データde出〜た
第331回 大物候補が続々! 東京・京都の中距離新馬戦を分析
2009/10/12(月)

昨年の10月26日、1着アンライバルド(皐月賞)、2着リーチザクラウン(ダービー2着)、3着ブエナビスタ(阪神JF、桜花賞、オークス)という大物3頭がいきなり激突した京都芝1800m戦は、すでに「伝説の新馬戦」とも呼ばれている。つまり、来年のクラシックをより深く楽しむためにも、この時期の新馬戦は絶対に見逃せないということ。また、ペーパーオーナーゲームを楽しむ方々にとっては、指名した評判馬のデビューが待ち遠しい時期でもあるだろう。
今回は東京・京都の2歳新馬戦のなかでも、特に大物候補が数多くデビューする芝1800m、2000mに絞って分析を行いたい。集計対象は04〜08年の5年間。データ分析にはJRA-VAN Data Lab. とTarget frontier JVを利用した。
■表1 東京・京都の2歳新馬戦(芝1800、2000m) 人気別成績
人気 |
着別度数 |
勝率 |
連対率 |
複勝率 |
単回率 |
複回率 |
1番人気 | 31- 14- 2- 14/ 61 |
50.8% |
73.8% |
77.0% |
105% |
91% |
2番人気 | 8- 13- 15- 25/ 61 |
13.1% |
34.4% |
59.0% |
48% |
82% |
3番人気 | 11- 15- 8- 27/ 61 |
18.0% |
42.6% |
55.7% |
99% |
90% |
4番人気 | 2- 7- 7- 45/ 61 |
3.3% |
14.8% |
26.2% |
23% |
61% |
5番人気 | 1- 2- 10- 48/ 61 |
1.6% |
4.9% |
21.3% |
22% |
53% |
6番人気 | 0- 3- 7- 51/ 61 |
0.0% |
4.9% |
16.4% |
0% |
58% |
7番人気 | 3- 3- 3- 52/ 61 |
4.9% |
9.8% |
14.8% |
91% |
66% |
8番人気 | 1- 1- 2- 54/ 58 |
1.7% |
3.4% |
6.9% |
35% |
49% |
9番人気 | 2- 2- 3- 44/ 51 |
3.9% |
7.8% |
13.7% |
284% |
111% |
10番人気 | 1- 0- 2- 41/ 44 |
2.3% |
2.3% |
6.8% |
155% |
102% |
11番人気 | 0- 0- 0- 33/ 33 |
0.0% |
0.0% |
0.0% |
0% |
0% |
12番人気 | 0- 0- 1- 23/ 24 |
0.0% |
0.0% |
4.2% |
0% |
72% |
13番人気 | 0- 0- 0- 19/ 19 |
0.0% |
0.0% |
0.0% |
0% |
0% |
14番人気 | 1- 0- 1- 14/ 16 |
6.3% |
6.3% |
12.5% |
967% |
297% |
15番人気 | 0- 1- 0- 12/ 13 |
0.0% |
7.7% |
7.7% |
0% |
229% |
16番人気 | 0- 0- 0- 11/ 11 |
0.0% |
0.0% |
0.0% |
0% |
0% |
17番人気 | 0- 0- 0- 10/ 10 |
0.0% |
0.0% |
0.0% |
0% |
0% |
18番人気 | 0- 0- 0- 8/ 8 |
0.0% |
0.0% |
0.0% |
0% |
0% |
まずは人気別の成績。表1のとおり1番人気が勝率50.8%と圧倒的に強い。中央競馬全レースにおける1番人気の勝率は例年32〜34%程度なので、それを大幅に上回っている。また、集計期間の全61レースの勝ち馬のうち、50頭までを1〜3番人気が占めている。とにかく上位人気に推されないことには、この条件の新馬戦はなかなか勝ち上がれない。
新馬戦のことをよく「未来のG1馬と未勝利馬が一緒に走るレース」というが、東京・京都の芝1800、2000mで行われる2歳新馬戦は、まさにその典型。注目馬の出走が多いこの条件の新馬戦では、ペーパーオーナーゲームなどの影響で2歳馬の情報が広く行きわたるようになっていることもあり、実力が人気に正しく反映されているようだ。
■表2 東京・京都の2歳新馬戦(芝1800、2000m) 騎手別成績
騎手 |
着別度数 |
