第1313回 今春のG1で好走を連発する休み明けを分析する|競馬情報ならJRA-VAN

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第1313回 今春のG1で好走を連発する休み明けを分析する

2019/4/29(月)

今年の桜花賞を制したグランアレグリアは中15週、皐月賞のサートゥルナーリアは中14週、天皇賞・春のフィエールマンは中13週と、今春のG1シリーズでは休み明けで出走した馬の好走が目立っている。そこで今回は、これらの出走間隔も含まれる「中12〜16週の休み明け」に絞ったデータを調べてみたい。昨年からG1で休み明けの馬が勝利するケースが顕著に増えてきたことを考慮し、集計対象は2018年1月6日〜19年4月21日の平地戦のみとする。データの分析には、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

2019/4/7 阪神11R 桜花賞(G1) 1着 8番グランアレグリア 2019/4/14 中山11R 皐月賞(G1) 1着 12番サートゥルナーリア

■表1 全体および馬場別成績

馬場 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
全体 325- 265- 309-3629/4528 7.2% 13.0% 19.9% 83% 75%
184- 161- 186-1806/2337 7.9% 14.8% 22.7% 77% 86%
ダート 141- 104- 123-1823/2191 6.4% 11.2% 16.8% 88% 63%

表1は、中12〜16週で出走した馬の全体成績と芝ダート別の成績を示したもの。まずは全体成績から見ていくが、これだけでは語りづらいため、同期間の全馬の成績(勝率7.1%、連対率14.2%、複勝率21.3%、単勝回収率72%、複勝回収率72%)と比較する。すると、勝率はほぼ同等で、連対率と複勝率はわずかにダウンするが、単勝回収率は11ポイント高く、複勝回収率も3ポイントほど上回っていることがわかる。つまり、好走率はわずかに下がるが、それ以上に人気が落ちている様子がうかがえ、中12〜16週はなかなか妙味のある出走間隔と言えそうだ。

次に芝ダート別の成績を見ると、好走率が高いのは芝。ただし、ダートは単勝回収率88%と高く、勝ち切りを狙ってみる価値はある。

■表2 クラス別成績

クラス 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
未勝利 85-  66-  75-1266/1492 5.7% 10.1% 15.1% 94% 72%
500万下 132- 108- 119-1454/1813 7.3% 13.2% 19.8% 76% 75%
1000万下 50-  33-  65- 470/ 618 8.1% 13.4% 23.9% 67% 71%
1600万下 19-  18-  15- 170/ 222 8.6% 16.7% 23.4% 114% 61%
オープン特別 13- 11- 15-115/154 8.4% 15.6% 25.3% 84% 94%
G3 11-  18-   7-  82/ 118 9.3% 24.6% 30.5% 66% 104%
G2 11-  10-  12-  55/  88 12.5% 23.9% 37.5% 73% 94%
G1 4-   1-   1-  17/  23 17.4% 21.7% 26.1% 102% 68%

※オープン特別にはリステッド競走を含む

表2はクラス別成績。勝率ベースの数字に注目すると、概してクラスが上がるほど数値が高くなっていることがわかる。厳しいレースになる上級戦で休み明けは苦しいというイメージもあるが、少なくとも中12〜16週において際立った不利は感じられない。むしろ、今春のレース結果を見ても、現在では狙いすましてG1を獲りにくる馬が採用する出走間隔と考えるほうが実態に合っているのかもしれない。

■表3 馬体重別および馬体重増減別成績

馬体重 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
当日 〜399キロ 2-   1-   1-  38/  42 4.8% 7.1% 9.5% 69% 34%
400〜419キロ 5-   6-   4- 157/ 172 2.9% 6.4% 8.7% 25% 27%
420〜439キロ 23-  18-  23- 411/ 475 4.8% 8.6% 13.5% 51% 50%
440〜459キロ 48-  49-  66- 696/ 859 5.6% 11.3% 19.0% 70% 101%
460〜479キロ 78-  65-  78- 939/1160 6.7% 12.3% 19.1% 68% 59%
480〜499キロ 90-  82-  83- 749/1004 9.0% 17.1% 25.4% 118% 93%
500キロ〜 79-  44-  54- 639/ 816 9.7% 15.1% 21.7% 104% 72%
増減 今回減 104-  72-  98-1245/1519 6.8% 11.6% 18.0% 75% 67%
同体重 24-  26-  29- 351/ 430 5.6% 11.6% 18.4% 75% 67%
今回増 196- 167- 182-2032/2577 7.6% 14.1% 21.1% 88% 80%

