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競馬かわらVAN(リレーコラム)

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第38回 厩務員の作業レポート(前編)

2009/2/9(月)

午前4時10分。美浦トレーニング・センターを南北に分かつ中央の通りの街灯だけが耿々と灯り、厩舎地区もさすがに真っ暗で人影も見えない。気温は4度だが風がないのがありがたい。約束した4時半より10分早く到着したが、高橋祥泰厩舎の一角は既に点灯され大戸が開いていた。 矢田敏幸 厩務員 撮影:白川次郎 中で今しも作業にとりかかろうとしていたのは、矢田敏幸さん(44歳)である。キャリア26年、ベテランの域に入った厩務員。矢田さんは北海道、室蘭の出身。父親は会社員、2人兄弟の長男だが、テレビでハイセイコーを見たのがきっかけで、それ以来すっかり競馬に魅了されてしまった。当時の室蘭では、競馬のテレビ中継は、年に数回NHKが放送するだけであったが、矢田さんは父親にせがんで札幌競馬場に通った。そして昭和57年、高校卒業まであと半年という時期に、開校したばかりの競馬学校、厩務員課程に入校することになる。スポーツ新聞や、直接競馬学校に電話で問いあわせた情報だけで入校しただけに、思い描いていた世界とは相当ギャップを感じたようで、これは長くいる所ではないと思ったそうだ。

10月からの3ヵ月の研修を終え、昭和58年、美浦の山崎厩舎でいよいよ競馬人としての生活をスタートさせることになる。厳しい先輩厩務員に随分しごかれたと当時を振り返るが、矢田さんの特長の一つである、人に話しを聞きに行って多くの事を吸収することが、現在の仕事の礎になっているようだ。出張ばかりの仕事だったが、その間、東西の多くの厩舎人に出逢ったこと、国枝、後藤、宗像、久保田貴士調教師とは、助手時代から話しをしていたこと、更に獣医師には馬の体の事を教わり、名厩務員と言われる人達の仕事は積極的に見に行くよう、アドバイスを受けたり、装蹄師には爪のことを随分教わったという。

平成7年に高橋祥泰厩舎に移って、すぐに担当したタイキフォーチュンが第1回のNHKマイルカップを獲得したのも偶然ではなかったように思える。矢田さんが現在担当している馬は2頭。牧場から来て3週間を経た3歳馬のプリマティスタと、現在、怪我で療養中の人に代わって担当しているレッツゴーヒチョリである。

