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第1628回 実力拮抗の混戦模様と評される今年のオークスで有望な馬は?

2022/5/19(木)

5週連続東京G1の3週目は、牝馬クラシックのオークス。桜花賞組では二冠を目指すスターズオンアース、ハナ差2着から逆転を目指すウォーターナビレラのほか、2歳女王サークルオブライフやチューリップ賞勝ち馬ナミュールなども逆襲を狙う。もちろん、忘れな草賞を快勝したアートハウスなどの別路線組も虎視眈々と食い込みを狙う。果たしてどの馬が有力なのか、過去10年の結果をもとにデータ傾向を調査していこう。データの分析には、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 人気別成績

人気 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
1番人気 5-  2-  1-  2/ 10 50.0% 70.0% 80.0% 117% 110%
2番人気 1-  3-  3-  3/ 10 10.0% 40.0% 70.0% 98% 110%
3番人気 3-  0-  1-  6/ 10 30.0% 30.0% 40.0% 213% 93%
4番人気 0-  1-  0-  9/ 10 0.0% 10.0% 10.0% 0% 20%
5番人気 0-  1-  1-  8/ 10 0.0% 10.0% 20.0% 0% 58%
6番人気 0-  1-  1-  8/ 10 0.0% 10.0% 20.0% 0% 65%
7番人気 0-  1-  0-  9/ 10 0.0% 10.0% 10.0% 0% 42%
8番人気 0-  0-  0- 10/ 10 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
9番人気 1-  0-  1-  8/ 10 10.0% 10.0% 20.0% 285% 127%
10番人気〜 0-  1-  2- 85/ 88 0.0% 1.1% 3.4% 0% 57%

表1は人気別成績。1番人気は5勝、複勝率80.0%の好成績。2番人気も複勝率70.0%としっかり走り、3番人気も昨年のユーバーレーベンなど3勝を挙げている。ダークホースは13年に9番人気のメイショウマンボが勝ち、2、3着にもぽつぽつ来てはいるが、全体としては上位人気が強いG1とみていいのではないか。

■表2 馬体重別成績

馬体重 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
〜419kg 0-  0-  1- 14/ 15 0.0% 0.0% 6.7% 0% 21%
420〜439kg 2-  1-  2- 32/ 37 5.4% 8.1% 13.5% 23% 21%
440〜459kg 2-  3-  2- 49/ 56 3.6% 8.9% 12.5% 24% 80%
460〜479kg 6-  5-  3- 30/ 44 13.6% 25.0% 31.8% 110% 115%
480〜499kg 0-  1-  1- 15/ 17 0.0% 5.9% 11.8% 0% 18%
500kg〜 0-  0-  1-  8/  9 0.0% 0.0% 11.1% 0% 30%

表2は馬体重別成績。当日「460〜479キロ」が6勝を挙げ、好走率、回収率ともに群を抜いており、やや大きめの中型馬が好走しやすい傾向が見て取れる。ほかに1着馬が出ているのは「420〜439キロ」と「440〜459キロ」で、それぞれ2勝をマーク。一方、牝馬としては恵まれた「480〜499キロ」や大型の「500キロ以上」はあまり振るわず、やや意外な印象もある。

■表3 前走レース別成績

前走 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
桜花賞・G1 7- 5- 4-63/79 8.9% 15.2% 20.3% 65% 39%
忘れな草賞・L 2- 0- 1- 8/11 18.2% 18.2% 27.3% 98% 112%
フローラ・G2 1- 4- 3-37/45 2.2% 11.1% 17.8% 19% 54%
スイートピーS・L 0- 1- 0-15/16 0.0% 6.3% 6.3% 0% 87%
矢車賞・1勝 0- 0- 1- 5/ 6 0.0% 0.0% 16.7% 0% 470%
皐月賞・G1 0- 0- 1- 0/ 1 0.0% 0.0% 100.0% 0% 270%

※好走例のある前走のみ。格付けは現在のものに統一

表3は前走レース別成績。出走例、好走例ともに多い桜花賞とフローラSが重要な前走であるのは明らかで、この両レースについては表4と5の項で改めてデータを見ていきたい。

