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第1338回 札幌の開幕を飾るクイーンSを展望する

2019/7/25(木)

今週の重賞は新潟のアイビスサマーダッシュと札幌のクイーンSの2レース。昨年の当欄では前者を取り上げているので、今回は後者を分析したい。一昨年はアエロリット、昨年はディアドラとG1馬が完勝して実力を見せつけたが、今年はG1馬の登録なし。これからの飛躍を誓う馬たちのなかから、データによる有力馬を探していこう。集計対象は、過去10年のうち函館開催となった2013年を除く9年分。データの分析にはJRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 人気別成績

人気 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
1番人気 3-  3-  1-  2/  9 33.3% 66.7% 77.8% 97% 117%
2番人気 3-  0-  1-  5/  9 33.3% 33.3% 44.4% 137% 73%
3番人気 0-  1-  1-  7/  9 0.0% 11.1% 22.2% 0% 38%
4番人気 0-  1-  2-  6/  9 0.0% 11.1% 33.3% 0% 68%
5番人気 0-  0-  0-  9/  9 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
6番人気 0-  2-  2-  5/  9 0.0% 22.2% 44.4% 0% 140%
7番人気 1-  0-  0-  8/  9 11.1% 11.1% 11.1% 361% 43%
8番人気 0-  0-  1-  8/  9 0.0% 0.0% 11.1% 0% 43%
9番人気 1-  0-  0-  8/  9 11.1% 11.1% 11.1% 224% 58%
10番人気〜 1-  2-  1- 32/ 36 2.8% 8.3% 11.1% 163% 89%

表1は人気別成績。集計対象の9年で1番人気と2番人気が各3勝を挙げ、回収率も良好。特に1番人気は安定して走っており、信頼性は高い。残る3勝は7番人気、9番人気、11番人気が1勝ずつで、1、2番人気が勝たなかったときは穴馬が1着になる傾向が見られる。勝ち馬が出ていない3〜6番人気も2、3着には計9回入っており、馬券にはしばしばなっている。

■表2 年齢別成績

年齢 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
3歳 4-  0-  1- 10/ 15 26.7% 26.7% 33.3% 85% 59%
4歳 1-  3-  4- 24/ 32 3.1% 12.5% 25.0% 10% 61%
5歳 2-  6-  4- 36/ 48 4.2% 16.7% 25.0% 133% 98%
6歳 2-  0-  0- 18/ 20 10.0% 10.0% 10.0% 263% 46%
7歳以上 0-  0-  0-  2/  2 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%

表2は年齢別成績。集計対象の9年で、3歳が4勝と強さを発揮している。なお、3歳については次項で好走馬の一覧をあらためて紹介する。4歳と5歳は傾向が似ており、2、3着は多いもののあまり勝ち切れない。4歳や5歳を本命視する場合は馬連や3連複のほうが無難かもしれない。6歳は極端な傾向が出ており、15年7番人気1着のメイショウスザンナ、16年9番人気1着のマコトブリジャールと穴馬が2勝を挙げた反面、それ以外の馬はすべて4着以下に敗れている。牝馬ということもあって7歳以上の出走は2例のみで、いずれも好走には至らなかった。

■表3 3歳の好走馬と同年の主な戦績

人気 着順 馬名 同年の主な戦績
10年 2 1 アプリコットフィズ クイーンC1着、桜花賞5着、オークス6着
11年 1 1 アヴェンチュラ 漁火S1着
12年 1 1 アイムユアーズ フィリーズレビュー1着、桜花賞3着、オークス4着
4 3 ミッドサマーフェア フローラS1着
17年 2 1 アエロリット NHKマイルC1着、桜花賞5着

表3は、3歳の好走馬一覧と同年の主な戦績をまとめたもの。故障のため春のクラシックを棒に振ったアヴェンチュラを除く4頭は重賞1着の実績があり、そのうち3頭はG1でも掲示板に載っていた。斤量で有利な3歳馬ではあるが、実力、実績も備わっていなければ好走は難しいようだ。前述のアヴェンチュラも秋には秋華賞を制すことになる実力馬。復帰戦となった前走の漁火Sでは古馬の準オープン級を一蹴しており、高い能力を持っているのは明らかだった。

■表4 前走クラス別成績(4歳以上のみ)

前走クラス 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
2勝 0- 0- 0- 9/ 9 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
3勝 1- 1- 2-17/21 4.8% 9.5% 19.0% 279% 104%
オープン特別 0- 1- 1- 6/ 8 0.0% 12.5% 25.0% 0% 163%
G3 2- 3- 3-34/42 4.8% 11.9% 19.0% 125% 57%
G2 0- 0- 0- 0/ 0          
G1 1- 4- 2-12/19 5.3% 26.3% 36.8% 27% 82%

表4は古馬に限った前走クラス別成績。格が高いほうから見ていくと、前走G1の好走例はすべてヴィクトリアマイル。ただし、このレースを使っていた馬には注意事項があり、次の表5で取り上げるのでそちらをご確認いただきたい。前走G3、オープン特別、3勝クラス(1600万下)の古馬はほぼ互角といったところ。ただし、前走2勝クラス(1000万下)の好走例は見られない。

