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第519回 「接戦に強い」騎手や種牡馬を考える

2011/8/8(月)

今年のプロ野球で最大の変化と言われているのが「統一球」の導入である。昨年まで多くの球団が使用していた「ラビットボール」「飛ぶボール」などと呼ばれるボールに比べて飛距離が出にくいとされるが、実際、ホームラン数や打率を大きく落とす好打者が数多くいる一方、投手の防御率は大幅に上昇。必然的に得点が入らず、ロースコアの接戦となる試合となって1点の重みが増すケースが目立っている。

このことを裏付けひとつの例が、8月8日現在、セントラル・リーグで首位に立つヤクルト・スワローズ。総得点267に対して、総失点は279。2位の阪神タイガースに5ゲーム差をつける独走態勢を築いているにもかかわらず、実はマイナスの得失点差となっているのだ。この数字が物語るのは、今年のヤクルトは負けるときは点差をつけられるが、競った展開になると非常に強いということ。実際、接戦になったときのヤクルトの試合結果を調べてみると、1点差ゲームで12勝8敗、そして2点差ゲームでは13勝1敗と驚異的な成績を残していることがわかる。点が入りにくく、ホームランなどによる大量得点も期待しにくくなっているだけに、接戦に強いという特徴がそのまま順位につながっているのだ。

競馬と関係のない話が長くなってしまって恐縮だが、今年のプロ野球から「競馬でも接戦に強い(または弱い)というファクターは、もっと重視されてもいいのではないか」ということを連想した。現在の競走馬を取り巻く状況を考えると、サンデーサイレンス直仔のようなズバ抜けた能力の持ち主は現れにくくなっている一方、その優秀なサンデーサイレンスの血を持つ馬が多くなったこともあり全体的な能力の平均値は高くなっている。となれば、今年のヤクルトのように「接戦に強い」ことが以前以上に大事になっていると考えるのは、それほどおかしなことではないはずだ。

そこで、2009年1月4日から2011年7月31日までの「1着馬と2着馬の着差が0秒1以下だったレース」において「1着馬と2着馬に騎乗していた騎手」と「1着馬と2着馬の種牡馬」についてのデータを調べてみることとした。つまり、「1着馬と2着馬が0秒1以下の接戦において、しっかり勝ってくれる騎手や種牡馬を探そう」というのが今回のテーマである。集計対象が1着馬と2着馬のみなので、もちろん勝率の平均は50%。50%を上回っていればいるほど、接戦に強い騎手や種牡馬と考えていいはずだ。データ分析にはJRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 芝・接戦レース・騎手別成績(勝率順)

騎手
1着数
2着数
勝率
M・デムーロ
23
10
69.7%
太宰啓介
28
17
62.2%
柴田善臣
60
41
59.4%
川田将雅
61
43
58.7%
北村友一
31
23
57.4%
四位洋文
44
33
57.1%
安藤勝己
59
45
56.7%
藤田伸二
68
53
56.2%
勝浦正樹
32
25
56.1%
横山典弘
69
54
56.1%
小牧太
51
41
55.4%
蛯名正義
82
67
55.0%
浜中俊
51
42
54.8%
ルメール
17
14
54.8%
丹内祐次
17
14
54.8%
内田博幸
73
63
53.7%
田辺裕信
25
23
52.1%
福永祐一
70
65
51.9%
酒井学
19
18
51.4%
武豊
57
55
50.9%
藤岡佑介
35
34
50.7%
北村宏司
50
49
50.5%
岩田康誠
68
68
50.0%
和田竜二
47
47
50.0%
秋山真一郎
38
38
50.0%
国分恭介
20
20
50.0%
鮫島良太
18
18
50.0%
三浦皇成
35
36
49.3%
丸田恭介
31
32
49.2%
石橋脩
26
27
49.1%
古川吉洋
24
25
49.0%
大野拓弥
20
21
48.8%
田中勝春
36
38
48.6%
松山弘平
16
17
48.5%
高倉稜
15
16
48.4%
丸山元気
28
30
48.3%
後藤浩輝
51
55
48.1%
松岡正海
64
70
47.8%
吉田隼人
33
38
46.5%
中舘英二
34
41
45.3%
佐藤哲三
28
37
43.1%
幸英明
39
52
42.9%
吉田豊
33
45
42.3%
藤岡康太
23
33
41.1%
木幡初広
15
22
40.5%
柴山雄一
12
18
40.0%
池添謙一
37
59
38.5%
上村洋行
17
28
37.8%
※該当30レース以上