ほかに複数の好走馬を出しているのは、桜花賞と同日に行なわれる忘れな草賞。15年のミッキークイーン、19年のラヴズオンリーユーと2頭のオークス馬を出しており、好走率では桜花賞をも凌ぐ。一方、スイートピーSはそれなりに出走例があるものの、オークス好走は19年2着のカレンブーケドールだけ。なお、前述のミッキークイーン、ラヴズオンリーユーと合わせ、前走桜花賞およびフローラS以外でオークス連対を果たした3頭はいずれもディープインパクト産駒という共通点がある。

■表4 前走桜花賞出走馬のデータ

桜花賞 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
人気 1番人気 1- 2- 1- 2/ 6 16.7% 50.0% 66.7% 40% 86%
2番人気 4- 0- 1- 3/ 8 50.0% 50.0% 62.5% 136% 92%
3番人気 0- 1- 1- 6/ 8 0.0% 12.5% 25.0% 0% 46%
4番人気 1- 2- 0- 6/ 9 11.1% 33.3% 33.3% 316% 116%
5番人気 1- 0- 0- 5/ 6 16.7% 16.7% 16.7% 163% 25%
6〜9番人気 0- 0- 1-20/21 0.0% 0.0% 4.8% 0% 14%
10番人気〜 0- 0- 0-21/21 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
着順
1着 3- 1- 0- 4/ 8 37.5% 50.0% 50.0% 111% 68%
2着 1- 1- 2- 3/ 7 14.3% 28.6% 57.1% 28% 97%
3着 2- 1- 1- 6/10 20.0% 30.0% 40.0% 122% 65%
4着 0- 1- 0- 4/ 5 0.0% 20.0% 20.0% 0% 38%
5着 0- 0- 0- 8/ 8 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
6〜9着 0- 1- 0-16/17 0.0% 5.9% 5.9% 0% 9%
10着〜 1- 0- 1-22/24 4.2% 4.2% 8.3% 118% 37%
4角 1番手 0- 0- 0- 3/ 3 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
2番手 0- 0- 0- 3/ 3 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
3〜4番手 0- 1- 1- 8/10 0.0% 10.0% 20.0% 0% 27%
5〜6番手 1- 2- 0-10/13 7.7% 23.1% 23.1% 18% 40%
7〜9番手 2- 0- 1-12/15 13.3% 13.3% 20.0% 203% 66%
10〜12番手 3- 0- 0- 8/11 27.3% 27.3% 27.3% 154% 43%
13〜15番手 0- 1- 1-13/15 0.0% 6.7% 13.3% 0% 30%
16番手〜 1- 1- 1- 6/ 9 11.1% 22.2% 33.3% 18% 45%

表4は前走桜花賞出走馬に関するデータをまとめたもの。まずは「人気」から見ていきたい。桜花賞で1、2番人気だった馬は、いずれも複勝率60.0%を超える好成績。特に2番人気が4勝を挙げている点は注目に値する。一方、6番人気以下は合わせて【0.0.1.41】と苦戦しており、桜花賞で5番人気以内には入っておきたいところだ。

続いて「着順」。桜花賞の1、2着馬はどちらも複勝率50.0%以上、3着馬も複勝率40.0%と有望。しかし、4着以下馬は好走率を落とし、合算して【1.2.1.50】と巻き返しは容易ではない。その数少ない桜花賞4着以下からオークス好走を果たした馬を具体的に挙げると、13年1着のメイショウマンボ、15年2着のルージュバック、17年3着のアドマイヤミヤビ、21年2着のアカイトリノムスメの4頭で、いずれも「桜花賞の前走で重賞1着」という共通項がある。

