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第1049回 ディープ産駒が未勝利の芝重賞について考える

2016/9/26(月)

今年9月25日までに、ディープインパクト産駒は重賞31勝を記録。これは自身の父サンデーサイレンスが2003年に記録した年間最多の38勝をも上回るペースで、破竹の勢いで重賞勝利を積み重ねている。また、ここにきてセントライト記念をディーマジェスティ、神戸新聞杯をサトノダイヤモンドがそれぞれ制すなど、今年は未勝利だった重賞を初制覇するケースも目立つ。そこで今回は「ディープインパクト産駒が未勝利の芝重賞は何が残っているのか」を調べてみたい。芝重賞に限ったのは、ディープ産駒はダート重賞を1勝のみ(11年レパードS・ボレアス)と極端な偏りが見られるからである。データの分析には、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 ディープインパクト産駒未勝利の芝重賞一覧

重賞 条件
中山金杯 中山 ・芝2000m
フェアリーS 中山 ・芝1600m
愛知杯 中京 ・芝2000m
シルクロードS 京都 ・芝1200m
ダイヤモンドS 東京 ・芝3400m
中山記念 中山 ・芝1800m
オーシャンS 中山 ・芝1200m
中山牝馬S 中山 ・芝1800m
フィリーズレビュー 阪神 ・芝1400m
ファルコンS 中京 ・芝1400m
阪神大賞典 阪神 ・芝3000m
フラワーC 中山 ・芝1800m
日経賞 中山 ・芝2500m
高松宮記念 中京 ・芝1200m
ダービー卿CT 中山 ・芝1600m
ニュージーランドT 中山 ・芝1600m
福島牝馬S 福島 ・芝1800m
天皇賞(春) 京都 ・芝3200m
函館スプリントS 函館 ・芝1200m
函館記念 函館 ・芝2000m
アイビスサマーダッシュ 新潟 ・芝1000m
北九州記念 小倉 ・芝1200m
札幌2歳S 札幌 ・芝1800m
小倉2歳S 小倉 ・芝1200m
京成杯AH 中山 ・芝1600m
セントウルS 阪神 ・芝1200m
スプリンターズS 中山 ・芝1200m
サウジアラビアRC 東京 ・芝1600m
府中牝馬S 東京 ・芝1800m
菊花賞 京都 ・芝3000m
アルテミスS 東京 ・芝1600m
京王杯2歳S 東京 ・芝1400m
アルゼンチン共和国杯 東京 ・芝2500m
デイリー杯2歳S 京都 ・芝1600m
福島記念 福島 ・芝2000m
京都2歳S 京都 ・芝2000m
ステイヤーズS 中山 ・芝3600m
ターコイズS 中山 ・芝1600m
※スプリンターズS以下は今後開催

2016/9/18 中山11R 朝日セントライト記念(G2) 1着 4番 ディーマジェスティ

2016年の中央競馬で組まれている芝重賞は113レース。そのうちディープインパクト産駒が未勝利なのは、2016年9月25日現在、表1の38レースとなっている。初年度産駒がデビューしたのが2010年夏のことで、わずか6年あまりで芝重賞の約3分の2を勝利という事実には改めて驚かされる。

さて、表1をぼんやり眺めるだけでは語りづらいので、今回はディープ産駒未勝利の芝重賞を共通項ごとに5つのグループに分類してみたい。5つのグループとは「中山芝1600〜2000m」「ローカル芝1800〜2000m」「芝1400m以下」「芝2500m以上」「2歳」である。以下、順番に分析してみよう。

2016/9/25 阪神11R 神戸新聞杯(G2) 1着 14番 サトノダイヤモンド

まず、「中山芝1600〜2000m」のグループに含まれるのは、中山金杯、フェアリーS、中山記念、中山牝馬S、フラワーC、ダービー卿CT、ニュージーランドT、京成杯AH、ターコイズSの9重賞。芝1600〜2000mはディープ産駒にとってベストといって差し障りない条件だが、中山重賞ではあまり結果を残していない。実際、中央4場における芝1600〜2000m重賞の勝利数を比較しても、東京19勝、中山9勝、京都16勝、阪神26勝と、中山は最少にとどまっている。一般にディープ産駒の武器は瞬発力とされるが、中央4場でもっとも直線が短く、最後に急坂が待ち構える中山では瞬発力を発揮しづらいのだろう。

とはいえ、今年はマウントロブソンがスプリングS、ディーマジェスティが皐月賞をディープ産駒としてそれぞれ初勝利し、重賞に格上げされた第1回の紫苑Sもビッシュが制したように、中山でも芝1800mや2000mの重賞は克服しつつあるようだ。したがって、来年の中山金杯、中山記念、中山牝馬S、フラワーCでディープ産駒が初勝利しても驚きはない。ただし、中山でも芝1600m重賞に関しては現在も苦戦が続いている。今年すでに行なわれた4つの中山芝1600m重賞には計7頭のディープ産駒が出走したものの、3着2回が最高という成績に終わっている。そんなことを言った途端にあっさり勝つのがディープ産駒ではあるのだが、今年あとひとつ残されているターコイズSでディープ産駒が人気に推されたとしても、過信しないほうがいいかもしれない。

