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第1312回 前走との斤量差から考える天皇賞(春)

2019/4/25(木)

今週は日曜日に京都競馬場で天皇賞(春)が行われる。出走していれば上位人気が予想されたシャケトラが調教中の故障で予後不良となるアクシデントがあった。これにより4歳馬による戦いとなりそうだが、果たしてどの馬が勝利するだろうか? 今回は前走との斤量差という視点から、レースを展望してみることにする。データの集計・分析にはJRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 天皇賞(春)出走馬の前走斤量差別成績(過去10年)

前走斤量 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
増減無し 3-  2-  0- 21/ 26 11.5% 19.2% 19.2% 79 68
今回1〜1.5キロ増 4-  3-  4- 48/ 59 6.8% 11.9% 18.6% 121 81
今回2〜2.5キロ増 3-  3-  4- 51/ 61 4.9% 9.8% 16.4% 281 149
今回3キロ以上増 0-  0-  2- 22/ 24 0.0% 0.0% 8.3% 0 129
今回1〜1.5キロ減 0-  2-  0-  2/  4 0.0% 50.0% 50.0% 0 150
今回2〜2.5キロ減 0-  0-  0-  0/  0          
今回3キロ以上減 0-  0-  0-  1/  1 0.0% 0.0% 0.0% 0 0

まずは過去10年の天皇賞(春)出走馬の前走斤量差別成績を調べた(表1参照)。ちなみに天皇賞(春)で背負う斤量は、牡馬が58キロ、牝馬が56キロだ。前走と比較し、今回どれぐらい増減するかにより成績を分類している。基本的には今回斤量増となる馬が多い。仮に斤量減となる場合は、牡馬は前走で59キロや60キロ以上を背負ったことになる。斤量減だった馬は5頭おり、そのうち2頭が好走している。かなり狙い目と言えるのだが、残念ながら今年の出走予定馬にはそのような馬はいない。

よって、今回斤量増となる馬を詳しく見ていくことにする。まず、今回3キロ以上増えている馬の成績が【0.0.2.22】で連対馬がいない。これは注目したい特徴だ。3キロ以上増えるケースは、基本的に前走ハンデ戦に出走している馬が多い。天皇賞(春)に向けてはダイヤモンドSや日経新春杯といったハンデ戦もステップレースになりやすい。仮にそれらのレースで好走しても、本番で3キロ以上の斤量増となる場合は、苦戦を強いられるとみることができる。2015年2着のフェイムゲームは、前走ダイヤモンドSだったが、ハンデ58キロを背負い完勝していた。かなり重いハンデを背負っており、本番との斤量の増減はなかったというわけだ。

同じ斤量増でも今回2〜2.5キロ増の場合は、【3.3.4.51】という成績。連対馬は6頭となり、複勝率は16.4%で3キロ増以上より約2倍も好走確率は高くなる。単・複の回収率はともに100%ある。配当妙味が最も見込めそうなタイプだ。

今回1〜1.5キロ増の馬は【4.3.4.48】という成績。勝率、連対率、複勝率すべてで2〜2.5キロ増を上回る成績が出た。また、斤量増減なしの場合は【3.2.0.21】という成績。勝率、連対率、複勝率は、今回1〜1.5キロ増を上回っている。総合的に見ると、斤量差(増加)の値が大きくなるほど、成績が下がっている傾向だ

■表2 今回2〜2.5キロ増馬の前走着順別成績(過去10年)

前入線順位 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
前走1着 2- 2- 0- 5/ 9 22.2% 44.4% 44.4% 135 151
前走2着 0- 0- 2- 9/11 0.0% 0.0% 18.2% 0 165
前走3着 0- 0- 1- 8/ 9 0.0% 0.0% 11.1% 0 26
前走4着 0- 0- 1- 3/ 4 0.0% 0.0% 25.0% 0 152
前走5着 0- 0- 0- 6/ 6 0.0% 0.0% 0.0% 0 0
前走6〜9着 0- 1- 0-14/15 0.0% 6.7% 6.7% 0 92
前走10着〜 1- 0- 0- 6/ 7 14.3% 14.3% 14.3% 2280 531

ここからは今回斤量増の馬に絞り、前走着順別成績を調べていきたい。まずは今回2〜2.5キロ増馬(表2参照)について。前走1着馬が【2.2.0.5】で好成績。たとえ斤量が2キロ増えても、勝ってきた馬はその勢いがまさるようだ。前走2〜5着からは連対馬が出ていない。しかし、一方で前走6〜9着、前走10着以下からは連対馬が出ているのが興味深い

■表3 今回1〜1.5キロ増馬の前走着順別成績(過去10年)

前入線順位 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
前走1着 2- 1- 3- 9/15 13.3% 20.0% 40.0% 127 124
前走2着 2- 1- 1- 4/ 8 25.0% 37.5% 50.0% 655 350
前走3着 0- 0- 0- 5/ 5 0.0% 0.0% 0.0% 0 0
前走4着 0- 0- 0- 4/ 4 0.0% 0.0% 0.0% 0 0
前走5着 0- 0- 0- 6/ 6 0.0% 0.0% 0.0% 0 0
前走6〜9着 0- 0- 0-16/16 0.0% 0.0% 0.0% 0 0
前走10着〜 0- 1- 0- 4/ 5 0.0% 20.0% 20.0% 0 28

続いて今回1〜1.5キロ増馬の前走着順別成績(表3参照)。こちらも前走1着馬が【2.1.3.9】で優秀な成績。2着馬も【2.1.1.4】の好成績だ。一方、3着以下はかなり厳しい成績。巻き返している馬がほとんどいない。

