データde出〜た
第283回 この時期の4歳馬は「買い」なのか?
2009/4/27(月)
春のG1まっただ中だが、夏へ向け早くも2歳馬の話題も耳に入る時期になってきた。夏といえば注目はその2歳戦と、もうひとつはクラス替え。降級した4歳馬が大活躍を見せる季節になる。ではその直前、今の時期の年齢別成績はいったいどうなのだろうか。漠然と「4歳馬が力をつけてくる時期」という印象こそあるが、データではどんな結果が出ているのか調べてみたい。調査には、JRA-VAN Data Lab. とTarget frontier JVを利用した。なお、天皇賞(春)の分析は木曜掲載分で行う予定なのでお待ちいただきたい。
■表1 古馬平地競走の年齢別成績(07〜08年)
年齢 |
4歳以上(全レース) |
4歳以上・5〜6月(クラス替え前) |
||||
着別度数 |
勝率 |
連率 |
着別度数 |
勝率 |
連率 |
|
4歳 |
629- 630- 555- 6259/ 8073 |
7.8% |
15.6% |
165- 168- 141-1569/2043 |
8.1% |
16.3% |
5歳 |
453- 436- 462- 4787/ 6138 |
7.4% |
14.5% |
103- 88- 103-1143/1437 |
7.2% |
13.3% |
6歳 |
160- 178- 216- 2722/ 3276 |
4.9% |
10.3% |
29- 38- 43- 561/ 671 |
4.3% |
10.0% |
7歳以上 |
75- 73- 84- 2008/ 2240 |
3.3% |
6.6% |
9- 12- 19- 403/ 443 |
2.0% |
4.7% |
まず、1月から6月までの「4歳以上」の平地競走全体と、現在の時期(=5、6月)の年齢別成績を比較からしてみたい。2006年夏に条件戦のクラス分けルールが変更されているため、表2以降も含め調査対象は07〜08年としている。
「4歳以上」の全体では、4歳が5歳の勝率、連対率をわずかに上回ってトップの数字。しかし連対率にして1%ほどの差で、「4歳優勢」とはまでは言い難い。しかし現在の時期にかぎると4、5歳の連対率差が3%ほどになり、冒頭の「4歳馬が力をつけてくる」とした印象に間違いはなさそうだ。
■表2 古馬500万条件の年齢別成績(07〜08年)
年齢 |
4歳以上・3〜4月 |
4歳以上・5〜6月 |
||||
着別度数 |
勝率 |
連率 |
着別度数 |
勝率 |
連率 |
|
4歳 |
160- 169- 142-1713/2184 |
7.3% |
15.1% |
96- 100- 86-1026/1308 |
7.3% |
15.0% |
5歳 |
91- 94- 99-1017/1301 |
7.0% |
14.2% |
46- 37- 51- 528/ 662 |
6.9% |
12.5% |
6歳 |
28- 19- 33- 393/ 473 |
5.9% |
9.9% |
8- 14- 9- 152/ 183 |
4.4% |
12.0% |
7歳以上 |
7- 4- 12- 147/ 170 |
4.1% |
6.5% |
1- 0- 5- 76/ 82 |
1.2% |
1.2% |
ここからは、直前の3〜4月(左)と現在の時期(5〜6月・右)の比較を、下級条件から順に見てみたい。まず500万条件は表1同様、今の時期は4歳と5歳の差が広がる傾向にある。ただ、4歳の勝率、連対率は3〜4月からほぼ変化がなく、5歳がやや成績を落とす形で差がついているのは、4歳の成績が伸びている表1とは少々異なる。
もっとも、勝ち馬や連対馬の実数を見てわかる通り、3〜4月の段階から500万条件の好走馬は4歳馬が中心で、5〜6月では連対馬の約3分の2が4歳馬。出走数も多いため「率」はさほど高くないが、実際の感覚としてはその「率」以上に「4歳馬ばかり来ている」印象が強いに違いない。
また、これだけ出走数が多いと「上位独占」という形で4歳馬同士の「つぶし合い」もあるはず。まず「4歳注目」という形で間違いはないもの、これほどの占有率では年齢を取捨の決め手とはしづらく、年齢以外のファクターを探す必要がありそうだ。
■表3 古馬1000万条件の年齢別成績(07〜08年)
年齢 |
4歳以上・3〜4月 |
4歳以上・5〜6月 |
||||
着別度数 |
勝率 |
連率 |
着別度数 |
勝率 |
連率 |
|
4歳 |
67- 69- 67- 628/ 831 |
8.1% |
16.4% |
50- 54- 37- 359/ 500 |
10.0% |
20.8% |
5歳 |
61- 58- 51- 586/ 756 |
8.1% |
15.7% |
36- 32- 38- 428/ 534 |
6.7% |
12.7% |
6歳 |
27- 28- 37- 410/ 502 |
5.4% |
11.0% |
12- 14- 21- 250/ 297 |
4.0% |
8.8% |
7歳以上 |
9- 9- 9- 322/ 349 |
2.6% |
5.2% |
5- 3- 7- 176/ 191 |
2.6% |
4.2% |
続いて1000万条件では、5〜6月になると明らかに4歳馬の勝率、連対率がアップしている。5歳、6歳は勝率、連対率ともに落とし、7歳以上も勝率こそ変わらないものの連対率はダウン。3〜4月に比べ率を伸ばしているのは4歳だけで、春後半の1000万条件は春前半以上に4歳馬に注目したい。