表3は馬体重にまつわるデータで、上はレース当日の馬体重、下は馬体重の増減を表している。まず馬体重に関しては、480キロ以上ある馬が好走率、回収率ともに良好。従来は休み明けだと大型馬は仕上げにくいというのがセオリーだったが、ここでもイメージを覆すような傾向が表れている。また、増減に関しては「今回増」の成績がよく、プラス20キロ以上でも勝率12.0%、単勝回収率243%という数字が残っている。最終的には個別の馬の仕上がり具合で判断すべきだとしても、大幅馬体増というだけで割り引くのはもったいないかもしれない。

■表4 距離別成績

距離 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
1000m〜1300m 28-  33-  31- 504/ 596 4.7% 10.2% 15.4% 77% 73%
1400m〜1600m 56-  45-  63- 542/ 706 7.9% 14.3% 23.2% 70% 108%
1700m〜2000m 74-  66-  70- 601/ 811 9.1% 17.3% 25.9% 84% 76%
2100m〜2400m 16-  11-  19- 112/ 158 10.1% 17.1% 29.1% 45% 57%
2500m〜 10-   6-   3-  47/  66 15.2% 24.2% 28.8% 172% 157%
ダート 1000m〜1300m 39-  22-  39- 577/ 677 5.8% 9.0% 14.8% 64% 54%
1400m〜1600m 41-  24-  28- 520/ 613 6.7% 10.6% 15.2% 111% 52%
1700m〜2000m 54-  53-  50- 671/ 828 6.5% 12.9% 19.0% 79% 74%
2100m〜2400m 7-   5-   6-  53/  71 9.9% 16.9% 25.4% 222% 112%
2500m〜 0-   0-   0-   2/   2 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%

表4は距離別成績を芝ダート別で示したもの。これもまた意外な傾向が出ており、芝ダートともに距離が長くなるほど好走率は高い。従来は「長距離戦で休み明けだと最後まで息がもたない」とも考えられていたが、少なくとも中12〜16週に関しては当てはまらなくなっている。実際、今年の天皇賞・春では1着のフィエールマンが中13週、2着のグローリーヴェイズも中14週での出走だった。

■表5 人気別成績

人気 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
1番人気 80-  47-  27- 107/ 261 30.7% 48.7% 59.0% 74% 78%
2番人気 75-  42-  47- 125/ 289 26.0% 40.5% 56.7% 108% 92%
3番人気 39-  36-  30- 149/ 254 15.4% 29.5% 41.3% 92% 80%
4番人気 31-  21-  36- 201/ 289 10.7% 18.0% 30.4% 82% 72%
5番人気 32-  30-  41- 225/ 328 9.8% 18.9% 31.4% 108% 101%
6番人気 16-  19-  37- 257/ 329 4.9% 10.6% 21.9% 71% 82%
7番人気 17-  18-  26- 249/ 310 5.5% 11.3% 19.7% 113% 83%
8番人気 13-  12-  16- 252/ 293 4.4% 8.5% 14.0% 100% 76%
9番人気 5-  11-  10- 271/ 297 1.7% 5.4% 8.8% 59% 67%
10番人気〜 17-  29-  39-1793/1878 0.9% 2.4% 4.5% 72% 65%

表5は人気別成績。注目は2番人気の成績が優秀なことで、本来は1番人気に推されるべきなのに、休み明けのぶん2番人気になっている馬が少なからず含まれているのかもしれない。また、3番人気も悪くなく、5番人気、7番人気、8番人気はいずれも単勝回収率100%以上を記録。1番人気こそ水準級の成績だが、2番人気以下のひとケタ人気は総じて良好な成績を残している。