次の「ローカル芝1800〜2000m」は、意味合いとしては前述した中山芝1600〜2000m重賞に近い。ローカル6場の芝コースは中京と新潟外回りを除くといずれも直線が短く、ディープ産駒が瞬発力を発揮しづらい面があるからだ。このグループに該当するのは、愛知杯、福島牝馬S、函館記念、福島記念の4重賞。このなかで初勝利に近いのは、ローカルでも直線が長い中京で行なわれる愛知杯だろう。実際、過去3回の愛知杯ではいずれもディープ産駒が2着に入っており、同条件(中京芝2000m)の中日新聞杯と金鯱賞で計4勝と実績を残していることを考慮しても、初勝利の日は遠からず訪れそうだ。

3つめのグループは「芝1400m以下」。シルクロードS、オーシャンS、フィリーズレビュー、ファルコンS、高松宮記念、函館スプリントS、アイビスサマーダッシュ、北九州記念、セントウルS、スプリンターズSと、5グループのなかで最多の10重賞が該当しており、ディープ産駒がもっとも苦手にしているカテゴリーといえそうだ。なお、小倉2歳Sと京王杯2歳Sも条件としては該当しているが、今回は後述する「2歳」に分類した。では、なぜディープ産駒は短距離重賞を苦手としているのか。おそらく、短距離重賞ではレース前半からペースが速く流れるため、脚が溜まらず、長所の瞬発力が削がれてしまうからだろう。なお、芝1400m重賞は牡馬5勝、牝馬2勝と牡馬優勢なのに対し、芝1200m重賞は牡馬1勝、牝馬3勝と牝馬優勢という傾向もチェックしておきたい。

もうひとつ、このグループに関連して触れておきたいのが京都牝馬Sだ。ディープ産駒は1600mで行なわれていた2015年までに2勝を挙げているが、今年から1400mへ変更された。すると今年は、4頭の産駒が出走して4着が最高と結果を出せなかった。たかが200mでも、短距離重賞を苦手とするディープ産駒にとってはされど200m。この違いが重荷になる可能性は十分に考えられそうだ。

4番目のグループは「2500m以上」。短距離重賞が苦手なディープ産駒は、面白いことに長距離重賞も得意とはいえない。該当するのは、ダイヤモンドS、阪神大賞典、日経賞、天皇賞(春)、菊花賞、アルゼンチン共和国杯、ステイヤーズSの7重賞で、なかでも現在3000m以上で行なわれている5つの芝重賞がすべて未勝利というのは見逃せないところだ。ディープインパクト自身は菊花賞、阪神大賞典、天皇賞(春)と3000m以上の重賞を3勝。直近のレースで注目したいのは菊花賞。昨年までディープ産駒が未勝利だった菊花賞トライアルのセントライト記念を勝ったディーマジェスティ、神戸新聞杯を勝ったサトノダイヤモンドが、本番の菊花賞でも初勝利を挙げることができるのか、注目してみたい。

最後のグループは「2歳」。札幌2歳S、小倉2歳S、サウジアラビアロイヤルC、アルテミスS、京王杯2歳S、デイリー杯2歳S、京都2歳Sと、7つの重賞が該当する。最近になって、ディープ産駒のデビュー時期を意識的に遅らせている、といったことを耳にする機会が増えている。ディープ産駒の数が増えたことで、厩舎や生産者が最適の育成法を把握してきているからだろう。実際、2歳の夏競馬でデビューした頭数を調べると、2013年:30頭→2014年:26頭→2015年:24頭→2016年:16頭と、早期デビューするディープ産駒が減っていることはデータにも表れている。この傾向を考えると、今後も2歳重賞を勝つディープ産駒はそれほど多くは現れないかもしれない。

そして、今回の分類における5グループに該当しない唯一の未勝利芝重賞となっているのが府中牝馬Sである。同条件(東京芝1800m)の重賞である共同通信杯、エプソムC、毎日王冠、東京スポーツ杯2歳Sでは計7勝を挙げており、産駒全体の成績を考えても得意コースといっていいのに、不思議と府中牝馬Sだけは勝っていない。通常のデータ分析では今年も消しということになるのだが、なんといっても相手はディープ産駒。苦手コースというのであればともかく、東京芝1800mはむしろ得意コースでもある。これまでの府中牝馬Sではたまたま負けが重なっただけで、今後は勝ちまくって5年後には本来あるべきデータになっている、と考えたほうが真実に近いのではないだろうか。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。


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