もうひとつ、桜花賞の「4角通過順」もチェックしておきたい。複勝率20%以上かつ勝ち馬が出ているのは4角5〜6番手、7〜9番手、10〜12番手、16番手以降となっている。ただし、16番手以降に関しては、好走した3頭というのが14年2着のハープスター、17年3着のアドマイヤミヤビ、18年1着のアーモンドアイで、オークスで1、2番人気に推された実力馬ばかりだったことは留意しておきたい。逆に、4角1、2番手だった馬の好走例はなく、3〜4番手だった馬が勝った例もない。この通り、桜花賞で差し・追い込みの競馬をしていたほうがオークスでは好走しやすく、逃げ・先行していた馬は苦戦の傾向が見て取れる。

■表5 フローラS出走馬のデータ

フローラS 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
着順 1着 0- 3- 1- 6/10 0.0% 30.0% 40.0% 0% 105%
2着 0- 1- 1- 7/ 9 0.0% 11.1% 22.2% 0% 91%
3着 1- 0- 0- 7/ 8 12.5% 12.5% 12.5% 111% 31%
4着 0- 0- 0- 1/ 1 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
5着 0- 0- 1- 4/ 5 0.0% 0.0% 20.0% 0% 64%
6〜9着 0- 0- 0- 8/ 8 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
10着〜 0- 0- 0- 4/ 4 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
上がり順
1位 1- 2- 1- 4/ 8 12.5% 37.5% 50.0% 111% 131%
2位 0- 1- 1- 3/ 5 0.0% 20.0% 40.0% 0% 114%
3位〜 0- 1- 1-30/32 0.0% 3.1% 6.3% 0% 25%

表5は前走フローラS出走馬に関するデータをまとめたもので、注目のファクターは「着順」と「上がり3F順」のふたつだ。まず「着順」については、フローラS1、2着馬と3着以下馬に分けたとき、前者は複勝率31.6%、後者は複勝率7.7%と大きな差がついている。18年以降、フローラSでは1、2着馬にオークスの優先出走権が付与されていることを考えても、妥当な傾向と言えそうだ。

「上がり3F順」はさらに直結度が高いぐらいで、フローラSの上がり1位馬はオークスで複勝率50.0%、上がり2位馬も複勝率40.0%を記録。しかし、上がり3位以下馬は複勝率6.3%まで下がってしまう。

なお、フローラS3着以下からオークス好走を果たした16年のビッシュ(フローラS5着→オークス3着)と21年のユーバーレーベン(フローラS3着→オークス1着)は、いずれもフローラSで上がり1位を記録。つまり、フローラS3着以下からの巻き返しがあるとすれば上がり1位馬ということになりそうだ。

■表6 芝1600m以上・主要レース1〜3着馬のオークス成績

レース 着順 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
アルテミスS・G3 1着 0- 0- 1- 7/ 8 0.0% 0.0% 12.5% 0% 15%
2、3着 0- 0- 0-10/10 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
阪神JF・G1
1着 1- 0- 1- 3/ 5 20.0% 20.0% 40.0% 48% 50%
2、3着 1- 2- 1-12/16 6.3% 18.8% 25.0% 55% 45%
シンザン記念・G3 1着 2- 0- 0- 1/ 3 66.7% 66.7% 66.7% 243% 103%
2、3着 (出走例なし)
フェアリーS・G3 1着 0- 0- 0- 6/ 6 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
2、3着 0- 0- 0- 5/ 5 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
エルフィンS・L 1着 1- 0- 1- 6/ 8 12.5% 12.5% 25.0% 20% 53%
2、3着 (出走例なし)
クイーンC・G3 1着 0- 2- 2- 3/ 7 0.0% 28.6% 57.1% 0% 100%
2、3着 1- 0- 0-11/12 8.3% 8.3% 8.3% 56% 17%
チューリップ賞・G2 1着 2- 1- 1- 5/ 9 22.2% 33.3% 44.4% 48% 52%
2、3着 1- 1- 0- 9/11 9.1% 18.2% 18.2% 89% 31%
アネモネS・L 1着 0- 1- 0- 3/ 4 0.0% 25.0% 25.0% 0% 32%
2、3着 0- 0- 0- 4/ 4 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
フラワーC・G3 1着 0- 0- 1- 6/ 7 0.0% 0.0% 14.3% 0% 38%
2、3着 1- 1- 0-10/12 8.3% 16.7% 16.7% 74% 42%