■表4 今回斤量増減なし馬の前走着順別成績(過去10年)

前入線順位 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
前走1着 1- 1- 0- 7/ 9 11.1% 22.2% 22.2% 51 98
前走2着 1- 0- 0- 1/ 2 50.0% 50.0% 50.0% 225 85
前走3着 0- 1- 0- 2/ 3 0.0% 33.3% 33.3% 0 133
前走4着 0- 0- 0- 2/ 2 0.0% 0.0% 0.0% 0 0
前走5着 1- 0- 0- 0/ 1 100.0% 100.0% 100.0% 1150 310
前走6〜9着 0- 0- 0- 4/ 4 0.0% 0.0% 0.0% 0 0
前走10着〜 0- 0- 0- 5/ 5 0.0% 0.0% 0.0% 0 0

続いて今回斤量増減なし馬の前走着順別成績(表4参照)。こちらは前走1着〜5着馬の成績差があまりない。この点は大きな特徴だ。一方、前走6着以下だった馬は不振。巻き返した例がない。

【結論】
以上の傾向を踏まえて、今年の天皇賞(春)を展望してみることにする。出走予定馬は表5の通り。前走レース成績及び、前走斤量、斤量差などを記した。

■表5 今年の天皇賞(春)出走予定馬

馬名 斤量 前走レース 前着 前人 前斤量 斤差 備考
ユーキャンスマイル 58 ダイヤモHG3 1 1 54 4 菊花賞3着
エタリオウ 58 日経賞G2 2 1 55 3 菊花賞2着
グローリーヴェイズ 58 日経新春HG2 1 1 55 3  
プリンスオブペスカ 58 御堂筋H1600 3 4 55 3  
メイショウテッコン 58 日経賞G2 1 3 55 3  
カフジプリンス 58 阪神大賞G2 2 6 56 2  
クリンチャー 58 日経賞G2 7 5 56 2 天皇賞(春)3着
ケントオー 58 阪神大賞G2 7 8 56 2  
チェスナットコート 58 日経賞G2 9 9 56 2  
ロードヴァンドール 58 阪神大賞G2 3 10 56 2  
ヴォージュ 58 阪神大賞G2 8 5 56 2  
パフォーマプロミス 58 京都記念G2 4 4 57 1  
フィエールマン 58 アメリカG2 2 1 57 1 菊花賞1着
リッジマン 58 阪神大賞G2 6 2 57 1  

まず斤量が3キロ以上増える馬は5頭。ユーキャンスマイル、エタリオウ、グローリーヴェイズ、プリンスオブペスカ、メイショウテッコンだ。このうちプリンスオブペスカ以外は上位人気になる可能性が高い。しかし、この手のタイプは過去10年で連対がない。仮にこれらの馬がすべて3着以下に沈むとなると、馬連はいい配当が見込めそうだ。

2018/10/21 京都11R 菊花賞(G1) 1着 12番フィエールマン

最もわかりやすくて有力なタイプは今回斤量が1〜1.5キロ増で、前走1〜2着の馬。該当馬はフィエールマン1頭。前走アメリカジョッキークラブCでは斤量57キロを背負い、2着だった。その時1着だったのがシャケトラだ。斤量58キロは初めてとなるが、上位人気が予想される馬の中では本馬が有力と見たい。

問題は今回斤量が2〜2.5キロ増える馬たちの取捨だ。前走1着馬を狙いたいところだが、今年は該当する馬がいなかった。そこで6着以下に敗れていた馬の中で、巻き返す可能性がある馬を考えてみることにする。

■表6 表2に該当した馬の中で好走した馬

着順 馬名 人気 前走レース名 前着 備考
18年 1 レインボーライン 2 阪神大賞G2 1 天皇賞(秋)3着
3 クリンチャー 4 阪神大賞G2 3 菊花賞2着
16年 2 カレンミロティック 13 阪神大賞G2 6 天皇賞(春)3着
15年 3 カレンミロティック 10 阪神大賞G2 4 宝塚記念2着
14年 2 ウインバリアシオン 3 日経賞G2 1 有馬記念2着
3 ホッコーブレーヴ 12 日経賞G2 2  
13年 1 フェノーメノ 2 日経賞G2 1 天皇賞(秋)2着
2 トーセンラー 3 京都記念G2 1 菊花賞3着
12年 1 ビートブラック 14 阪神大賞G2 10 菊花賞3着
3 ウインバリアシオン 2 日経賞G2 2 菊花賞2着

2018/2/11 京都11R 京都記念(G2) 1着 4番 クリンチャー

斤量2〜2.5キロ増で好走した馬を具体的に挙げてみた(表6参照)。前走6着以下から巻き返したのは、16年カレンミロティックと12年ビートブラック。ともに前走阪神大賞典に出走し、それぞれ6着、10着に敗れていた。前哨戦で大きく負けたことで本番は人気をかなり落としたが、カレンミロティックは前年の天皇賞(春)で3着。ビートブラックは過去に菊花賞3着の実績があった。その他の馬も過去にG1で好走経験歴があるタイプばかりだった。阪神大賞典組の巻き返しというよりも、過去のG1実績の方を重視して考えてみたい。

以上の点を踏まえ、クリンチャーをマークしておくことにする。昨年の天皇賞(春)では3着に入った馬だ。近走の着順が悪く、前走も日経賞で7着。人気はかなり落とすことになりそうだ。不振から脱出できていない可能性はもちろんあるが、同馬の激走を警戒しておきたい。

ライタープロフィール

小田原智大(おだわら ともひろ)

1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。


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