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競馬かわらVAN(リレーコラム)

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第10回 私の中のシンボリルドルフ

2008/7/28(月)

名馬の記憶は、ともすると時の流れの中で光を失っていくことが多い。それと同時に、その時に感じた強い感情や感動が薄れてしまうのも残念に思っている。ところが、少し違った角度からある馬の情報が入ってくると、色褪せた影像が、急にイキイキと光輝くこともあるものだと、近頃は感じている。

1984年 天皇賞(秋) ミスターシービー

昭和58年のクラシック戦線は、シンザン以来19年ぶりの三冠馬ミスターシービーの登場で、大いに沸いた年であった。トウショウボーイ、シービークインという血統に加え、吉永正人騎手とのコンビで、荒々しいと感じるほどの個性的なレースに、痺れるほどの興奮を味わったものだ。日頃から先輩達にシンザンの話を聞くたびに、羨ましさと妬ましさを味わっていただけに、これで自分も三冠馬を語る資格ができた、という気持ちが、底辺にあったのも事実である。それ故に、翌年秋の天皇賞で実況のチャンスに巡り会ったときには、まさに天にも昇る気持ちであったし、ミスターシービーのダイナミックな動きを、充分に楽しみながら実況したことを憶えている。その思いはその年の秋のシーズンから、翌年の春まで続くはずであり、ミスターシービーは“私の永遠の馬”になるはずであったのに、その夢を根底から砕いてしまった馬が出現したのである。シンボリルドルフ! 無敗で三冠を達成したことはともかく、ジャパンカップ、有馬記念、更に次の年の天皇賞・春では、世代間のレベルの違いを思い知る筈であったのに、唖然とするぐらいの強さで、次から次へとミスターシービーに後塵を浴びせてしまった。とにかく強い馬というイメージではあったが、シンボリルドルフは、私にとっては、まさに敵役的な存在になってしまった。当然、記憶の中では、できたら思い出したくない馬の一頭である。

1984年 菊花賞 シンボリルドルフ

さて、そんなシンボリルドルフの姿に、新たな光をあてるようになったのは、引退直後の岡部幸雄騎手の話である。美浦トレセンの公開調教や、岡部騎手のビデオのインタビュー等、その年の春から夏は、何かと岡部さんと一緒になる機会が多かった。自然にシンボリルドルフの話になるのは仕方のないことだろう。まず気になったのは気性面のこと。兄シンボリフレンド、姉スイートコンコルドは、溢れる能力を秘めていながら、強すぎる、あるいは脆さをも併せ持った気性の為に、大成せずに終わっている。岡部さんによると、ルドルフにもその要素は充分にあったそうだ。そこで和田オーナー、野平祐二調教師が中心になって考えられたのが、デビュー戦を含めたダービーまでのローテーションと、精神面をも考慮した調教メニューである。デビュー戦が砂の札幌ではなく、芝の新潟だったのも、陣営の配慮の一端。1,000mの距離で1,600mの競馬をさせたという、有名なエピソードの残る新馬戦である。スタートしても決して急がせず、ゆったりと進めて勝ちきってしまった。ゲート練習も少なく、ゲート試験も“お情け”で通ったようなものと、岡部さんは語る。ルドルフが新馬戦を勝った直後、岡部騎手を取り囲んだ記者は、一様に戸惑いを隠せなかった。レース直後にこれほど上機嫌な表情を見せたことが無かった人だし、馬にこれからの注文を口にしなかったことも珍しかったからである。「何も望むことは無いし、このままいってくれるだけでいいです。」とだけ語ったのだが、わずか一戦だけ、しかも1,000mの競馬を経験したばかりの馬から、卓越した能力と、完成度の高さを感じ取っていたのだろう。想像した通り、いやそれ以上の手応えだったに違いない。その後、年内は何があっても三戦だけという、当初の予定通り、あえて重賞は使わず、特別戦を二度使って翌年のクラシック戦線に向かうのだが、その間にもシンボリルドルフは更に進化を遂げていくことになる。

シンボリルドルフは、レースを終えると、千葉のシンボリ牧場に移り、リフレッシュをするのが慣例であった。あるいは充電をしたというべきであろうか? ルドルフの肉体面、そして精神面を支えたのは、日々の猛トレーニングであった。とにかく一度ルドルフと併せ馬を経験した相手は、その後、二度とルドルフの傍に寄り付こうとしなかったそうだ。岡部騎手は「あんな強い馬と稽古するのは、二度と御免だ。」と言っているようだったと語る。これはクラシック戦線で対戦した馬が、一様に感じたことなのかもしれない。そこでシンボリルドルフがシンボリ牧場で行ったトレーニングの内容を改めて岡部さんから聞いて驚いた。前半と後半に分けて、二頭の馬がパートナーを勤めるというもの。スタートして併せ馬で向正面まで行ったところで、今度はそこで待っていた馬と併せてゴールまで駆け抜ける方法である。後にも先にもこれほどまでハードな調教は聞いたことが無い。しかも、そのパートナーの中には、ダービー馬のシリウスシンボリまでいたと岡部さんに聞いたときには、開いた口がふさがらなかった。正にルドルフのパワーは底が知れないのである。