2010/12/26 中山10R 有馬記念(G1)1着 1番 ヴィクトワールピサ

当初は、芝とダートを分けず純粋に接戦に強い騎手や種牡馬を探すのも手かと考えたのだが、データを出してみると「芝では接戦に強いが、ダートでは接戦にあまり強くない」などといった例が思った以上に多く見られた。また、実際の馬券攻略ということを考えても、芝とダートを分けたほうが効果的だろう。そこで、今回は芝とダートで分けてデータを見ていくこととする(それぞれ該当レースが30レース以上の騎手、種牡馬が対象)。

まず、芝の接戦レースで抜群の勝負強さを発揮してくれるのがミルコ・デムーロ騎手である。前述したとおり、「1着馬と2着馬の着差が0秒1以下だったレース(ここでは芝)」において「1着馬と2着馬に騎乗していた騎手」を勝率順に並べたのが表1になるわけだが、デムーロ騎手は勝率69.7%と頭ひとつ抜けた数字を残している。昨年末、朝日杯フューチュリティS(グランプリボスで2着リアルインパクトに0秒1差)、有馬記念(ヴィクトワールピサで2着ブエナビスタにタイム差なし)と2週連続で僅差のG1勝利を達成しているが、「芝レースの接戦に強い」M・デムーロ騎手の長所がいかんなく発揮されたレースと言うこともできるだろう。

芝の接戦で60%台の勝率をマークした唯一の日本人ジョッキーが太宰啓介騎手。例年のリーディング順では中堅的なポジションに位置する太宰騎手だけに特徴をつかみづらい面もあるかもしれないが、芝の接戦ではトップジョッキー以上にしっかり勝ちきってくれる。3連単などで太宰騎手の騎乗馬を1着にすべきかどうか迷ったときは、そのレースが芝なら1着欄にマークしたほうが好結果を生むことが多いはずだ。この太宰騎手が代表例だが、「接戦に強い=やっぱりリーディング上位騎手」という図式が成立するかといえば、決してそんなことはない。接戦に強いかどうかはリーディング順には現れない、また別の個性であると考えたほうがいいのではないだろうか。

■表2 ダート・接戦レース・騎手別成績(勝率順)

騎手
1着数
2着数
勝率
江田照男
20
12
62.5%
中舘英二
73
44
62.4%
上村洋行
18
12
60.0%
内田博幸
71
50
58.7%
秋山真一郎
24
17
58.5%
川田将雅
47
35
57.3%
丸山元気
35
27
56.5%
池添謙一
33
26
55.9%
柴田善臣
29
23
55.8%
武豊
48
39
55.2%
藤田伸二
43
35
55.1%
和田竜二
45
37
54.9%
蛯名正義
49
41
54.4%
田辺裕信
31
26
54.4%
佐藤哲三
21
18
53.8%
川須栄彦
16
14
53.3%
後藤浩輝
49
43
53.3%
小牧太
38
34
52.8%
丸田恭介
27
25
51.9%
北村宏司
48
45
51.6%
三浦皇成
35
34
50.7%
田中勝春
27
27
50.0%
松山弘平
21
21
50.0%
福永祐一
55
57
49.1%
吉田隼人
28
30
48.3%
吉田豊
35
38
47.9%
松岡正海
48
53
47.5%
横山典弘
43
48
47.3%
幸英明
40
46
46.5%
北村友一
20
23
46.5%
安藤勝己
28
33
45.9%
岩田康誠
50
60
45.5%
宮崎北斗
17
21
44.7%
浜中俊
31
40
43.7%
国分恭介
17
22
43.6%
古川吉洋
20
26
43.5%
勝浦正樹
22
30
42.3%
柴山雄一
13
18
41.9%
藤岡佑介
28
39
41.8%
藤岡康太
13
21
38.2%
四位洋文
12
21
36.4%
伊藤工真
12
28
30.0%
※該当30レース以上