勝率 |
連対率 |
複勝率 |
単回率 |
複回率 |
武豊 | 7- 4- 1-14/26 |
26.9% |
42.3% |
46.2% |
61% |
56% |
安藤勝己 | 4- 3- 2- 9/18 |
22.2% |
38.9% |
50.0% |
46% |
78% |
後藤浩輝 | 4- 2- 2-11/19 |
21.1% |
31.6% |
42.1% |
80% |
94% |
田中勝春 | 4- 2- 1-16/23 |
17.4% |
26.1% |
30.4% |
753% |
184% |
福永祐一 | 4- 1- 3-18/26 |
15.4% |
19.2% |
30.8% |
36% |
54% |
北村宏司 | 4- 1- 2- 9/16 |
25.0% |
31.3% |
43.8% |
172% |
105% |
藤岡佑介 | 4- 0- 2- 8/14 |
28.6% |
28.6% |
42.9% |
140% |
133% |
岩田康誠 | 3- 4- 4-11/22 |
13.6% |
31.8% |
50.0% |
75% |
89% |
柴田善臣 | 3- 4- 1-13/21 |
14.3% |
33.3% |
38.1% |
44% |
58% |
蛯名正義 | 3- 1- 4-11/19 |
15.8% |
21.1% |
42.1% |
79% |
106% |
横山典弘 | 2- 6- 2-11/21 |
9.5% |
38.1% |
47.6% |
127% |
91% |
吉田隼人 | 2- 2- 0- 7/11 |
18.2% |
36.4% |
36.4% |
190% |
77% |
和田竜二 | 1- 3- 1-14/19 |
5.3% |
21.1% |
26.3% |
20% |
117% |
藤田伸二 | 1- 2- 2-18/23 |
4.3% |
13.0% |
21.7% |
23% |
44% |
吉田豊 | 1- 1- 4-12/18 |
5.6% |
11.1% |
33.3% |
7% |
50% |
■表3 東京・京都の2歳新馬戦(芝1800、2000m) 調教師別成績
調教師 |
着別度数 |
勝率 |
連対率 |
複勝率 |
単回率 |
複回率 |
(美)藤沢和雄 | 5- 3- 1- 4/13 |
38.5% |
61.5% |
69.2% |
90% |
94% |
(栗)松田国英 | 5- 1- 0- 7/13 |
38.5% |
46.2% |
46.2% |
77% |
58% |
(美)小島太 | 5- 0- 0- 6/11 |
45.5% |
45.5% |
45.5% |
290% |
75% |
(栗)池江泰郎 | 3- 0- 2- 5/10 |
30.0% |
30.0% |
50.0% |
68% |
63% |
(栗)石坂正 | 2- 3- 0- 2/ 7 |
28.6% |
71.4% |
71.4% |
61% |
222% |
(栗)音無秀孝 | 2- 2- 0- 8/12 |
16.7% |
33.3% |
33.3% |
35% |
43% |
(美)堀宣行 | 1- 3- 0- 4/ 8 |
12.5% |
50.0% |
50.0% |
23% |
87% |
(栗)松田博資 | 1- 2- 2- 6/11 |
9.1% |
27.3% |
45.5% |
38% |
94% |
(美)大久保洋吉 | 1- 1- 2- 4/ 8 |
12.5% |
25.0% |
50.0% |
17% |
81% |
(栗)安田隆行 | 1- 0- 2- 4/ 7 |
14.3% |
14.3% |
42.9% |
54% |
201% |
(栗)友道康夫 | 1- 0- 0- 6/ 7 |
14.3% |
14.3% |
14.3% |
108% |
24% |
(栗)高橋隆 | 1- 0- 0- 8/ 9 |
11.1% |
11.1% |
11.1% |
1212% |
152% |
(栗)角居勝彦 | 0- 3- 2- 5/10 |
0.0% |
30.0% |
50.0% |
0% |
63% |
(栗)中村均 | 0- 3- 2- 4/ 9 |
0.0% |
33.3% |
55.6% |
0% |
87% |
(栗)橋口弘次郎 | 0- 3- 0- 8/11 |
0.0% |
27.3% |
27.3% |
0% |