■表5 同年の古馬混合牝馬限定重賞における着順別成績

レース 着順 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
ヴィクトリアマイル 1〜3着 0- 0- 0- 3/ 3 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
4着〜 1- 5- 3-19/28 3.6% 21.4% 32.1% 18% 68%
阪神牝馬S 1〜3着 0- 0- 0- 2/ 2 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
4着〜 0- 1- 2- 4/ 7 0.0% 14.3% 42.9% 0% 232%
中山牝馬S 1〜3着 1- 2- 1- 4/ 8 12.5% 37.5% 50.0% 65% 138%
4着〜 0- 2- 0-15/17 0.0% 11.8% 11.8% 0% 22%
福島牝馬S 1〜3着 3- 1- 1- 8/13 23.1% 30.8% 38.5% 445% 127%
4着〜 0- 2- 0-13/15 0.0% 13.3% 13.3% 0% 54%
愛知杯 1〜3着 0- 0- 1- 2/ 3 0.0% 0.0% 33.3% 0% 130%
4着〜 1- 0- 0- 4/ 5 20.0% 20.0% 20.0% 404% 106%
マーメイドS 1〜3着 0- 0- 1- 7/ 8 0.0% 0.0% 12.5% 0% 48%
4着〜 1- 2- 1-20/24 4.2% 12.5% 16.7% 135% 46%

表5は、同じ年に行なわれた古馬の牝馬限定重賞(芝1600〜2000m)における着順ごとに、クイーンSでの成績を調べたもの。なお、阪神牝馬Sと愛知杯は、現行の距離・日程となった16年以降を集計の対象としている。

気をつけたいのが、芝1600mで行なわれるヴィクトリアマイルと阪神牝馬Sで、その両レースで3着以内に入っていた馬は、クイーンSでは1頭も好走していない。一例として17年のアドマイヤリードを挙げると、ヴィクトリアマイルは6番人気1着だったが、クイーンSでは逆に1番人気6着という結果に終わった。同馬に限らず、両レースの好走馬は人気を背負って敗退する傾向にあり、該当馬がいる場合は注意したい。

一方、相性がいいのは芝1800mの中山牝馬Sと福島牝馬Sで、いずれの好走馬もクイーンSの好走率が優秀。中山牝馬Sの1〜3着馬は複勝率50.0%に達し、福島牝馬Sの1〜3着馬は激走を繰り返して単勝回収率445%という要注意の存在だ。両レースともに「右回り」「コーナー4つ」「直線が短い」など距離以外にもクイーンSとの共通性があるので、納得の好相性といったところだ。

最後に芝2000mの2重賞に触れておくと、現行の1月開催となってからの愛知杯は着順を問わずに好走しており侮れない。もうひとつのマーメイドSは、そこでの着順との関連性があまりないようだ。

■表6 洋芝(札幌、函館の芝)の複勝率別成績

洋芝複勝率 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
洋芝2走以上 50.0%以上 4- 2- 3-29/38 10.5% 15.8% 23.7% 182% 79%
50.0%未満 0- 0- 1-16/17 0.0% 0.0% 5.9% 0% 62%
洋芝1走 好走 1- 3- 1-10/15 6.7% 26.7% 33.3% 21% 70%
好走できず 1- 0- 0- 7/ 8 12.5% 12.5% 12.5% 252% 66%
洋芝未出走 3- 4- 4-28/39 7.7% 17.9% 28.2% 101% 72%

表6は洋芝(札幌、函館の芝)における複勝率別成績で「洋芝2走以上」「洋芝1走」「洋芝未出走」に分けて示している。まず「洋芝2走以上」の場合は複勝率50.0%未満だった馬の連対例はなく、わずかに3着が1頭のみ。また、「洋芝1走」でも、そこで好走しておくことは重要で、好走できなかった馬とは明らかに成績差がある。唯一、16年に洋芝1走で好走なしだったマコトブリジャールが勝った例はあるが、基本的には1走のみでもしっかり好走しておきたい。なお、「洋芝未出走」の成績も悪くなく、未経験だからといって過剰に心配する必要はないだろう。

【結論】

2019/3/9 中山11R 中山牝馬ステークス(G3)1着 7番 フロンテアクイーン
 2019/2/10 東京9R 初音ステークス 1着 6番 ダノングレース

今年のクイーンSに登録してきたのは全部で17頭(フルゲート14頭)。ただし、好成績を収めている3歳馬の登録はメイショウショウブのみとなった。同馬の春の実績を振り返ると、ニュージーランドT2着があるものの重賞勝ちはなく、オークスも17着に敗退。表3の項で見た3歳好走馬の実績と比べると、物足りないというのが正直なところである。

古馬では、相性のいい中山牝馬Sや福島牝馬Sで今年好走した馬がいればというところだが、中山牝馬S1着のフロンテアクイーン、同2着のウラヌスチャーム、福島牝馬S3着のダノングレースがエントリーしてきた。このうち洋芝実績も持っているのはダノングレース(2走して複勝率100.0%)、フロンテアクイーン(1走して好走)だ。洋芝未出走のウラヌスチャームもダメというわけではなく、むしろ着順を問わず好成績の愛知杯に今年出走している点は見逃せない。

前走が重賞以外の馬では、前走3勝クラスかつ洋芝で5走して複勝率100.0%のカリビアンゴールドが面白そうだが、登録時点での出走馬決定順は15番目。回避馬が出ないと出走できない情勢となっている。そのほか洋芝実績がある馬ではカレンシリエージョサトノガーネットウインシャトレーヌの名前を挙げておく。

最後に触れておかなければならないのがミッキーチャーム。昨年の秋華賞2着という実力馬で、洋芝では3戦すべて圧勝と馬場適性も極めて高いのだが、今年の春の戦績がどうにも気になるのである。というのも、クイーンSと相性がいい中山牝馬Sで14着に大敗したあと、直結しない阪神牝馬Sを制しているからだ。だからといって軽視もしづらい馬ではあるが、データ面で万全ではないことは指摘しておきたい。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。


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