また、表2の500万条件では出走数も4歳が圧倒的に多かったが、1000万条件になると4歳、5歳の出走数はほぼ五分。数頭で取捨に迷った際には、500万に比べ「年齢」を最後の決め手としやすい条件とも言えるだろう。
■表4 古馬1600万条件の年齢別成績(07〜08年)
年齢 |
4歳以上・3〜4月 |
4歳以上・5〜6月 |
||||
着別度数 |
勝率 |
連率 |
着別度数 |
勝率 |
連率 |
|
4歳 |
20- 23- 18-162/223 |
9.0% |
19.3% |
13- 10- 16-134/173 |
7.5% |
13.3% |
5歳 |
19- 21- 23-201/264 |
7.2% |
15.2% |
15- 16- 10-154/195 |
7.7% |
15.9% |
6歳 |
12- 6- 10-185/213 |
5.6% |
8.5% |
7- 8- 9-112/136 |
5.1% |
11.0% |
7歳以上 |
4- 6- 4-133/147 |
2.7% |
6.8% |
3- 4- 3- 94/104 |
2.9% |
6.7% |
1600万条件になると、500万や1000万とは様相が異なり、この時期は5歳馬が勝率、連対率ともにトップとなる。ただ、3〜4月は4歳馬の成績が良く、1600万では「まだ」4歳馬が通用しないということではない。この時期までに1600万で通用するほどの力を持った4歳馬は、既に多くが勝ち上がってしまった、などという可能性もありそうだ。また、1位ではないというだけで5歳とは僅差。「消し」と勘違いしないようにしたい。
■表5 古馬オープン・重賞の年齢別成績(07〜08年)
年齢 | 4歳以上・3〜4月 | 4歳以上・5〜6月 | ||||
着別度数 | 勝率 | 連率 | 着別度数 | 勝率 | 連率 | |
4歳 |
16- 17- 10-142/185 |
8.6% |
17.8% |
6- 4- 2- 50/ 62 |
9.7% |
16.1% |
5歳 |
17- 12- 22-130/181 |
9.4% |
16.0% |
6- 3- 4- 33/ 46 |
13.0% |
19.6% |
6歳 |
7- 13- 14-138/172 |
4.1% |
11.6% |
2- 2- 4- 47/ 55 |
3.6% |
7.3% |
7歳以上 |
12- 10- 6-207/235 |
5.1% |
9.4% |
0- 5- 4- 57/ 66 |
0.0% |
7.6% |

そしてオープン・重賞は、1600万条件同様にトップは5歳。4歳との差は1600万条件以上に開いている。ただ、こちらも3〜4月の連対率では4歳が上位。また、勝率9.7%、連対率16.1%という数字そのものは悪くない。
なお、オープンや重賞になると、条件戦と違って「過去10年の傾向」も参考にしやすくなる。たとえば6月に行われる安田記念では過去10年、6歳が【5.0.5.33】、4歳が【2.5.2.45】に対し、表5では好成績の5歳は【1.3.3.44】止まり。昨年は4歳のウオッカ→7歳のアルマダ→6歳のエイシンドーバーの順で決着している。また、今週行われる春の天皇賞(表は木曜分で掲載予定)は4歳馬が【7.4.3.35】で連対馬の半数以上。一応「5歳優位」という表5の傾向を頭に入れつつも、個々のレースの特徴も見逃さないようにしたいものだ。
以上、500万条件からオープン・重賞まで見てみたが、今の時期は条件によって単純に「4歳優位」とは言い切れないことがわかる。500万条件では「率」はさほど高くないが、出走数が多いこともあって勝ち馬や連対馬の約3分の2が4歳馬。1000万条件では好走馬の占有率こそ下がるものの、勝率や連対率は最も良い。そして1600万条件以上では5歳馬への注目も欠かせない、といったところだろうか。特に「4歳」に注目するなら、「馬券作戦」にもっとも生かしやすいのは表3の本文でも触れた通り1000万条件だろう。
■表6 4歳馬の条件別芝・ダート成績(07〜08年・5〜6月)
年齢 |
芝 |
ダート |
||||
着別度数 |
勝率 |
連率 |
着別度数 |
勝率 |
連率 |
|
500万 |
61- 67- 56-623/807 |
7.6% |
15.9% |
35- 33- 30-403/501 |
7.0% |
13.6% |
1000万 |
26- 36- 25-216/303 |
8.6% |
20.5% |
24- 18- 12-143/197 |
12.2% |
21.3% |
1600万 |
9- 8- 11- 90/118 |
7.6% |
14.4% |
4- 2- 5-44/55 |
7.3% |
10.9% |
OP・重賞 |
4- 4- 2-40/50 |
8.0% |
16.0% |
2- 0- 0-10/12 |
16.7% |
16.7% |
最後に、現在の時期の4歳馬について、芝ダート別の成績も掲載しておきたい。全体的に芝が多少良い傾向にあるが、好成績の1000万条件ではダートが芝を上回る。もっとも、芝も問題なく「好成績」と言える数字で、1000万条件の4歳馬は芝ダート問わずに注目だ。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。