データde出〜た
第270回 ブエナビスタへの挑戦権を手にするのは!?
2009/3/12(木)
今週末は東西で4重賞が組まれている。土曜日は阪神で阪神スプリングジャンプ、中京で中京記念。日曜日は中山で中山牝馬S、阪神でフィリーズレビューが行われる。今回は桜花賞トライアルのフィリーズレビューを占ってみたい。先週のチューリップ賞では、2歳女王のブエナビスタが休み明けで快勝し、2009年を好スタート。本番の桜花賞ではブエナビスタ一色のムードが漂うが、残りのトライアル戦で同馬を脅かすような新星の誕生はあるだろうか。データは過去10年のものを参考。データの分析にはJRA-VAN Data Lab. とTarget frontier JVを利用した。
■表1 前走阪神JF組のフィリーズレビューでの成績(過去10年)
年 |
着順 |
人気 |
馬名 |
阪神JF |
重賞連対実績 |
08年 | 10 |
1 |
エイムアットビップ | 3着 |
ファンタジーS2着 |
07年 | 1 |
1 |
アストンマーチャン | 2着 |
小倉2歳S1着 |
7 |
2 |
ルミナスハーバー | 3着 |
||
06年 | 4 |
2 |
アルーリングボイス | 14着 |
小倉2歳S1着 |
05年 | 1 |
1 |
ラインクラフト | 3着 |
ファンタジーS1着 |
6 |
8 |
モンローブロンド | 13着 |
ファンタジーS2着 | |
04年 | 3 |
5 |
フィーユドレーヴ | 12着 |
函館2歳S1着 |
13 |
4 |
コンコルディア | 3着 |
||
03年 | 1 |
1 |
ヤマカツリリー | 2着 |
|
6 |
13 |
マイネラベンダー | 12着 |
||
11 |
6 |
ワナ | 10着 |
新潟2歳S1着 | |
13 |
4 |
トーホウアスカ | 16着 |
函館2歳S2着 | |
02年 | 3 |
1 |
キタサンヒボタン | 4着 |
ファンタジーS1着 |
01年 | 13 |
8 |
タシロスプリング | 15着 |
ファンタジーS1着 |
00年 | 12 |
5 |
エンゼルカロ | 9着 |
函館3歳S1着 |
13 |
14 |
グロウリボン | 13着 |
ファンタジーS2着 | |
99年 | 11 |
2 |
コウエイロマン | 12着 |
小倉3歳S1着 |
牝馬クラシック戦線を展望する上で重要となるのが昨年末に行われた阪神JF。先週のチューリップ賞を勝ったブエナビスタは同レース1着からのローテーションであった。そこで、まずは本競走における前走阪神JF組の成績もチェックしておこう。上の表1は過去10年の前走阪神JF組のフィリーズレビューでの成績。計17頭が出走して【3.0.2.12】という成績だ。注目したいのはフィリーズレビュー当日の人気で、1番人気に支持された馬は好成績を残している。昨年のエイムアットビップが10着に沈んだのを除けば、アストンマーチャンら3勝をマーク。キタサンヒボタンの3着も一本ある。一方、当日2番人気以下だった馬の成績は散々。フィーユドレーヴの3着が1回あるだけで、2けた着順に大敗することもめずらしくない。阪神JF以前に重賞で連対実績があった馬も多いのだが、結果は意外なほど良くない。
■表2 主な1400m未経験馬のフィリーズレビューでの成績
年 |
着順 |
人気 |
馬名 |
前走成績 |
06年 | 12 |
1 |
サンヴィクトワール | エルフィンS1着 |
05年 | 3 |
3 |
エアメサイア | エルフィンS1着 |
4 |
2 |
ディアデラノビア | チューリップ賞7着 |
ついでに、もう一つ本競走で危険と思われるパターンを明示しておこう。昨年浅田氏が担当した【第166回 牝馬路線も混戦模様? フィリーズレビューを分析する】でも指摘されていたように、本競走では1400m以下の経験の有無が非常に重要になってくる。過去10年で3着以内に好走した全30頭のうち29頭に、1400m以下(芝・ダート問わず)の経験があった。この実績がなくて好走したのは05年エアメサイア1頭のみ(表2参照)で、しかも3着だった。同様に1400m以下の経験がなかった06年1番人気のサンヴィクトワールは12着に惨敗、05年のディアデラノビアは4着止まりだった。マイル以上のレースしか経験がない馬が、1400mの忙しいペースに対応しきれずに終わる危険があることは頭に入れておいた方がいいだろう。
■表3 前走エルフィンS組のフィリーズレビュー好走馬
年 |
着順 |
人気 |
馬名 |
前走成績(着差) |
勝利数 |
備考 |
08年 | 1 |
11 |
マイネレーツェル | エルフィンS4着(0.6) | 2 |
フェアリーS3着、小倉2歳S3着 |
3 |