表2はダートの接戦レースで1、2着になったときの騎手成績(勝率順)だが、上位陣の顔ぶれが芝とはガラリと変わっている点に注目したい。勝率60%以上をマークした騎手が3人いるが、いずれも芝では振るわなかった。ダート1位の江田照男騎手は、該当レース数が30に満たなかったので芝の表に載っていないが、芝では1着8回、2着20回と接戦を苦手としていた。ところが、ダートでは勝率62.5%でトップと一変。2位の中舘英二騎手も芝では45.3%、3位の上村洋行騎手も芝では37.8%と冴えなかったのだが、ダートの接戦では強さを発揮する。逆に、芝では接戦時の勝率が高いがダートではちょっと……、という四位洋文騎手や北村友一騎手などもいる。前述したように、騎手によっては芝とダートでまったく異なる傾向を見せている場合があるので、表1と表2を見比べて、芝とダートのどちらで接戦に強さを発揮するのか、しっかりと確認していただきたい。そんななか、芝で3位の勝率59.4%、ダートで9位の勝率55.8%をマークした柴田善臣騎手、芝で4位の勝率58.7%、ダートで6位の57.3%をマークした川田将雅騎手は、芝ダートを問わずに接戦に強い騎手と覚えておいて間違いないはずだ。

■表3 芝・接戦レース・種牡馬別成績(勝率順)

種牡馬
1着数
2着数
勝率
ファルブラヴ
30
14
68.2%
キングカメハメハ
126
79
61.5%
デュランダル
24
17
58.5%
ハーツクライ
21
16
56.8%
スウェプトオーヴァーボード
34
26
56.7%
アドマイヤベガ
30
24
55.6%
マヤノトップガン
26
21
55.3%
ディープインパクト
48
40
54.5%
ニューイングランド
16
14
53.3%
チーフベアハート
19
17
52.8%
ダンスインザダーク
86
77
52.8%
フレンチデピュティ
29
26
52.7%
サクラバクシンオー
91
83
52.3%
マーベラスサンデー
36
33
52.2%
マンハッタンカフェ
93
86
52.0%
ステイゴールド
75
71
51.4%
マイネルラヴ
22
21
51.2%
ホワイトマズル
32
31
50.8%
グラスワンダー
37
37
50.0%
フジキセキ
78
79
49.7%
タイキシャトル
42
43
49.4%
キングヘイロー
38
39
49.4%
タニノギムレット
53
55
49.1%
スペシャルウィーク
86
91
48.6%
ジャングルポケット
63
67
48.5%
シンボリクリスエス
67
74
47.5%
オペラハウス
20
23
46.5%
ネオユニヴァース
52
61
46.0%
アグネスデジタル
25
30
45.5%
サクラプレジデント
18
23
43.9%
クロフネ
47
62
43.1%
アグネスタキオン
75
99
43.1%
フサイチコンコルド
15
20
42.9%
ロージズインメイ
23
33
41.1%
ゼンノロブロイ
26
39
40.0%
ブライアンズタイム
13
20
39.4%
ゴールドアリュール
13
20
39.4%
バブルガムフェロー
11
20
35.5%
※該当30レース以上