■表6 騎手別成績

騎手 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
着別度数順 C.ルメール 26- 7-11-34/78 33.3% 42.3% 56.4% 129% 92%
北村友一 14- 5- 7-66/92 15.2% 20.7% 28.3% 126% 71%
川田将雅 13-17-11-31/72 18.1% 41.7% 56.9% 81% 127%
武豊 12- 9-12-36/69 17.4% 30.4% 47.8% 103% 108%
戸崎圭太 12- 8- 9-64/93 12.9% 21.5% 31.2% 65% 60%
単勝回収率順 川又賢治 8- 3- 8-56/75 10.7% 14.7% 25.3% 343% 164%
藤岡佑介 10- 5- 5-38/58 17.2% 25.9% 34.5% 242% 80%
松山弘平 10- 6- 8-68/92 10.9% 17.4% 26.1% 233% 98%
菱田裕二 3- 3- 1-50/57 5.3% 10.5% 12.3% 167% 67%
武藤雅 4- 2- 4-57/67 6.0% 9.0% 14.9% 145% 74%

※単勝回収率順は騎乗50回以上

表6は騎手別成績で、上半分は着別度数順、下半分は単勝回収率順(騎乗50回以上)を示している。最多の26勝を記録したのはクリストフ・ルメール騎手で、冒頭で挙げた桜花賞のグランアレグリア、皐月賞のサートゥルナーリア、天皇賞・春のフィエールマンの3頭すべてで手綱を取っている。その好走率は非常に高く、中12〜16週で出走する馬に騎乗するケースではかなり有望な存在となる。また、2位の北村友一騎手は単勝回収率、3位の川田将雅騎手は連対率、複勝率でそれぞれルメール騎手と匹敵する数値を記録。4位の武豊騎手も単複ともに回収率100%オーバーと、以上の4騎手は狙ってみる価値が高そうだ。

単勝回収率順では若手ジョッキーが上位に進出。単勝回収率300%台の川又賢治騎手を筆頭に、こちらにも注目してみたい。

■表7 生産者別成績

生産者 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
着別度数順 ノーザンファーム 76- 66- 73-463/678 11.2% 20.9% 31.7% 96% 95%
社台ファーム 40- 27- 28-310/405 9.9% 16.5% 23.5% 84% 84%
社台コーポレーション白老ファーム 16- 14- 14- 97/141 11.3% 21.3% 31.2% 72% 74%
ダーレー・ジャパン・ファーム 8-  3- 10- 68/ 89 9.0% 12.4% 23.6% 85% 72%
三嶋牧場 6-  4-  4- 44/ 58 10.3% 17.2% 24.1% 158% 71%
単勝回収率順 ヤナガワ牧場 6-  1-  2- 18/ 27 22.2% 25.9% 33.3% 913% 181%
グランド牧場 4-  1-  2- 23/ 30 13.3% 16.7% 23.3% 407% 88%
レイクヴィラファーム 4-  1-  3- 20/ 28 14.3% 17.9% 28.6% 204% 76%
ケイアイファーム 4-  0-  1- 24/ 29 13.8% 13.8% 17.2% 201% 56%
追分ファーム 6-  1-  9- 40/ 56 10.7% 12.5% 28.6% 161% 108%

※単勝回収率順は出走25回以上

表7は生産者別成績で、上半分は着別度数順、下半分は単勝回収率順(出走25回以上)を示している。着別度数順の1位はノーザンファーム。出走回数も図抜けて多いので1位になるのも妥当ではあるが、好走率は高く、単複の回収率も90%台と優秀だ。なお、前述のグランアレグリア、サートゥルナーリア、フィエールマンを生産したのも同牧場である。単勝回収率順ではキタサンブラックを生産したことでも知られるヤナガワ牧場など、日高の生産者も高い数値を記録している。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。


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