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第1403回 リーディング上位厩舎の開業後5年間の成績は?

2020/3/16(月)

新人騎手にスポットライトが当たることも多い3月の中央競馬だが、調教師の多くが厩舎を開業するのもまた、この3月だ。今年は3月4日付けで、小手川準、宮田敬介、新谷功一、吉岡辰弥の4名が新規に厩舎を開業した。当初は割り当てられる馬房が少なく勝ち鞍1つ重ねるのも簡単ではなさそうだが、現在リーディングの上位を争うような厩舎は開業当初、どんな成績を残していたのだろうか。JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用し、いくつかの厩舎の開業後5年間の成績を見てみたい。

■表1 昨年の調教師成績(勝ち鞍順)

順位 調教師名 厩舎開業 所属 着別度数 勝率 連対率 3着内率
1 安田隆行 1995年3月 栗東 62-47-33-209/351 17.7% 31.1% 40.5%
2 矢作芳人 2005年3月 栗東 54-50-42-378/524 10.3% 19.8% 27.9%
3 堀宣行 2003年3月 美浦 54-25-22-141/242 22.3% 32.6% 41.7%
4 中内田充正 2014年3月 栗東 48-24-17-124/213 22.5% 33.8% 41.8%
5 藤沢和雄 1988年3月 美浦 46-44-27-160/277 16.6% 32.5% 42.2%

昨年の中央競馬では安田隆行厩舎が62勝を挙げ、1995年の開業から25年目にして初の全国リーディングを獲得した。54勝で矢作芳人、堀宣行厩舎が続き、4位には48勝で開業6年目の中内田充正厩舎。そして5位は46勝で藤沢和雄厩舎となった。今回はこのうち、2000年以降に開業した矢作、堀、中内田厩舎について調べたい。

■表2 堀宣行厩舎開業後5年の成績推移

着別度数 勝率 連対率 3着内率 単回収 複回収 重賞
2003年 6-13-11-81/111 5.4% 17.1% 27.0% 90% 97%
2004年 16-16-24-100/156 10.3% 20.5% 35.9% 48% 94%
2005年 23-23-21-116/183 12.6% 25.1% 36.6% 91% 90%
2006年 28-13-22-143/206 13.6% 19.9% 30.6% 99% 73% 1勝
2007年 26-21-28-150/225 11.6% 20.9% 33.3% 63% 80% 4勝

2006/7/2 函館11R 函館スプリントステークス(GV) 1着 12番 ビーナスライン(堀宣行厩舎)

まずは、その3厩舎で開業がもっとも早かった美浦の堀宣行厩舎から。2003年3月に開業し、初勝利は同年5月。10月には月間3勝も記録したが、やや勝ち切れない面もあって1年目は6勝で終えた。しかし2年目に16勝、そして3年目には23勝を挙げると、4年目の2006年には函館スプリントステークス(ビーナスライン)で重賞初制覇。翌2007年にはロックドゥカンブなどで重賞4勝を挙げ、そのロックドゥカンブの菊花賞ではG1で初めて1番人気の支持も受けている(3着)。ただ、30勝台に乗せたのは開業7年目の2009年(31勝)。キンシャサノキセキによるG1初制覇は翌2010年だった。関西馬優勢という時代背景もあり、少しずつ実績を重ねて今の地位を築いたという印象だ。

■表3 矢作芳人厩舎開業後5年の成績推移

着別度数 勝率 連対率 3着内率 単回収 複回収 重賞
2005年 15-10-13-112/150 10.0% 16.7% 25.3% 93% 75%
2006年 23-18-19-201/261 8.8% 15.7% 23.0% 75% 86%
2007年 33-29-36-254/352 9.4% 17.6% 27.8% 102% 108% 1勝
2008年 35-33-33-289/390 9.0% 17.4% 25.9% 101% 82% 3勝
2009年 47-35-31-350/463 10.2% 17.7% 24.4% 122% 84% 2勝

2010/12/19 中山11R 朝日杯フューチュリティS(GT) 1着 11番 グランプリボス(矢作芳人厩舎)