寝藁鉤 撮影:白川次郎

裏掘り 撮影:白川次郎
まずは馬房の清掃から作業は始まる。寝藁の中から糞を丁寧に掻き出した後、尿で濡れた藁を除去し、その後熊手で清掃していく。寝藁鉤を二本持って、次々と藁を移動していくのだが、流れるようにまったく無駄のない動作で、新たな藁を補充して敷き直していく。壁ぎわを少し高く敷くのがコツだそうだ。一つの馬房がきれいになるまでの所要時間は20分。そして次の馬房で同じ作業が行われるのだが、終わる頃には前の馬房が糞や尿で汚れてしまって、更に作業が増える。それでも矢田さんは「したかったんでしょう。しょうがないですよ。」と笑う。その間にも、検温、馬体、そして足元のチェック、更には裏堀りという道具を使って蹄鉄や蹄底の汚れをとり、蹄鉄を叩いたその音でゆるみがないか判断していく。5時を回ったあたりから、水桶と飼葉桶を洗い、きれいな水を入れて馬房にセットする。それから調教の準備が始まる。乗り運動に備えてプロテクターを着用し、皮製のオーバーズボンをはいてヘルメットを被る。冬場は馬に乗っていると足先が冷えるので、靴用のカイロは必需品だそうだ。そして馬の前肢に保護用のバンテージを巻くのだが、ウッドチップコースで調教する馬には、更にクモズレよけを装着していく。高橋調教師に体温をはじめ今日のコンディションを報告した後、最終的に今日の調教スケジュールを確認。今日高橋厩舎では、第1陣が7時に6頭、ダートコースでの調教。第2陣は8時5分に4頭、そして第3陣は9時25分に坂路で5頭が追われ、先週競馬をした4頭は運動だけというスケジュール。矢田さんの馬は、第1陣と第3陣に参加することになっている。まずはプリマティスタにゼッケンと鞍をセットする。高橋厩舎では薄黄色で蛍光色のラグと呼ばれる布で背から腰のあたりを覆って目印にしている。ハミと手綱をセットしている間も、レース経験の無いプリマティスタはちっともじっとしていない。そして調教師が見守る中、歩様をチェックしていよいよ騎乗、敷地内の乗り運動が始まる。8分経過後、6時に6頭がグループになり、厩舎の外へ出て乗り運動へと移っていく。40分後、田中博騎手が変わって騎乗して南の馬場へ移動。矢田さんはバイクでスタンドへ向かう。そしてスタンドで5頭の調教を見て時計を確認すると、ただちに馬場出口へ馬を迎えに走り、田中騎手に変わって手綱を取ると厩舎へUターン。 汗こき 撮影:白川次郎 厩舎の回りを歩かせてクールダウンで今日の調教が終わる。時刻は7時40分になっていた。それから洗い場でシャワーを浴せ、全身を隈無く洗った後で汗こきを使ってザッと水滴を落とす。そしてタオルで更に水気を拭き取り、蹄に蹄油を塗り馬房へ入れる。ようやく環境に慣れたようでプリマティスタは従順に従っているが、馬によっては顔や耳、内股に触れられるのを嫌う馬もいるそうだ。馬房内では新しい水と飼葉を与える。飼葉はエン麦と配合飼料が中心で、馬によってはサプリメント類を加えることもあるとか。馬が飼葉を食べている最中も乾いたタオルで全身をこすり、それからブラッシングへと移っていく。最後は櫛を使ってたてがみ、そして前髪を整えてもらって馬着が着せられる。時刻は8時10分。今日はいつもより早く終わったそうだ。角馬場で乗ったり、足下に不安のある馬は、洗い場でホースの水をかけて冷やしたり、湿布、マイクロレーダー治療などで更に時間がかかってしまう。この後、2頭目の馬が待っているだけに、朝は限られた時間の中でできるだけのことをしてやりたいと矢田さんは語る。

一服する間もなく、使ったタオル類、あて物、鞍下、バンテージの洗濯をして、2頭目のレッツゴーヒチョリの調教準備が始まる。この頃第2陣の調教が行われており、乗り手の帰ってくるのを待ちながら、引き運動が始まった。靴も先に鉄板の入った安全靴に履き替え40分ほど厩舎の回りを歩かせる。9時25分、再び南馬場への移動、今度は角馬場から坂路調教が行われる。9時45分に1本目、そして10時に2本目の調教が終わり、再び30分間のクールダウンが行われる。チップコースで調教を行うと、蹄鉄と蹄の間にチップがはさまることもあるので、裏堀りで丁寧に除去してから蹄油を塗る作業へと進む。まだなじみの薄いレッツゴーヒチョリとのコミュニケーションをとる為、ときおりニンジンのかけらを馬に与える姿がほほえましい。11時過ぎに獣医師の診察が始まる。小走りに走らせて歩様を見た後、聴診器で心音を聴き、更に膝下を触診したりで診察は終わる。2頭とも異常なし。そして馬房に戻して、ボロを拾って、矢田さんの午前の作業は終わる。時刻は11時半であった。

(後編につづく)

ライタープロフィール

白川 次郎 (しらかわ じろう)

1945年11月生まれ、高知県出身。元日本短波放送・ラジオたんぱ・ラジオNIKKEIアナウンサーで現在はフリーアナウンサー。ラジオNIKKEIにて『中央競馬実況中継』など、競馬番組を中心に担当している。また、関東地方の独立UHF放送局放送『中央競馬ハイライト』の土曜日キャスターとしても出演している。

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