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競馬かわらVAN(リレーコラム)

競馬かわらVANバックナンバー

第34回 有意義だった元日調教取材

2009/1/12(月)

美浦トレセンの初日の出 撮影:白川次郎

国枝厩舎の入口に飾られた騎手像 撮影:白川次郎

馬頭観世音に供えられた鏡餅 撮影:白川次郎

尾形充弘調教師 撮影:白川次郎

トレセンのスタンドに張り出された年始の張り紙 撮影:白川次郎

薄明りの中に黒々と聳える木立の隙間から一条の閃光が漏れたと見えた次の瞬間、オレンジ色の球体がポッカリと浮かびあがった。2009年の初日の出である。気温はマイナス1度。そしてこの瞬間を待ちかねたように一団の馬群が馬場の入口に向かい、元日の調教が始まった。元日の調教は35年ぶりになるそうだが、美浦のトレーニング・センターができて30年、もう元日の調教を知っている人の数はかなり少なくなってしまっている。私自身も当時、既に競馬を担当していたのだが、さすがに元日の調教は見たことがなかった。

そこで大晦日からトレセンに泊り込んだのだが、厩舎独特の年末・年始風景や行事をひょっとしたら目にすることができるかも知れないという期待を持っていたのである。しかし残念ながら、特別珍しい物は見つけることができなかった。大晦日から元日とトレセン中を歩き回ったが、門松や輪飾りといった一般生活の中で見られる光景だけであった。あえて挙げるなら、国枝厩舎の入口にたっている騎手像が正月飾りのバージョンになっていたことだろうか。国枝調教師によると、昨年ぐらいから始めたそうだが、これなどはいかにも厩舎の正月らしい雰囲気がある。それから馬頭観世音に鏡餅が供えられていたことであろうか。厩舎人の追悼と馬に対する感謝の念が充分に伝わってきた。

調教に関しても馬場の開放が少し短くなるだけで、まさに平常どおり。お屠蘇気分などは微塵も感じられなかった。トレセンではすれちがう人には必ず挨拶をするのが通例であるが、この日はいつもの「お早うございます」が「おめでとうございます」に変わった程度で、ともすると元日ということを忘れそうになる。

今回の元日調教を中心になって推進してきたのは、日本調教師会関東本部長の尾形充弘調教師である。尾形調教師が2009年の競馬を1月4日から行いたいとJRAから打診されたのは、9月の初旬のこと。冷えこんだ経済情勢の中、日曜日の4日に開催するか、世の中が完全に動き始める月曜日の5日にするか、売り上げ、入場人員ともに明らかに違ってくるのは当然のこと。尾形調教師も4日の開催は止むなしと受けとめたものの、それからは立場上、交渉に明け暮れることになる。4日の競馬を行う為には、どうしても元日の調教は不可欠と考えた尾形調教師は、関東の調教師にその必要性を説いて回った。代休の問題、それに何といっても普通の休日とは違う元日という特殊な休日の手当の問題などが当然、待ち受けている状況の中での推進であった。そしてその後は、厩務員労働組合に対しての協力要請となるのだが、労働組合の理念としてはこれは到底受け入れられない問題であろう。労働条件の改善、環境改善という面からは、完全に逆行することになる筈である。それでも尾形調教師をはじめ調教師会の要請に、労働組合は応えたのである。組合員から実際に「元日出勤に関する共同声明」の内容を話してもらったが、現在、競馬が置かれている環境の厳しさを充分に認識しており、競馬を支える為の協力・努力は当然であると考えていること。又、現場の衰退の打開策の一つとして捉えていること。更には競馬の現場にとって基本的な義務である公正競馬確保を貫き通す為に、今回の決断がなされたそうである。もちろんこれは諸手をあげて受け入れたわけではなく、苦渋の決断であったことは伝わってきた。調教スタンドの入口に労働組合の賀詞が張り出されていたが、年始を祝う言葉の後に「今年こそ西高東低を覆し、関東地区に明るい日差しを!」という文字が躍っていた。この言葉こそが、今の美浦トレーニング・センターの人達の心からの願いであろう。

こうした背景を踏まえて尾形調教師は、関西の調教師会に元日調教の決定を伝えている。結果的に栗東では、元日は休日という決定になるのだが、日本調教師会会長の中村均調教師は「今回、暮れの競馬が終わった後、新年の競馬まで8日間の間隔があります。通常通り28日の競馬の後、29日の月曜日の調教を休むか、あるいは29日に調教を行って、1月1日の調教を休むかという選択になったわけです。関東の決定を受けて、東西で統一する努力もしましたが、結果的に異なる決定となりました。現在は調教方法が多様化していて、元日、つまり木曜日の調教を休んだとしても充分対応できると考えたからです。今回の問題は、東西の捉え方の違いで、私達は公正な競馬ができると思っていますし、皆自信を持っていますよ。」と語っている。

日本経済新聞の野元賢一記者から、2008年の東西の勝鞍の差は500以上あったという話を聞いた。そしてGTクラスの重賞となると、関東の勝鞍はわずかに2勝。この現実を美浦の調教師も厩務員労働組合も真摯に受けとめている現れが、今回の元日調教に繋がったのだろう。尾形調教師は「今回、元日の調教を行ったからといって、即、結果が出るとは思っていません。それほど甘いものではないことは充分に承知しています。ただ、今のままでは何も生まれてきませんし、馬に携わる者が心を一つにして前に向かっていくことを、馬主さんにもファンの皆様にも行動で示していくよりないんです。」と語っている。

ここ20年ほど、元日というと、朝から呑んで食べて一日中ゴロゴロという生活が恒例になっていたが、早朝から動き回り、初日の出を拝み、馬頭観世音にも御参りし、まして関東の心意気を感じた有意義な正月となった。ただ、柴田政人調教師から「元日からあんまりハリキリ過ぎないでよ。」という、きつい冷やかしには参った。

ライタープロフィール

白川 次郎 (しらかわ じろう)

1945年11月生まれ、高知県出身。元日本短波放送・ラジオたんぱ・ラジオNIKKEIアナウンサーで現在はフリーアナウンサー。ラジオNIKKEIにて『中央競馬実況中継』など、競馬番組を中心に担当している。また、関東地方の独立UHF放送局放送『中央競馬ハイライト』の土曜日キャスターとしても出演している。

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