33% |
次に騎手別成績。どの馬にとってもはじめてのレース体験となる新馬戦、勝つことはもちろん大事だが、その後のことを考えれば学習という面も同じぐらい重要だ。そこで頼られるのがベテランジョッキー。最多勝はやはり武豊騎手で、7勝をあげている。陣営としても、期待馬のデビュー戦は第一人者に、ということなのだろう。
続いて6人が4勝で並んでいるが、注目したいのが若手の藤岡佑介騎手。勝率28.6%は、武豊騎手をも上回る好成績だ。実父である藤岡健一厩舎、および池江泰郎、池江泰寿の親子厩舎の馬に騎乗したときは【4.0.0.1】と確勝に近い成績を残している。
ちなみに、今年の騎手リーディングを走る内田博幸騎手は【0.1.0.7】。意外とも思える数字が残っている。
厩舎についてはさほどサンプル数がないながらも、リーディング争い常連の厩舎がきっちり勝ち星をあげている。トップは5勝で3厩舎が並んでいるが、小島太厩舎の勝率45.5%が目を引く。
■表4 東京・京都の2歳新馬戦(芝1800、2000m) 種牡馬別成績
種牡馬 |
着別度数 |
勝率 |
連対率 |
複勝率 |
単回率 |
複回率 |
サンデーサイレンス | 8- 5- 2- 9/24 |
33.3% |
54.2% |
62.5% |
60% |
85% |
アグネスタキオン | 6- 0- 4-12/22 |
27.3% |
27.3% |
45.5% |
68% |
95% |
ダンスインザダーク | 3- 6- 0-38/47 |
6.4% |
19.1% |
19.1% |
24% |
36% |
スペシャルウィーク | 3- 3- 4-26/36 |
8.3% |
16.7% |
27.8% |
30% |
90% |
マンハッタンカフェ | 3- 2- 4-18/27 |
11.1% |
18.5% |
33.3% |
68% |
68% |
ネオユニヴァース | 2- 3- 1- 5/11 |
18.2% |
45.5% |
54.5% |
105% |
174% |
ホワイトマズル | 2- 0- 2-12/16 |
12.5% |
12.5% |
25.0% |
265% |
117% |
ジャングルポケット | 2- 0- 1-11/14 |
14.3% |
14.3% |
21.4% |
55% |
35% |
ブライアンズタイム | 1- 6- 0- 9/16 |
6.3% |
43.8% |
43.8% |
16% |
88% |
シンボリクリスエス | 1- 3- 5-15/24 |
4.2% |
16.7% |
37.5% |
17% |
125% |
アドマイヤベガ | 1- 3- 2-16/22 |
4.5% |
18.2% |
27.3% |
11% |
110% |
クロフネ | 1- 2- 0- 7/10 |
10.0% |
30.0% |
30.0% |
17% |
80% |
フジキセキ | 1- 1- 4- 6/12 |
8.3% |
16.7% |
50.0% |
13% |
81% |
メジロライアン | 1- 1- 1-10/13 |
7.7% |
15.4% |
23.1% |
106% |
46% |
マヤノトップガン | 1- 1- 1- 9/12 |
8.3% |
16.7% |
25.0% |
113% |
60% |
新馬戦の予想ファクターで重要となる血統。2歳戦でも10、11月という時期、そして芝の1800mや2000mという条件になると、仕上がりの早さやスピードを武器とする種牡馬の顔ぶれは見当たらず、いわゆるサンデーサイレンス系が上位を占めている。
集計をとってみて、サンデーサイレンス自身の偉大さに改めて驚かされるが、最良の後継種牡馬と言われたアグネスタキオンも勝率27.3%、複勝率45.5%と父に見劣りしないだけの成績を残している。急逝が惜しまれるが、今年の2歳を含めて4世代の産駒が残されている。東京・京都芝1800、2000mの2歳新馬戦では、まだまだ中心的な存在になりそうだ。
勝率などの好走率では、産駒が昨年デビューしたばかりのネオユニヴァースも優秀。複勝率ではアグネスタキオンを凌駕している。また、母系にニジンスキーの血を抱えるダンスインザダーク、スペシャルウィークはやや勝ち味の遅さを見せるところがあるので注意が必要だ。
■表5 東京・京都の2歳新馬戦(芝1800、2000m)勝ち上がり馬 2戦目での成績
前走着差 |
着別度数 |
勝率 |
