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第1622回 実力馬2頭の一騎打ち!? 天皇賞(春)を分析する

2022/4/28(木)

中央競馬の平地G1競走としては最長距離となる芝3200mで争われる天皇賞(春)。本年と同じく阪神競馬場で代替された昨年は、前々年の菊花賞馬・ワールドプレミア(3番人気)が優勝。2着には1番人気のディープボンドが入り平穏な決着になったが、今年はどんな結果が待っているのだろうか。過去10年の傾向をJRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用して分析したい。

■表1 人気別成績

人気 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 2017年〜 同複勝率
1 3-2-0-5/10 30.0% 50.0% 50.0% 70% 68% 3-2-0-0 100.0%
2 4-0-2-4/10 40.0% 40.0% 60.0% 213% 138% 1-0-1-3 40.0%
3 1-3-1-5/10 10.0% 40.0% 50.0% 52% 167% 1-0-0-4 20.0%
4 1-1-3-5/10 10.0% 20.0% 50.0% 115% 120% 0-1-3-1 80.0%
5 0-0-0-10/10 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0% 0-0-0-5 0.0%
6 0-1-1-8/10 0.0% 10.0% 20.0% 0% 186% 0-1-0-4 20.0%
7 0-1-0-9/10 0.0% 10.0% 10.0% 0% 63% 0-0-0-5 0.0%
8 0-0-1-9/10 0.0% 0.0% 10.0% 0% 63% 0-0-1-4 20.0%
9 0-0-0-10/10 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0% 0-0-0-5 0.0%
10 0-0-1-9/10 0.0% 0.0% 10.0% 0% 61% 0-0-0-5 0.0%
11〜 1-2-1-63/67 1.5% 4.5% 6.0% 238% 110% 0-1-0-27 3.6%

2021/5/2 阪神11R 天皇賞(春)(G1) 1着 1番 ワールドプレミア(3番人気) 2021/5/2 阪神11R 天皇賞(春)(G1)
1着 1番 ワールドプレミア(3番人気)

過去10年の人気別では、2番人気が【4.0.2.4】と最多の4勝を挙げ、複勝率もトップの60.0%。1、3、4番人気が複勝率50.0%で並び、この1〜4番人気で計【9.6.6.19】複勝率52.5%と、3着以内馬30頭中21頭を占めている。特に2017年以降の近5年は【5.3.4.8】同60.0%と人気馬の安定感が増している一方で、穴馬の出番は減少。過去10年で5頭好走している2桁人気馬のうち4頭は、前半の2012〜16年に出現していた。

■表2 年齢別成績

年齢 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収 2017年〜 同複勝率
4歳 3-2-4-33/42 7.1% 11.9% 21.4% 32% 48% 1-2-2-16 23.8%
5歳 6-3-1-40/50 12.0% 18.0% 20.0% 373% 125% 4-1-1-16 27.3%
6歳 1-4-2-28/35 2.9% 14.3% 20.0% 13% 103% 0-2-1-16 15.8%
7歳 0-0-3-17/20 0.0% 0.0% 15.0% 0% 139% 0-0-1-7 12.5%
8歳 0-1-0-12/13 0.0% 7.7% 7.7% 0% 106% 0-0-0-6 0.0%
9歳〜 0-0-0-7/7 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0% 0-0-0-2 0.0%

年齢別では4、5、6歳がそれぞれ複勝率20%〜21%台と互角だが、勝ち鞍では6勝を挙げる5歳馬が大きくリード。そのうち4勝を近5年で挙げているため、まずは5歳馬を軸に考えたい。

■表3 前走クラス・主な前走レース別成績

前走クラス・レース 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
3勝 0-0-0-4/4 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
OPEN 0-0-0-10/10 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
中央G3 0-1-0-18/19 0.0% 5.3% 5.3% 0% 33%
中央G2 8-8-9-100/125 6.4% 12.8% 20.0% 160% 108%
中央G1 2-1-0-4/7 28.6% 42.9% 42.9% 60% 54%
海外 0-0-1-1/2 0.0% 0.0% 50.0% 0% 770%
阪神大賞典 3-3-4-48/58 5.2% 10.3% 17.2% 293% 121%
日経賞 3-2-4-42/51 5.9% 9.8% 17.6% 44% 80%
京都記念 0-1-1-4/6 0.0% 16.7% 33.3% 0% 213%
ダイヤモンドS 0-1-0-14/15 0.0% 6.7% 6.7% 0% 42%
大阪-ハンブルクC 0-0-0-8/8 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%