2011/5/15 東京11R ヴィクトリアマイル(G1)1着 16番 アパパネ

今度は種牡馬を見ていこう。芝の接戦で勝率68.2%と優秀な数字を残しているのがファルブラヴ。これまでの種牡馬実績からは勝負弱い印象もあるファルブラヴだが、芝の接戦では実は意外な強さを発揮している。もっとも、その内容を見ると1着30回のうち19回までは未勝利戦と500万下でのもので、「下級クラスでは」という但し書きが必要な点には留意しておきたい。その点、2位のキングカメハメハは該当レースも上級クラスでの1着も多く、こちらは但し書きなしで文句なく芝の接戦に強い種牡馬と言えるだろう。代表産駒のアパパネはこれまでにG1を5勝しているが、そのすべてが2着馬とのタイム差が0秒1以下の接戦。芝レースでの競り合いに強いキングカメハメハの特徴を存分に受け継いだ名牝でもあるのだ。また、騎手の傾向と同じく、「リーディング上位種牡馬=接戦に強い」とは必ずしもなっていない。たとえば、アグネスタキオンは勝率43.1%と芝の接戦にはあまり強くない。アグネスタキオン産駒最大の武器といえば芝での瞬発力だが、その瞬発力を活かして一気に突き放してしまうようなレース展開を得意としていることが、接戦での意外な勝率の低さにつながっているのだろう。

■表4 ダート・接戦レース・種牡馬別成績(勝率順)

種牡馬
1着数
2着数
勝率
ジャングルポケット
29
18
61.7%
アグネスタキオン
40
25
61.5%
タイキシャトル
40
25
61.5%
スペシャルウィーク
40
25
61.5%
カリズマティック
17
13
56.7%
ネオユニヴァース
45
35
56.3%
ボストンハーバー
20
16
55.6%
クロフネ
102
84
54.8%
ワイルドラッシュ
44
38
53.7%
グラスワンダー
18
16
52.9%
ティンバーカントリー
18
16
52.9%
ブライアンズタイム
51
46
52.6%
コロナドズクエスト
23
21
52.3%
アフリート
38
35
52.1%
フレンチデピュティ
41
38
51.9%
サクラバクシンオー
38
38
50.0%
サウスヴィグラス
27
27
50.0%
キングヘイロー
19
19
50.0%
ゼンノロブロイ
18
18
50.0%
トワイニング
16
17
48.5%
ゴールドアリュール
47
50
48.5%
キングカメハメハ
70
77
47.6%
フジキセキ
57
63
47.5%
アグネスデジタル
32
36
47.1%
シンボリクリスエス
56
64
46.7%
タニノギムレット
22
26
45.8%
マンハッタンカフェ
43
51
45.7%
ダンスインザダーク
15
20
42.9%
マイネルラヴ
17
23
42.5%
マーベラスサンデー
20
28
41.7%
バブルガムフェロー
16
24
40.0%
プリサイスエンド
19
29
39.6%
スウェプトオーヴァーボード
24
39
38.1%
フォーティナイナー
15
30
33.3%
※該当30レース以上

最後にダートの接戦レースにおける種牡馬を見ていこう。1位ジャングルポケット、2位タイのアグネスタキオンスペシャルウィークはいずれも芝向きの印象だが、内容を確認すると下級戦での1着が多く、上級クラスでは1着も2着も数が少ない。下級戦なら能力の高さで競り勝ってしまう、と考えたほうがよさそうだ。おもしろいのが、ダートで強いミスタープロスペクター系の種牡馬が意外と振るわないこと。この系統で最上位のティンバーカントリーでも勝率52.9%どまりで、40%を切っている3頭の種牡馬、プリサイスエンド、スウェプトオーヴァーボード、フォーティナイナーはすべてミスタープロスペクター系の種牡馬だ。同じくミスタープロスペクター系で芝の接戦に強く、ダートでも活躍馬を出しているキングカメハメハも勝率50%には届かない。ミスタープロスペクター系の種牡馬はダート得意とはいえ、競り合いには決して強い系統ではないと判断して、大筋、間違いではないだろう。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。

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