続いては、2005年開業の栗東・矢作芳人厩舎。1年目は3月26日に初勝利を挙げると、5月の4勝など毎月最低1勝は重ねて計15勝。3年目の2007年には30勝台(33勝)に乗せるとともに、スワンSのスーパーホーネットで重賞初制覇。そして47勝を挙げた5年目・2009年には早くも全国リーディング2位まで駆け上がり、翌2010年末には朝日杯FS(グランプリボス)でG1制覇も果たしている。また矢作厩舎といえば、所属馬に賞金獲得の機会をできるだけ多く与えるという方針のもと、出走数が群を抜いて多いことはよく知られている。この表でも3年目に352戦を記録するなど、開業当初からその方針が貫かれていることが見て取れる。

■表4 中内田充正厩舎開業後5年の成績推移

着別度数 勝率 連対率 3着内率 単回収 複回収 重賞
2014年 7-18-14-111/150 4.7% 16.7% 26.0% 31% 74%
2015年 23-22-15-160/220 10.5% 20.5% 27.3% 58% 59%
2016年 31-34-16-150/231 13.4% 28.1% 35.1% 95% 74% 1勝
2017年 46-19-23-126/214 21.5% 30.4% 41.1% 110% 77% 5勝(G1・1勝)
2018年 45-33-23-111/212 21.2% 36.8% 47.6% 73% 79% 4勝(G1・1勝)

そして表4は、今年で開業7年目の栗東・中内田充正厩舎の成績推移だ。初勝利は2014年の4月で、この年は計7勝。2、3着計32回は1着数の4.6倍にものぼり、表2の堀厩舎(同4倍)にも増して、好走すれども勝ち切れないという歯がゆい思いもあったことだろう。しかし、2年目に23勝、3年目には新潟2歳S(ヴゼットジョリー)での重賞初制覇を含む31勝をマーク。そして、ダノンプレミアムの朝日杯FSでG1初制覇を飾った2017年には、JRA史上最速で100勝に到達。計46勝を挙げ、全国リーディング8位に食い込んだ。以降は3年連続で40勝以上、勝率も20%以上をキープするなど、2、3着が多かった1年目とは正反対とも言える結果を残している。

■表5 西村真幸厩舎開業後5年の成績推移

着別度数 勝率 連対率 3着内率 単回収 複回収 重賞
2015年 9-9-9-195/222 4.1% 8.1% 12.2% 120% 71%
2016年 20-14-22-255/311 6.4% 10.9% 18.0% 81% 64%
2017年 29-23-30-219/301 9.6% 17.3% 27.2% 53% 106%
2018年 20-29-24-250/323 6.2% 15.2% 22.6% 50% 54%
2019年 41-36-23-190/290 14.1% 26.6% 34.5% 147% 96% 2勝

最後に、表1の勝ち鞍ベスト5には入っていなかったが、「開業から5年」を満たしたばかりの昨年、41勝で10位となった栗東・西村真幸厩舎についても見ておきたい。1年目はJRAで9勝を挙げたほか、白井寿昭厩舎から移籍したマイネルバイカの白山大賞典でダートグレード競走制覇を達成。2年目から20勝、29勝と順調に勝ち星を伸ばしたが、一昨年は20勝にとどまった。しかし昨年は41勝と大きく巻き返してトップ10入りを果たし、マーメイドS(サラス)、京王杯2歳S(タイセイビジョン)でJRA重賞勝ちも飾っている。2年目の311戦は矢作芳人厩舎を上回り、以降も年間300戦前後と、矢作厩舎ほどではないものの出走数は多い傾向だ。

以上、昨年の勝ち鞍トップ5のうち2000年以降に開業した3厩舎に加え、昨年大躍進を果たした西村真幸厩舎の成績推移を見てきた。まず、他厩舎から引き継いだ馬が大半を占める開業初年度は、勝利数が2桁に届かなかったとしても心配には及ばないことがわかる。ただ、2年目に10勝以上、そして3年目には20勝以上を挙げていることは、今回取り上げた4厩舎には共通していた。このことから現時点では、昨年や一昨年に開業した厩舎が今年どんな成績を収められるかが注目点。この3月に開業した厩舎については、来年以降へ向けた下地作りの年と言えそうだ。

ライタープロフィール

浅田知広(あさだ ともひろ)

1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。


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