

原 良馬 (はら りょうま)

1933年10月生まれ、群馬県出身。デイリースポーツ東京本社、中央競馬の予想記者担当を経て、独立。競馬ジャーナリスト活動を本格化した。ラジオNIKKEI『中央競馬実況中継・土曜日午前中』、テレビ東京『ウイニング競馬』のレギュラー解説、また雑誌の競馬コラムや美浦トレーニング・センターで行われるGIレース公開調教会の司会進行なども担当している。

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