4 |
レジネッタ | エルフィンS3着(0.6) | 2 |
||
07年 | 3 |
5 |
ハギノルチェーレ | エルフィンS3着(0.6) | 2 |
|
06年 | 3 |
5 |
エイシンアモーレ | エルフィンS12着(2.2) | 2 |
紅梅S3着 |
05年 | 2 |
7 |
デアリングハート | エルフィンS6着(0.5) | 1 |
紅梅S3着 |
3 |
3 |
エアメサイア | エルフィンS1着(-0.0) | 2 |
||
04年 | 2 |
1 |
マルターズヒート | エルフィンS1着(-0.2) | 3 |
フェアリーS1着 |
02年 | 2 |
5 |
キョウワノコイビト | エルフィンS4着(0.3) | 1 |
紅梅S3着 |
00年 | 1 |
1 |
サイコーキララ | エルフィンS1着(-0.1) | 3 |
紅梅S1着 |
次に阪神JFと並んで前走出走例が多いのがエルフィンS。上の表3では前走エルフィンS組のフィリーズレビュー好走馬を示した。過去10年で9頭の好走例がある。全般的にエルフィンSで掲示板に乗っているのが第一の前提となってくるが、掲示板外からの巻き返しも2頭いる。これまでの勝利数を調べると、2勝以上挙げている馬が9頭中7頭で、これもポイントとなりそう。そして、過去に芝1400m以下のOPクラスのレースで3着以内に入っていた馬が5頭。本競走で連対を果たした5頭は、すべてこの実績を持っており、ここで連対を狙うならば、芝1400m以下のOPクラスのレースで3着以内の実績は非常に重要と思われる。
■表4 表1、表3以外のフィリーズレビュー好走馬
年 |
着順 |
人気 |
馬名 |
前走成績 |
その他の勝ち鞍など |
08年 | 2 |
7 |
ベストオブミー | 若菜賞1着 | 函館ダ1000m(新馬) |
07年 | 2 |
10 |
アマノチェリーラン | 若菜賞1着 | 小倉芝1200m(未勝利) |
06年 | 1 |
3 |
ダイワパッション | フェアリーS1着 | 中山芝1200m(黒松賞)ほか |
2 |
6 |
ユメノオーラ | 雪割草特別1着 | 阪神芝1400m(未勝利) | |
04年 | 1 |
1 |
ムーヴオブサンデー | 萌黄賞1着 | 小倉芝1200m(新馬) |
03年 | 3 |
2 |
レイナワルツ | 500万1着(阪神芝1200m) | 京都ダ1400m(新馬) |
02年 | 1 |
7 |
サクセスビューティ | クイーンC13着 | 菜の花賞1着 |
01年 | 1 |
6 |
ローズバド | 500万10着 | 阪神芝1600m(未勝利) |
2 |
1 |
ハッピーパス | クイーンC2着 | 紅梅S3着 | |
3 |
5 |
テンザンデザート | クイーンC9着 | 菜の花賞1着 | |
00年 | 2 |
2 |
シルクプリマドンナ | 500万1着(京都ダ1200m) | 京都ダ1800m(新馬) |
3 |
3 |
エアトゥーレ | クイーンC7着 | ||
99年 | 1 |
1 |
フサイチエアデール | シンザン記念1着 | 阪神芝1400m(未勝利) |
2 |
5 |
ステファニーチャン | フローラS1着(中山芝1200m) | 函館芝1000m(新馬) | |
3 |
8 |
フォルナリーナ | 飛梅賞7着 | 阪神芝1600m(3着・500万) |
最後にここまでに登場した表1、表3以外のフィリーズレビュー好走馬を見ていこう(表4参照)。前走成績に基づくと、500万クラス以上で1着の馬か、その他という感じで大きく2つに分けられる。前者のパターンは該当馬15頭中9頭があてはまる。問題は前走500万クラス以上で1着といっても、対象レースがバラバラで的を絞りにくいことだ。特に近2年はベストオブミー、アマノチェリーランと、前走ダート(ともに若菜賞だが)を勝っていた馬が絡んで波乱を演出している。00年2着のシルクプリマドンナも、ここまではダートのみ2戦2勝という成績だった。しかし、前走ダートを使われていた馬のトータル成績(過去10年)は、【0.3.1.41】。複勝率で見てもわずか8.9%に過ぎず、そうめったに狙えるパターンでもない。
前走500万クラス以上で1着以外では、クイーンC敗退からの巻き返しが4頭いる。01年ハッピーパスのように同レースで好走していれば素直に狙えそうだが、その他の馬に関しては、やはりそれ以前の実績をチェックする必要がありそう。02年1着のサクセスビューティなどのように、過去にOPクラスの芝1400m以下で勝っているか、もしくはローズバドやフォルナリーナのように阪神芝コースでめぼしい好走実績があるかどうか。この点に注目してみるのがいいだろう。
【結論】
