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第875回 逃げの名手が引退!中舘英二騎手をデータから振り返る

2015/1/26(月)

ベテラン中舘英二騎手が2月末をもって現役を引退する。先んじて1月25日(日)の騎乗が最後となり、その日に引退式が行われる。現役生活31年、ヒシアマゾンでの活躍やツインターボでの逃走劇などが思い出されるが、中舘騎手といえばローカルでの騎乗のイメージが強い方が多いのではないだろうか。今回のデータde出〜たでは、個性派として知られた中舘騎手の活躍をデータから振り返りたい。なお、データ分析にはJRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 中館英二騎手の年度別成績(84年〜14年/JRAでの成績)

年度 騎乗数 着別度数 勝率 連対率 複勝率
2014 162 9-10-6-137/162 5.6% 11.7% 15.4%
2013 262 24-13-9-216/262 9.2% 14.1% 17.6%
2012 542 52-34-27-429/542 9.6% 15.9% 20.8%
2011 731 81-70-59-521/731 11.1% 20.7% 28.7%
2010 730 68-50-54-558/730 9.3% 16.2% 23.6%
2009 884 104-86-58-636/884 11.8% 21.5% 28.1%
2008 874 105-78-76-615/874 12.0% 20.9% 29.6%
2007 846 107-73-66-600/846 12.6% 21.3% 29.1%
2006 909 103-95-69-642/909 11.3% 21.8% 29.4%
2005 866 105-91-79-591/866 12.1% 22.6% 31.8%
2004 892 81-78-94-639/892 9.1% 17.8% 28.4%
2003 774 73-74-74-553/774 9.4% 19.0% 28.6%
2002 882 92-89-72-629/882 10.4% 20.5% 28.7%
2001 815 100-85-81-549/815 12.3% 22.7% 32.6%
2000 754 72-84-52-546/754 9.5% 20.7% 27.6%
1999 719 58-46-64-551/719 8.1% 14.5% 23.4%
1998 619 57-44-54-464/619 9.2% 16.3% 25.0%
1997 623 59-54-48-462/623 9.5% 18.1% 25.8%
1996 587 60-55-61-411/587 10.2% 19.6% 30.0%
1995 575 48-51-48-428/575 8.3% 17.2% 25.6%
1994 540 67-56-40-377/540 12.4% 22.8% 30.2%
1993 493 47-45-36-365/493 9.5% 18.7% 26.0%
1992 410 38-27-43-302/410 9.3% 15.9% 26.3%
1991 288 24-19-28-217/288 8.3% 14.9% 24.7%
1990 312 30-23-27-232/312 9.6% 17.0% 25.6%
1989 287 31-39-17-200/287 10.8% 24.4% 30.3%
1988 302 27-29-35-211/302 8.9% 18.5% 30.1%
1987 275 20-26-35-194/275 7.3% 16.7% 29.5%
1986 284 35-32-31-186/284 12.3% 23.6% 34.5%
1985 341 39-27-30-245/341 11.4% 19.4% 28.2%
1984 117 7-13-10-87/117 6.0% 17.1% 25.6%

1994/11/13 京都10R エリザベス女王杯(G1)1着 6番 ヒシアマゾン

まず表1は中舘騎手のデビュー以来の年度別成績。84年に美浦・加藤修甫厩舎所属のジョッキーとしてデビューし、同期には木幡初広騎手・鹿戸雄一現調教師らがいる。デビュー2年目には39勝と躍進。デビュー9年目の92年フラワーCでブランドアートに騎乗して、重賞初制覇。さらに翌93年にはツインターボとのコンビで七夕賞・オールカマーを連勝した。2番手以下を大きく引き離した逃走劇は20年以上経過した今でも競馬ファンの伝説として語り継がれている。

また、ヒシアマゾンとのコンビでは93年に阪神3歳牝馬Sを制して、G1初制覇。翌94年にはクイーンCからエリザベス女王杯まで重賞6連勝という快挙を成し遂げている。この年から勝ち数が増え、01年には自身初の100勝を達成。さらに、40歳を迎えた05年から09年にかけては5年連続で年間100勝を達成している。JRAでの勝利数は通算1823勝(15年1月23日現在)。これは現役騎手では6位、すでに引退した騎手を含めても9位という大記録である。