連対率 |
複勝率 |
単回率 |
複回率 |
勝1.0〜1.9秒 | 0- 0- 1- 0/ 1 |
0.0% |
0.0% |
100.0% |
0% |
210% |
勝0.6〜0.9秒 | 1- 2- 0- 1/ 4 |
25.0% |
75.0% |
75.0% |
52% |
92% |
勝0.3〜0.5秒 | 1- 2- 2- 5/10 |
10.0% |
30.0% |
50.0% |
22% |
77% |
勝0.1〜0.2秒 | 3- 3- 6-17/29 |
10.3% |
20.7% |
41.4% |
30% |
76% |
勝0.0秒 | 1- 2- 0-12/15 |
6.7% |
20.0% |
20.0% |
86% |
39% |
東京・京都芝1800、2000mの2歳新馬戦を勝ち上がった馬がすべてクラシック有力馬に数えられるかといえば、残念ながらそんなことはない。ここからG1馬にまで駆け上がる馬もいれば、下級条件戦に安住してしまう馬もいるのが実際のところだ。
そこで最後に、「どんな勝ち方をした馬が強いの?」という見極め方を、「タイム差」というファクターを用いて分析してみたい。
東京・京都芝1800、2000mの2歳新馬戦を勝ち上がった馬が次走でどんな成績を収めているのかを、新馬戦で2着につけたタイム差によって区分したのが表5だ。
これを見れば、2着に大きなタイム差をつけて勝ち上がった馬ほど2戦目でも好成績を収めている傾向があるのがわかるだろう。複勝率は完全にその形だし、勝率や連対率もほぼ同様になっている。「勝1.0〜1.9秒」の1頭が3着に敗れているといっても、これは2戦目ながら阪神ジュヴェナイルフィリーズに挑戦したフサイチパンドラのものだから、むしろ価値が高い。
細かく言えば、「東京・京都芝1800、2000mの2歳新馬戦で、2着に0.5秒以上の差をつけて勝ち上がった馬」は、かなりの有力馬である可能性が高い。04〜08年の5年間でこれに該当するのが6頭いた。
■表6 東京・京都の2歳新馬戦(芝1800、2000m)を0.5秒差以上で勝った馬
馬名 |
前走条件(着差) |
3歳春までの主な戦績 |
ヴァーミリアン | 京都芝1800m(0.6秒) | ラジオたんぱ杯2歳S1着 |
レースパイロット | 京都芝1800m(0.5秒) | フローラS2着 |
フサイチパンドラ | 京都芝1800m(1.0秒) | オークス2着 |
フサイチホウオー | 東京芝1800m(0.6秒) | 共同通信杯1着 |
ヴィクトリー | 京都芝1800m(0.9秒) | 皐月賞1着 |
ダノンファントム | 東京芝1800m(0.6秒) |
順調さを欠いて3歳春までに2戦しかできなかったダノンファントムを除く5頭は、3歳春の段階ですくなくとも重賞連対の成績を残し、フサイチパンドラとヴァーミリアンはその後G1馬にまで昇りつめている。
一方、「東京・京都芝1800、2000mの2歳新馬戦を勝ち上がったものの、2着馬とタイム差がなかった」12頭を確認すると、のちの重賞勝ち馬は1頭もおらず。重賞で連対したことがあるのもダークメッセージ1頭だけだ(09年10月11日現在)。
東京・京都芝1800、2000mの2歳新馬戦を使ってくるような馬は、陣営にとっての期待馬であることがほとんど。そんな精鋭揃いのレースで0.5秒差以上のタイムをつけて勝つような馬が、相当な能力を秘めていることは間違いない。このことをしっかり覚えておけば、06年オークスで前走桜花賞の大敗で5番人気に支持を落としながら2着に巻き返したフサイチパンドラや、07年皐月賞で7番人気ながら鮮やかに逃げ切ったヴィクトリーのような好配当にも近づけるはずだ。
ちなみに、今年の4回京都開幕週の芝1800m戦で、「東京・京都芝1800、2000mの2歳新馬戦で、2着に0.5秒以上の差をつけて勝ち上がった馬」に該当する馬がいきなり現れた。
08年札幌記念など重賞3勝をあげているタスカータソルテの全妹にあたるテイラーバートンがその馬だ。本格的な追い切りは一本だけという状態で京都芝1800mの新馬戦に登場しながら、2着に0.8秒の差をつけて楽々と逃げ切ってしまった。レースぶりにはやや荒削りな面も残されているが、順調でさえあれば3歳春までのどこかで大きな仕事をすることを、過去のデータは教えている。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。