表3は前走クラスと、主な前走レース別の成績である(背景灰は本年の該当馬不在)。前走G2組が【8.8.9.100】と3着以内馬30頭中25頭を数え、中でも阪神大賞典と日経賞がその中心だ。前走G3から好走した1頭は2015年2着のフェイムゲーム(前走ダイヤモンドS1着)で、同馬はG2・アルゼンチン共和国杯など重賞4勝の実績馬だった。

■表4 前走G2組の前走着順別成績

前走着順 レース 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
1着 全G2 3-4-3-12/22 13.6% 31.8% 45.5% 76% 124%
阪神大賞典 2-1-2-4/9 22.2% 33.3% 55.6% 117% 105%
日経賞 1-1-1-6/9 11.1% 22.2% 33.3% 68% 90%
2着 全G2 2-1-3-16/22 9.1% 13.6% 27.3% 33% 113%
3着 1-2-1-13/17 5.9% 17.6% 23.5% 30% 95%
4着 0-0-2-11/13 0.0% 0.0% 15.4% 0% 95%
5着 1-0-0-12/13 7.7% 7.7% 7.7% 88% 23%
6〜9着 0-1-0-29/30 0.0% 3.3% 3.3% 0% 46%
10着以下 1-0-0-6/7 14.3% 14.3% 14.3% 2280% 531%

好走馬の大半を占める前走G2組について、前走着順別の成績を調べたのが表4である。複勝率がもっとも高いのは前走1着馬で45.5%を記録するが、レース別にみてみると阪神大賞典1着馬が【2.1.2.4】複勝率55.6%を記録するのに対し、日経賞1着馬は【1.1.1.6】で同33.3%。前走で2着以下だった馬よりは日経賞優勝馬のほうが好走確率は高いものの、阪神大賞典優勝馬と比較してしまうとやや劣勢だ。

■表5 前走阪神大賞典からの3着以内好走馬

馬名 天皇賞(春) 阪神大賞典 主な勝ち鞍 その他G1実績
人気 着順 人気 着順
2012 ビートブラック 14 1 6 10 (大阪-ハンブルクC) 菊花賞3着
2015 ゴールドシップ 2 1 1 1 菊花賞 有馬記念
カレンミロティック 10 3 6 4 金鯱賞 宝塚記念2着
2016 カレンミロティック 13 2 5 6 金鯱賞 宝塚記念2着
シュヴァルグラン 3 3 1 1 阪神大賞典 (未経験)
2017 シュヴァルグラン 4 2 2 2 阪神大賞典 天皇賞(春)3着
サトノダイヤモンド 2 3 1 1 菊花賞 有馬記念
2018 レインボーライン 2 1 3 1 阪神大賞典 菊花賞2着
クリンチャー 4 3 1 3 京都記念 菊花賞2着
2021 ディープボンド 1 2 3 1 阪神大賞典 (菊花賞4着)

前走阪神大賞典組の好走馬10頭をみると、うち9頭には芝2000m以上でG1またはG2の優勝実績があった。例外1頭は2012年に重賞初制覇をこの天皇賞(春)という大舞台で成し遂げたビートブラックだが、本競走と同じ長距離G1・菊花賞で0.2秒差の3着があったほか、G2では2011年の京都大賞典2着という実績も持っていた。

■表6 前走日経賞からの3着以内好走馬

馬名 天皇賞(春) 日経賞 主な勝ち鞍 その他G1実績
人気 着順 人気 着順
2012 ウインバリアシオン 2 3 2 2 青葉賞 菊花賞2着
2013 フェノーメノ 2 1 1 1 日経賞 日本ダービー2着
2014 フェノーメノ 4 1 2 5 天皇賞(春) 日本ダービー2着
ウインバリアシオン 3 2 1 1 日経賞 菊花賞2着
ホッコーブレーヴ 12 3 10 2 (1600万下) (ジャパンC12着)
2020 スティッフェリオ 11 2 9 3 オールカマー (宝塚記念7着)
ミッキースワロー 4 3 1 1 日経賞 (ジャパンC5着)
2021 ワールドプレミア 3 1 2 3 菊花賞 有馬記念3着
カレンブーケドール 4 3 1 2 (スイートピーS) ジャパンC2着