たしかに100勝以上していた時期はローカルで勝ちまくっていたイメージがあり、馬券でお世話になったことがあるファンは多いだろう。それでは具体的に中舘騎手の活躍をいくつかのデータから分析してみよう。

■表2 中館英二騎手の脚質別成績(86年〜14年)

脚質 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収率 複勝回収率
逃げ 743-  463-  301- 1429/ 2936 25.3% 41.1% 51.3% 140% 115%
先行 815-  811-  743- 3757/ 6126 13.3% 26.5% 38.7% 91% 90%
差し 160-  223-  306- 4126/ 4815 3.3% 8.0% 14.3% 31% 42%
追い込み 34-   41-   73- 3082/ 3230 1.1% 2.3% 4.6% 16% 21%
マクリ 25-   18-   20-   60/  123 20.3% 35.0% 51.2% 140% 143%

表2は脚質別成績。データはTARGETに記録されている86年以降の記録だが、中舘騎手の代名詞といえる「逃げ」で743勝をあげている。勝率・連対率・複勝率ともに優秀で、複勝率は50%超と2回に1回以上は馬券になっていた。勝利数は先行したときが最も多いが、勝率で見れば「逃げ」が先行の倍近い数字となっている。また、注目したいのは2・3着と比較しての1着数の多さ。一旦ハナに立てば、逃げ切って勝つ割合が高いことを意味している。

ただし逃げようと思ってもスタートや他の逃げ馬との兼ね合いで逃げられないことが多いのが現実で、これだけ逃げて結果を出したのは「スタートの巧さ」と「ペース配分の確かさ」があったからだろう。JRA-VANで過去に掲載されていた競馬かわらVANというリレーコラムで白川次郎アナウンサーが「超現実的なプロフェッショナル」(2010/3/8掲載)という中舘騎手を対象にしたコラムを執筆している。これによると、若手の時期に当時スタートの名手と言われた田村正光騎手を徹底的に研究し、技術を習得したとある。

また、同じくローカルで勝ち星を量産した増沢末夫騎手になぞらえて「増沢二世」と言われたことに対して、「増沢さんはためて逃げるタイプ。自分は、淡々と行って離して逃げるタイプ」と語っている。たしかに、ツインターボに代表されるようにペースを落とさないで逃げるケースが多かった。自分の得意な形を持っているのは大きな強みといえるだろう。

個人的に印象に残っているのは、08年3月の中京スポーツ杯(芝1800m)でサケダイスキに騎乗して勝利したときだ。前半1000m通過58秒7とよどみない流れに持ち込んで、直線では後に愛知杯を制するセラフィックロンプらの追撃をクビ差凌ぎ切った。この時はレースをWINS新宿で見ていたのだが、私以外にもサケダイスキをアタマから買っていたファンが多かった(実際に1番人気だった)ようで、「そのまま!」の声が館内に響いていたのが忘れられない。ゴール前で際どく迫られても、しっかりと残しているというのが中舘騎手の逃げの魅力だった。

■表3 中館英二騎手の競馬場別成績(86年〜14年)

場所 着別度数 勝率 連対率 複勝率
札幌 70-   60-   37-  481/  648 10.8% 20.1% 25.8%
函館 54-   46-   60-  395/  555 9.7% 18.0% 28.8%
福島 414-  329-  294- 2194/ 3231 12.8% 23.0% 32.1%
新潟 374-  323-  298- 2303/ 3298 11.3% 21.1% 30.2%
東京 176-  172-  194- 1926/ 2468 7.1% 14.1% 22.0%
中山 266-  252-  249- 2602/ 3369 7.9% 15.4% 22.8%
中京 236-  236-  173- 1427/ 2072 11.4% 22.8% 31.1%
京都 11-    7-    4-  129/  151 7.3% 11.9% 14.6%
阪神 11-    3-   13-  127/  154 7.1% 9.1% 17.5%
小倉 165-  128-  121-  877/ 1291 12.8% 22.7% 32.1%
中央開催 464-  434-  460- 4784/ 6142 7.6% 14.6% 22.1%
ローカル 1313- 1122-  983- 7677/11095 11.8% 21.9% 30.8%

続いて表3は競馬場別成績。表の下部には中央開催とローカル開催での成績も示している。中央開催に比べて3倍近い勝ち星をローカルであげている。競馬場別では福島・新潟での勝利数が非常に多い。