それでは今年のフィリーズレビューを占っていこう。先週のチューリップ賞がフルゲート割れしたせいか本競走へのエントリーがかなり多くなっており、4つのパターンにわけて考えた。
■表5 今年のフィリーズレビュー出走予定馬(1)
馬名 |
前走成績 |
重賞連対実績 |
距離 |
ショウナンカッサイ | 阪神JF4着 | ○ |
|
レディルージュ | 阪神JF10着 | ○ |
|
ワンカラット | 阪神JF12着 | ファンタジーS2着 | ○ |
まず前走阪神JFからの直行馬(表5参照)。取捨を当日の人気に委ねなければいけないのは心苦しいが、ショウナンカッサイ、レディルージュ、ワンカラットが1番人気に支持されるかは微妙。そうなると休み明けが響き、連対までは至らないと予想してみる。
■表6 今年のフィリーズレビュー出走予定馬(2)
馬名 |
前走成績(着差) |
備考 |
距離 |
勝利数 |
アイアムカミノマゴ | エルフィンS4着(0.2) | ○ |
2 |
|
アイレンベルク | エルフィンS5着(0.4) | ○ |
2 |
|
アディアフォーン | エルフィンS8着(1.2) | ファンタジーS3着 | ○ |
2 |

次に前走エルフィンS組(表6参照)。同レースで3着以内に好走した馬はいないものの、すでに2勝をマークし、1400m以下の距離を経験している。ただし、いずれも2走前に紅梅Sに出走し4着以下の成績で、OPクラスの実績という点でやや弱い。ファンタジーS3着の実績があるアディアフォーンの巻き返しがあるかどうか。
■表7 今年のフィリーズレビュー出走予定馬(3)
馬名 |
前走成績 |
備考 |
|
アンジュアイル | クイーンC5着 | ○ | |
グローリールピナス | クイーンC6着 | さざんかS2着 | ○ |
コウエイハート | 紅梅S1着 | 小倉芝1200m(ひまわり賞) | ○ |
スイリンカ | こぶし賞1着 | 京都芝1600m(新馬) | × |
スペシャルクイン | 500万1着(阪神ダ1200m) | 小倉ダ1000m(未勝利) | ○ |
パールシャドウ | クイーンC8着 | × | |
フキラウソング | ヒヤシンスS10着 | ○ | |
ミクロコスモス | クイーンC4着 | 阪神芝1600m(1着・500万) | × |
ラヴェリータ | ヒヤシンスS3着 | ○ |

すでに900万円以上の賞金を稼いでいる別路線組は上の表7。前走500万クラス以上のレースで1着の馬はコウエイハート、スイリンカ、スペシャルクインの3頭。そのうちスイリンカはデビューから2戦2勝だが、いずれもマイル戦。1400m以下の経験がないのがネック。スペシャルクインは2連勝中だが、勝ち鞍はダートのみなので、紅梅S1着のコウエイハートを上位に取ることにする。
阪神JF3着馬で当日1番人気が予想されるミクロコスモスだが、過去4戦はいずれもマイル戦。1400m以下の経験がないので、ここでは推奨できない。それならばむしろ前走クイーンC6着だが、OP阪神芝1400mのさざんかSで2着の実績があるグローリールピナスの巻き返しがあるかも。あとは、過去にはないローテーだが、前走ダートのヒヤシンスSを使ったフキラウソング、ラヴェリータの激走があっても驚けない。
■表8 今年のフィリーズレビュー出走予定馬(4)
馬名 |
前走成績 |
アンショプレニスト | 春菜賞3着 |
エイシンフェアリー | 萌黄賞8着 |
オーシャンロード | 未勝利1着 |
キリコンサート | 萌黄賞5着 |
クイックメール | 500万6着 |
コパノマユチャン | こぶし賞7着 |
コルサージュ | 紅梅賞11着 |
シゲルクニミヤマ | 未勝利1着 |
ジョーゲルダ | 500万2着 |
シルクナデシコ | 500万4着 |
スノーマジック | 500万2着 |
セキサンダンスイン | 未勝利1着 |
チャームポット | エルフィンS3着 |
デセール | こぶし賞2着 |
ハイフィールド | 未勝利1着 |
ヒカルアマランサス | 新馬1着 |
ホーマンライズ | 未勝利1着 |
メモリーパフィア | こぶし賞8着 |
メリュジーヌ | 未勝利1着 |
リーチコンセンサス | こぶし賞11着 |
レイクナーバ | 新馬1着 |
ワイズドリーム | 未勝利1着 |
賞金400万円の出走登録馬は上の表8にまとめた。現時点ではかなり狭き門の抽選となりそうだが、前走エルフィンS3着、その前の紅梅Sが2着のチャームポットが出てこられるようならば注目してみたい。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
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