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私の競馬はちょっと新しい
第9回 中央競馬調教師 矢作芳人さん

「ひとつひとつの出走、そして勝利が目標です」
1961年生まれ、東京都出身。開成高校卒業後、オーストラリアでの修行などを経て86年から調教助手。04年に14回目の挑戦で調教師試験に合格し、翌05年に栗東で厩舎開業。07年にスーパーホーネットのスワンSで重賞初制覇、08年にはJRA史上最速で通算100勝を達成した。父は大井の矢作和人元調教師。

みんなが少しでも潤うように出走数を増やすのは調教師として当然

市丸:最速100勝を達成されて、次の目標は最速200勝、ということになりますか?

矢作:毎年、調教師免許更新の書類で、抱負とか目標とか(書く欄が)あるのですが、特に来年は何勝したいとか、そういうのってないですね。

市丸:ともかく目の前にあるレースを勝っていく、と。

矢作:ええ。それと、それより前に無事に競馬を使うこと。数を使うことにはこだわっています。今のこの出走数があるからこそ、この成績があると思っていますし(09年の出走328回は2位に約30回差で最多。9月21日現在)。

市丸:その出走数へのこだわりについて、もう少し詳しくお願いできますか?

矢作さん写真3

矢作:1円でも多く稼ぐ、ということですね。調教で壊してしまうとお金になりませんけれど、競馬に出走さえすれば、なんらかのお金が発生するのですから、馬主さんにもスタッフにも。わたしは9着以下だと発生しませんが(笑)、まあ、みんなが少しでも潤うようにと考えると、出走数を増やすというのは調教師としては当然だと思います。

市丸:にも関わらず、予後不良が2頭だけというのも素晴らしいですね。

矢作:ほかの厩舎に比べれば「無駄撃ち」が多いかもしれませんけれど……。ファンの方からすれば「無駄撃ち」でも、やはり1頭の馬にはいろいろな人が関わっているので、それを出走させるのがまず大事なのです。ですから、次の目標は最速200勝とかではなく、やっぱりひとつひとつの出走、そして勝利ですね。

市丸:いろいろとお聞きしたいことがあるのですが、次は個別の馬について、今スーパーホーネットは……(脚部不安で札幌記念を回避)。

矢作:使うことに関しては使えるのですが、もう少し慎重にやりたいかな、と経過を見ているところです。もう運動ははじめていますが、今の段階でどのレースというのは……。

市丸:3歳ではグランプリエンゼルが函館スプリントSを勝ちましたね。

矢作:オーナーの希望もありまして、サマー・スプリント・シリーズのタイトル(最終戦のセントウルS出走)よりも、G1を狙いたいということで。わたしが「両方はダメです」と言ったのです。3歳の牝馬ですし、無理はさせたくないので、スプリント(シリーズ)を狙うかG1か。セントウルSでは北海道から帰って中1週になってしまうというのもあって、スプリンターズSになりました。その結果次第では、できれば香港へ。あまり距離を伸ばしたくないので。

市丸:香港は昨年、スーパーホーネットで遠征されていますが(香港マイル5着)、スプリント路線では日本馬は苦戦していますよね。それでも……。

矢作:厳しいと思います。重量を調べても3歳牝馬は55.25キロと意外に厳しいですし。ただ(日本にはスプリンターズS後に)適鞍がないというのもありますし、まだまだ繊細な牝馬なので今のうちにいろいろなことを経験させておきたい、というのもあります。まだ全体的に力も足りないと思いますが、これから古馬と戦っていくことを考えても、そういうことを経験させたいですね。

市丸:同じく3歳のグロリアスノアはどうですか? この前(レパードS9着)は残念でしたけれど、ダートではかなり……。

矢作:(レパードSは)不利がなくてもトランセンドあたりとは力の差があったと思うので、もう少し力をつけないといけないですね。エニフS(インタビュー後に優勝)から、できれば武蔵野Sあたりの路線にいきたいです。

矢作さん写真4

市丸:2歳ではキョウエイアシュラが函館2歳Sで2着になりました。

矢作:3回無理をしたのと、2戦目が終わって腹痛があったので、今はご褒美といいますか、成長させたいという意味も込めて放牧です。1200mの馬ではないと思うので、1400mの京王杯2歳Sから朝日杯へ。マイル路線はこの馬でと考えています。

市丸:この馬は母の母がミルレーサー(フジキセキの母、ミルリーフなどと同牝系)ですね。

矢作:母の父がアンバーシャダイで少し古い血統ですけれど、うれしいですよね、こういう馬を日高でみつけてきて。正直そう高い馬ではないですけれど、でも函館2歳Sの負けも強い負けだったと思いますし。

市丸:ちょっと不利もありましたからね。あと、先週のモズ(札幌2歳S2着)は積極的な競馬で……。

矢作:どんな競馬もできると思っていましたけれど、ゲートの入りは悪くてもスタートは良いので(笑)。ただ、また再審査になってしまいました。何度も(発走調教の再審査が)重なると出走停止になったりもしますし、クラシックへ向けてローテーションも組みづらくなるので、今回でなんとか修正したいと思っています。

市丸:これからもクラシックを意識した路線へ、ということになりますか?

矢作:次がどこというのははっきりとは決めてませんが、東京スポーツ杯2歳Sか、ラジオNIKKEI賞か。皐月賞が6戦目くらいになるようにしたいと思っています。いずれにしても、この馬は調教師としてやりがいがありますね、いろいろな意味で。素質があるのはもちろんですけれど、とにかくタチが悪いので(笑)、調教師としてはなんとかしないといけないです。

ほかにも、楽しみな馬は多いですよね。2歳はまだデビューしていない馬もたくさんいると思いますが……。

「私の競馬はちょっと新しい」インタビュー一覧

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