続いて表6は日経賞組の好走馬9頭である。各馬の重賞実績は阪神大賞典組と似通っており、芝2200m以上でのG1またはG2優勝実績を持っていた馬が9頭中7頭。ホッコーブレーヴとカレンブーケドールは重賞未勝利馬で、前走・日経賞では連対(2着)していた。今年の天皇賞(春)は日経賞2着馬不在のため、この組は「芝2200m以上のG2以上で優勝」という条件をそのまま当てはめていいだろう。

■表7 前走阪神大賞典・日経賞以外からの3着以内好走馬(外国調教馬除く)

馬名 天皇賞(春) 前走 2400m以上
主な勝ち鞍
その他G1実績
人気 着順 レース 人気 着順
2012 トーセンジョーダン 3 2 大阪杯(G2) 2 3 AR共和国杯 天皇賞(秋)1着
2013 トーセンラー 3 2 京都記念 6 1 菊花賞3着
2015 フェイムゲーム 7 2 ダイヤモンドS 1 1 AR共和国杯 (天皇賞・春6着)
2016 キタサンブラック 2 1 大阪杯(G2) 5 2 菊花賞 有馬記念3着
2017 キタサンブラック 1 1 大阪杯(G1) 1 1 天皇賞(春) ジャパンC1着
2018 シュヴァルグラン 1 2 大阪杯(G1) 4 13 ジャパンC 天皇賞(春)2着
2019 フィエールマン 1 1 アメリカJCC 1 2 菊花賞
グローリーヴェイズ 6 2 日経新春杯 1 1 日経新春杯 (菊花賞5着)
パフォーマプロミス 8 3 京都記念 4 4 AR共和国杯 (宝塚記念9着)
2020 フィエールマン 1 1 有馬記念 6 4 天皇賞(春) 菊花賞1着

最後に表7は、阪神大賞典・日経賞以外からの好走馬10頭である(日本馬のみ)。こちらは10頭中9頭が芝2400m以上の距離でG1かG2を制していた。残る1頭・トーセンラーは芝2200mのG2・京都記念優勝のほか、菊花賞で3着に食い込んだ実績があった。

以上のように、3着以内に好走した日本馬のべ29頭中26頭はG1またはG2優勝実績馬だった。ここに前走レースごとに阪神大賞典組なら「芝2000m以上」、日経賞組なら「芝2200m以上」、その他の組なら「芝2400m以上」と距離の条件がつく。これらをクリアできない場合は、菊花賞やジャパンCといった芝2400m以上のG1好走実績が必要だ(ホッコーブレーヴ以外が該当)。

【結論】

2022/3/20 阪神11R 阪神大賞典(G2) 1着 11番 ディープボンド(1番人気) 2022/3/20 阪神11R 阪神大賞典(G2)
1着 11番 ディープボンド(1番人気)

阪神大賞典、日経賞という「2大前哨戦」を制してきたディープボンド(5歳)とタイトルホルダー(4歳)による一騎打ちムードが漂う天皇賞(春)。2頭の比較では、日経賞よりも阪神大賞典1着馬のほうが好成績であること(表4)、そして5歳馬がここ5年で4勝を挙げていることから、ディープボンドを上位にとりたい。

ただ、本競走の優勝馬は2011年のヒルノダムール以降、3歳クラシック三冠のいずれかひとつでは3着以内に入っていた馬ばかり。2015年・ゴールドシップ以降の7年間は菊花賞馬が6勝、菊花賞2着馬が1勝と、菊花賞連対馬しか勝っていない。この点を重視するなら、1着候補は菊花賞馬・タイトルホルダーという考え方もできそうだ(ディープボンドは菊花賞4着)。

今年のメンバーで上記2頭のほかにG2以上の優勝実績を持つ馬は、ユーキャンスマイル(2020年阪神大賞典)とディバインフォース(2021年ステイヤーズS)のみで、どちらも距離条件は問題なくクリア。特にユーキャンスマイルはG1でも菊花賞3着があるほか、本競走の過去3年も5→4→7着と上位を争っている。今年のメンバー構成なら過去最高着順を更新しても不思議はない。

ライタープロフィール

浅田知広(あさだ ともひろ)

1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。


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