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第649回 降着ルール変更の馬券への影響を考える

2012/11/12(月)

審議ランプが点灯している着順掲示板

来年1月より、降着・失格に関するルールが変更されることが、先日JRAから発表された。降着・失格により泣いた方や、逆に助けられた経験をお持ちの方も多いだろうが、失格や降着はこれまでどの程度、馬券に影響を及ぼしていたのだろうか。過去の例を振り返るとともに、このルール変更の及ぼす影響も予想してみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用し、集計期間は02年以降、本年10月末までとした。

まず、今回のルール変更について改めて確認しておきたい。現在の降着ルールは「走行妨害が、被害馬の競走能力の発揮に重大な影響を与えたと裁決委員が判断した場合、加害馬は被害馬の後ろに降着」というもの。これがルール改定後は「入線した馬について、『その走行妨害がなければ被害馬が加害馬に先着していた』と裁決委員が判断した場合、加害馬は被害馬の後ろに降着」に変更される。もし走行妨害がなくても、加害馬が被害馬に先着していたと判断された場合は降着にはならないということである。
また、失格に関しても従来の「走行妨害により被害馬が落馬・競走中止した場合、加害馬は失格」から、来年1月以降は「極めて悪質で他の騎手や馬に対する危険な行為によって、競走に重大な支障を生じさせたと裁決委員が判断した場合、加害馬は失格」となる。

■表1 失格、降着のあった数と、降着馬の入線順位

入線順位
全降着数
特別R3位以内入線馬降着
失格数
3位以内入線馬失格
1位
2位
3位
4位以下
2012
1
1
3
7
12
2
7
1
2011
4
4
2
9
19
4
1
1
2010
5
8
2
17
32
7
7
3
2009
5
4
7
12
28
4
2
1
2008
3
5
3
26
37
4
6
2
2007
7
3
2
13
25
7
10
1
2006
11
6
3
17
37
5
5
2
2005
1
3
3
7
14
2
3
0
2004
2
1
4
8
15
2
8
3
2003
3
2
5
7
17
4
10
4
2002
5
5
2
14
26
4
8
3
02〜12計
47
42
36
137
262
45
67
21

では、これまでのルールでどの程度の降着馬が出ていたのかを見てみよう。02年以降、本年10月末までの11年近くの間に、降着馬は262頭。年によってその数にばらつきはあるが、おおまかに年間15〜35頭前後、年平均20頭少々の降着が発生している。このうち、馬券に影響のある3位以内入線馬の降着は125頭で、全降着馬の半数ほどが馬券圏内入線での降着だった。ただ、多くのファンに買われる特別レースでの3位以内入線馬の降着となると、年2〜7レース、約11年のうち8年は年間4レース以下となっている。ほかに、失格が年平均6レースほど、3位以内入線馬の失格は年平均2頭ほど出ている。
多くのレースで馬券を購入していると、不利があって悔しい思いをすることなど毎週のようにあるものだが、その「不利」も他馬による走行妨害ではなく、単に包まれただけのようなケースや、たとえ走行妨害があっても「重大な影響を与えた」とはみなされない場合など、降着には繋がらない例も数多い。「○○がなければ」と思ってしまうレースの数の割に、降着の事例は少ないようにも感じるが、みなさんの印象はいかがだろか。

■表2 3位以内入線降着馬の、入線順位と確定順位の差

入線順位と確定順位の差
1 2 3 4 5
6〜
2012
1
0
1
0
0
3
5
2011
2
0
0
1
0
7
10
2010
3
1
1
2
0
8
15
2009
3
0
3
2
1
7
16
2008
2
2
0
0
2
5
11
2007
0
2
1
3
1
5
12
2006
3
2
3
1
1
10
20
2005
1
2
1
0
2
1
7
2004
0
2
0
1
1
3
7
2003
0
2
2
2
1
3
10
2002
1
2
1
1
0
7
12
02〜12計
16
15
13
13
9
59
125

表2は、レースで3位以内に入線しながら降着になった125頭について、入線順位と確定順位の差を調べたものである。1位入線馬が2位入線馬を妨害して2着へと降着になった場合の差は「1」、3位入線6着降着なら「3」といったようにカウントしている。このうち、加害馬の入線順位と確定順位の差が「1」だったのは16頭で、全体の約13%。「2」以内で31頭(25%)、「3」以内で44頭(35%)となっている。

■表3 3位以内入線降着馬と、被害馬とのタイム差

加害馬と被害馬のタイム差
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5〜
2012
0
1
0
1
0
3
5
2011
0
1
0
2
1
6
10
2010
1
0
1
2
1
10
15
2009
1
1
3
3
2
6
16
2008
0
0
2
1
2
6
11
2007
0
1
1
2
0
8
12
2006
0
2
5
0
0
13
20
2005
0
2
0
1
1
3
7
2004
0
0
1
1
1
4
7
2003
0
0
3
3
0
4
10
2002
2
0
1
0
1
8
12
02〜12計
4
8
17
16
9
71
125

続いて表3は、表2同様に3位以内入線の降着馬125頭について、被害馬(降着後の順位のひとつ上の順位の馬)とのタイム差を調べてみた。加害馬・被害馬同タイムは4頭とさすがに少ないが、0.1秒以内で12頭(9.6%)、0.2秒以内で29頭(23%)、0.3秒以内で45頭(36%)である。

このように、従来の3位以内入線馬に関わる降着の中で、被害馬と加害馬の着順差、タイム差がさほど大きくなかったレースは半数に満たず、中でも接戦と言えるのは10%前後、年平均1レースくらいだった。降着になるかどうかは加害馬と被害馬の入線順位差やタイム差で決められるものではなく、これらのデータはあくまで参考にすぎないものの、加害馬と被害馬の差があまりに大きい場合は「妨害がなければ被害馬が加害馬に先着していた」とは判断されづらいと思われる。実際にどんな判断が下されるかは、新ルール下で審議対象になるレースとその結果を見ないことにはわからないが、現時点で数字から判断するかぎり、馬券に影響を与える着順変更はかなり少なくなりそうな印象である。

なお、この表2、表3で注意すべき点として、現在は複数の被害馬が存在した場合、被害馬の中で最下位の馬の次位に加害馬が降着になり、表3のタイム差もその馬(被害馬中最下位)との比較になっていることが挙げられる。新ルールの場合、複数の被害馬で最上位の馬のみが「その走行妨害がなければ被害馬が加害馬に先着していた」と判断されることもありそうで、入線順位と確定順位の差が小さい降着馬や、被害馬とのタイム差が少ない降着馬がもう少し増える可能性もあるだろう。

ライタープロフィール

浅田知広(あさだ ともひろ)

1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。

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