福島・新潟は春・秋のG1シーズンとなると、裏開催として行われることが多い。そういった開催で常に騎乗しているのが中舘騎手だった。ローカル開催に遠征する実力馬に騎乗して勝ち鞍を増やすというのがスタイルで、主要4場以外においてこれだけ勝利しているジョッキーは過去にもいないだろう。ほとんどの騎手が脚光を浴びるG1の舞台を目指しているのとは正反対の騎乗スタイルといえるだろう。

また、中京や小倉での勝利数が多いのも特徴。実際に福島・新潟と変わらない高い率を残している。実力馬に騎乗するために日本全国を飛び回っているイメージだ。

■表4 中館英二騎手のクラス別成績(86年〜14年)

クラス 着別度数 勝率 連対率 複勝率
新馬 139-  151-  144- 1188/ 1622 8.6% 17.9% 26.8%
未勝利 640-  510-  486- 3681/ 5317 12.0% 21.6% 30.8%
500万下 718-  595-  555- 4727/ 6595 10.9% 19.9% 28.3%
1000万下 180-  186-  156- 1572/ 2094 8.6% 17.5% 24.9%
1600万下 38-   54-   38-  446/  576 6.6% 16.0% 22.6%
OPEN特別 32-   33-   30-  340/  435 7.4% 14.9% 21.8%
G3 21-   18-   23-  349/  411 5.1% 9.5% 15.1%
G2 6-    7-    9-  100/  122 4.9% 10.7% 18.0%
G1 3-    2-    2-   58/   65 4.6% 7.7% 10.8%

表4はクラス別成績。勝ち星が非常に多いのが未勝利戦と500万下だ。騎乗数が多いことに加えて、この2つのクラスでは勝率・連対率・複勝率ともに高い。それだけ下級条件においては、逃げを含めた先行策が有効であることを証明している。

東西のジョッキーを見渡しても、これだけ逃げ・先行にこだわった騎手は見当たらない。若手騎手にとっては減量の恩恵がなくなったときにどうやって勝ち鞍を伸ばすか、中舘騎手に見習うべき点は非常に多いはずだ。

■表5 中舘騎手の重賞での脚質別成績

2007/9/30 中山11R スプリンターズS(G1)1着 7番 アストンマーチャン

脚質 着別度数 勝率 連対率 複勝率
逃げ 5-  2-  9- 67/ 83 6.0% 8.4% 19.3%
先行 12- 20- 10-122/164 7.3% 19.5% 25.6%
差し 8-  5- 11-166/190 4.2% 6.8% 12.6%
追い込み 3-  0-  4-150/157 1.9% 1.9% 4.5%
マクリ 2-  0-  0-  3/  5 40.0% 40.0% 40.0%

最後に表5は重賞での脚質別成績。逃げ切り勝ちで記憶に新しいのは07年アストンマーチャンで逃げ切ったスプリンターズSだ。この時は雨で不良馬場の中、前半3ハロン33秒1で飛ばしてサンアディユ以下を完封している。

勝利数を見ると、先行しての勝利が12勝と最も多いが、差し・追い込みで合わせて11勝をあげているのは少々意外だった。10年にレジネッタに騎乗した福島牝馬Sは中団からの差しが見事に決まり、同馬は桜花賞以来となる2年ぶりの勝利を飾った。また、11年にはイタリアンレッドとのコンビで七夕賞・府中牝馬Sと差し切って勝利している。

これら重賞30勝中20勝は牝馬によるもので、特に現役後半はローカルの牝馬限定重賞での勝利が多かった。また、2000年以降にあげた15勝中11勝が関西馬。実際に関西の厩舎からの騎乗依頼も多く、それが中京や小倉での勝ち星の多さにつながっていたわけだ。

引退後は早速3月1日から新規厩舎を開業する中舘騎手。勝利に対するこだわりや東西幅広く培った人脈が大いに生かされるにちがいない。中舘調教師の今後に期待するとともに、若手騎手に現役時代に培ったノウハウを伝承してもらいたいと願っている。

ライタープロフィール

ケンタロウ(けんたろう)

1978年6月、鹿児島県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。初めて買った馬券が大当たりし、それから競馬にのめり込むように。データでは、開催日の馬場やコース適性に注目している。好きなタイプは逃げか追い込み。馬券は1着にこだわった単勝、馬単派。料理研究家ではない。

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