1984年 有馬記念 シンボリルドルフ

さて、パドックやレース中の姿、あるいは美浦トレセンのシンボリルドルフしか知らない我々にとって、牧場で過ごす様子にまた、ギャップを感じたことがある。岡部さんも牧場のスタッフから聞いた話と前置きして話してくれたのだが、あれだけ乗り手の指示に従順に見えるルドルフが、牧場に帰ると、手がつけられないヤンチャぶりを発揮するのだそうだ。岡部さんは、“正に野獣”と表現した。牧場のスタッフにも我儘放題、ましてや馬に対しては相当な乱暴者であったらしい。トレセンや競馬場では、すぐ傍に牝馬がいてもビクともしないルドルフが、牧場では、牝馬を見ただけで大騒ぎだとか・・・。すぐには信じがたい話である。ただ、岡部さんが稽古をつけに行ったときには、さすがにピシッとしてスムーズに稽古をこなすというから、余計驚いてしまう。これほど“ON”と“OFF”で切り替えがきくという馬は、そうはいないであろう。何となく馬の群れの中で君臨する姿が想像できるようになってきたが、暴君と表現してもいいのかもしれない。ルドルフというネーミングが、より明確にイメージできる。

私の中で敵役の存在であったシンボリルドルフは、岡部幸雄さんの回顧談によって、新たなイメージの馬として甦った。底知れぬ強さを持った馬。と同時に、優等生の面と、思い切り我儘な面を併せ持つ、稀に見る暴君! おそらく時の流れの中で、より光り輝く存在になるであろう。

 

シンボリルドルフの血統

シンボリルドルフ
鹿毛 1981年生
パーソロン
1960年生
Milesian
1953年生
My Babu
Oatflake
Paleo
1953年
Pharis
Calonice
スイートルナ
1972年生
スピードシンボリ
1963年生
ロイヤルチャレンヂャー
スイートイン
ダンスタイム
1957年生
Palestine
Samaritaine

 

シンボリルドルフの成績

開催日
開催場
競走名
着順
騎手
コース
タイム
1983/7/23
新潟
新馬
1
岡部幸雄
芝1000
59.2
1983/10/29
東京
いちょう特別
1
岡部幸雄
芝1600
1.37.3
1983/11/27
東京
オープン
1
岡部幸雄
芝1600
1.39.9
1984/3/4
中山
弥生賞
1
岡部幸雄
芝2000
2.01.7
1984/4/15
中山
皐月賞
1
岡部幸雄
芝2000
2.01.1
1984/5/27
東京
東京優駿
1
岡部幸雄
芝2400
2.29.3
1984/9/30
中山
セントライト記念
1
岡部幸雄
芝2200
2.13.4
1984/11/11
京都
菊花賞
1
岡部幸雄
芝3000
3.06.8
1984/11/25
東京
ジャパンカップ
3
岡部幸雄
芝2400
2.26.5
1984/12/23
中山
有馬記念
1
岡部幸雄
芝2500
2.32.8
1985/3/31
中山
日経賞
1
岡部幸雄
芝2500
2.36.2
1985/4/29
京都
天皇賞(春)
1
岡部幸雄
芝3200
3.20.4
1985/6/2
阪神
宝塚記念
取消
岡部幸雄
芝2200
1985/10/27
東京
天皇賞(秋)
2
岡部幸雄
芝2000
1.58.8
1985/11/24
東京
ジャパンカップ
1
岡部幸雄
芝2400
2.28.8
1985/12/22
中山
有馬記念
1
岡部幸雄
芝2500
2.33.1
1986/3/29
サンタアニタ
サンルイレイS
6
岡部幸雄
芝2400

ライタープロフィール

白川 次郎 (しらかわ じろう)

1945年11月生まれ、高知県出身。元日本短波放送・ラジオたんぱ・ラジオNIKKEIアナウンサーで現在はフリーアナウンサー。ラジオNIKKEIにて『中央競馬実況中継』など、競馬番組を中心に担当している。また、関東地方の独立UHF放送局放送『中央競馬ハイライト』の土曜日キャスターとしても出演している。

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