※3歳3月以前に行なわれ、1着馬がオークスに3頭以上出走したレースが対象

表6は、3歳3月までに行なわれる芝1600m以上の重賞・リステッド競走で好走した馬がオークスに出走した場合、どのような成績を残しているのかを表したもの。それぞれ1着馬と2、3着に分けた成績を掲載しているが、2、3着馬は全体に苦戦しており、基本的には1着馬について見ていきたい。

オークスと相性がよさそうなのは、勝率66.7%のシンザン記念、勝率22.2%、複勝率44.4%のチューリップ賞、勝率20.0%、複勝率40.0%の阪神JF、複勝率57.1%のクイーンCの各1着馬。該当する馬の出走があれば注目する価値はあるだろう。エルフィンSはまずまずといったところ。一方、アルテミスS、フェアリーS、アネモネS、フラワーCの4レースは、1着馬でも苦戦傾向が見られる。2歳戦のアルテミスSを除く3レースには中山開催という共通項があり、東京のオークスとは求められる適性の違いがあるのかもしれない。

【結論】

2022/3/5 阪神11R チューリップ賞(G2) 1着 6番 ナミュール 2022/3/5 阪神11R チューリップ賞(G2)
1着 6番 ナミュール

2022/4/10 阪神9R 忘れな草賞 1着 7番 アートハウス 2022/4/10 阪神9R 忘れな草賞
1着 7番 アートハウス

以上の分析を踏まえて、今年のオークスで有望なデータに該当する馬を紹介していきたい。

もちろん、まずは桜花賞組から。表4の項で述べた通り、桜花賞で1〜5番人気および1〜3着に合致すると好走率が高い。今年の登録馬で両方を満たすのは、3番人気で2着だったウォーターナビレラのみ。しかし、表4でチェックしたもうひとつのデータである4角通過順を見ると、同馬は4角を2番手で回っている。すでに延べたように桜花賞で4角1、2番手だった馬のオークス好走は過去10年なく、上位進出のためには展開の助けが必要になってくるかもしれない。その点、スターズオンアースは4角9番手から差し切り勝ち。こちらも桜花賞6番人気以下は苦戦というデータを覆す必要はあるが、脚質的にはオークスに対応しやすいタイプではある。

桜花賞4着以下からの巻き返し条件は、その前走で重賞を勝っていること。特に、オークスと相性のいいチューリップ賞で1着のナミュール、クイーンCで1着のプレサージュリフトの2頭は見逃せないところで、桜花賞で4角12番手のナミュールをより重視したい。なお、この条件に当てはまる馬にはライラックもいるのだが、オークスと直結しないフェアリーSで1着という点が気にかかるところである。そのほか、桜花賞の前走が重賞勝ちという条件からは外れるのだが、オークスで好走率の高い阪神JF1着馬かつ桜花賞2番人気馬のサークルオブライフもマークはしておきたい。

前走フローラS組は、そこで1、2着に入っていることと、上がり1、2位を記録していることが重要だった。しかし、今年1着のエリカヴィータは上がり3位タイ、2着のパーソナルハイは上がり13位にとどまる。そこで、フローラS3着以下から巻き返した例がある上がり1位馬に目をつけると、5着のルージュエヴァイユの名前を挙げておきたい。

オークスで好走率の高い前走忘れな草賞組ではアートハウス。忘れな草賞で1番人気に推され、上がり1位を記録し、3馬身差で1着というのは19年のオークス馬ラヴズオンリーユーと同じで、これは注目の1頭になりそうだ。

これら3つ以外の前走を使うとなかなか好走できないのがオークスというレースだが、触れておくとすればスタニングローズか。フラワーC1着馬のオークス成績はひと息ながら、祖母ローズバドがオークス2着馬、3代母ロゼカラーがオークス4着馬。オークスに限らず、有名な「薔薇一族」に初のクラシック制覇をもたらしたいところだろう。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。


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