データde出〜た
第256回 有馬記念組が強力な今年のアメリカJCC
2009/1/22(木)
アメリカJCCは07年の覇者マツリダゴッホが同年の有馬記念を制し、昨年の勝ち馬エアシェイディも同年の有馬記念で3着に好走するなど、2年連続でアメリカJCCの勝ち馬が有馬記念で好走している。アメリカJCCと有馬記念は同じ中山コースで、距離も300mしか違わないため、関係性が深いのだろう。そのため当レースは年末のグランプリまで注目したいレースだ。それではさっそくアメリカJCCの分析をしていこう。東京開催だった01年も含めた過去10年のデータを基に、過去の傾向を探っていきたい。なおデータ分析にはJRA-VAN Data Lab. とTarget frontier JVを利用した。
■表1 アメリカJCCの所属別成績(過去10年)
所属 |
着別度数 |
勝率 |
連対率 |
複勝率 |
単回収率 |
複回収率 |
美浦 | 7-7-7-65/86 | 8.1% |
16.3% |
24.4% |
49% |
73% |
栗東 | 3-3-3-28/37 | 8.1% |
16.2% |
24.3% |
40% |
51% |
アメリカJCCでまず注目したいのは所属別成績(表1参照)。出走頭数と好走馬は圧倒的に関東馬の方が多いが、勝率、連対率、複勝率、そして単・複回収率で比較すると、関東馬と関西馬は五分五分の成績だ。中央競馬は「西高東低」と言われているが、アメリカJCCに限れば、関西馬を重視する必要はないだろう。
■表2 アメリカJCCの年齢別成績(過去10年)
年齢 |
着別度数 |
勝率 |
連対率 |
複勝率 |
単回収率 |
複回収率 |
4歳 |
3-4-1-16/24 | 12.5% |
29.2% |
33.3% |
45% |
61% |
5歳 |
3-3-2-13/21 | 14.3% |
28.6% |
38.1% |
117% |
96% |
6歳 |
1-2-4-29/36 | 2.8% |
8.3% |
19.4% |
12% |
68% |
7歳以上 |
3-1-3-35/42 | 7.1% |
9.5% |
16.7% |
41% |
53% |
次に過去10年のアメリカJCCの年齢別成績をまとめたのが表2。4、5歳馬と6歳以上の馬を比較すると、圧倒的に4、5歳馬の成績が優秀。6歳以上になると勝率、連対率は一桁だが、4、5歳馬は勝率10%を超え、連対率は約29%をマークしている。昨年は7歳→7歳→6歳の決着だったが、基本的には4、5歳馬を中心に馬券は組み立てたい。
■表3 アメリカJCCの前走クラス別成績(過去10年)
前走クラス |
着別度数 |
勝率 |
連対率 |
複勝率 |
単回収率 |
複回収率 |
同クラス |
7-8-7-74/96 | 7.3% |
15.6% |
22.9% |
30% |
55% |
昇級戦 |
3-2-3-19/27 | 11.1% |
18.5% |
29.6% |
105% |
104% |
1000万下 |
1-0-1-3/5 | 20.0% |
20.0% |
40.0% |
392% |
252% |
1600万下 |
2-2-2-16/22 | 9.1% |
18.2% |
27.3% |
40% |
70% |
OPEN特別 |
0-0-2-16/18 | 0.0% |
0.0% |
11.1% |
0% |
48% |
G3 |
4-4-2-34/44 | 9.1% |
18.2% |
22.7% |
47% |
58% |
G2 |
0-1-0-12/13 | 0.0% |
7.7% |
7.7% |
0% |
14% |
G1 |
3-3-3-12/21 | 14.3% |
28.6% |
42.9% |
39% |
82% |
表3はアメリカJCCの前走クラス別成績(過去10年)。アメリカJCCは別定のG2戦だが、意外にも昇級戦組の強さが目立つ。1000万下からの昇級戦組は5頭しかいないが、2頭の好走馬が誕生しており、単・複回収率はともに100%を超える数字。1600万下からの昇級戦組も3着以内に好走した馬が6頭いて、まずまずの成績だ。しかし前走OPEN特別組になると、好走率は大きくダウン。連対馬は1頭も出ておらず、3着が2回あるのみだ。また前走G2戦組も不振。好走馬は01年2着のロードプラチナムだけしか誕生していない。
つまりアメリカJCC好走馬の前走クラスは主に昇級戦、G3戦、G1戦の3つに分けることができる。よって以下では過去のアメリカJCC好走馬を前走クラス別に分類し、その傾向を探っていこう。
■表4 過去10年のアメリカJCCの好走馬(1)
年 |
着順 |
人気 |
馬名 |
前走 |
G2戦以上の実績 |
中山芝1800m以上の実績 |
07年 |
2 |
5 |
インテレット | 菊花賞6着 | ||
06年 |
2 |
2 |
フサイチアウステル | 菊花賞5着 | セントライト記念2着 | セントライト記念2着 |
3 |
4 |
ハイアーゲーム | ジャパンCD9着 | 青葉賞1着 | ||
03年 |
1 |
1 |
マグナーテン | ジャパンC4着 | ※毎日王冠1着 | ※毎日王冠1着 |
02年 |
3 |
6 |
ボーンキング | 日本ダービー4着 | 弥生賞2着 | 弥生賞2着 |
01年 |
1 |
2 |
アメリカンボス | 有馬記念6着 | 中山記念2着 | 中山記念2着 |
00年 |
2 |
1 |
ステイゴールド | 有馬記念10着 | 天皇賞(秋)2着 | 日経賞3着 |
3 |
4 |
ゴーイングスズカ | 有馬記念6着 | 目黒記念1着 | ステイヤーズS3着 | |
99年 |
1 |
1 |
スペシャルウィーク | ジャパンC3着 | 日本ダービー1着 | 皐月賞3着 |
まず表4が過去10年のアメリカJCC好走馬(1)で、前走G1戦組をまとめたもの。前走レースは有馬記念、菊花賞、ジャパンCが中心で、中でも有馬記念組からは3頭の好走馬が出ている。前走の着順に注目すると、有馬記念組以外は5着以内が欲しいところ。有馬記念組以外の6頭中4頭は前走5着以内に該当している。有馬記念組は有馬記念6着から2頭、10着から1頭の好走馬が出ており、着順にこだわる必要はなさそうだ。
各馬の実績に注目すると、まずG2戦以上の実績がポイント。好走馬9頭中8頭はG2戦以上のレースで連対したことがあった。そして中山芝1800m以上の重賞で好走している馬も多く、好走馬9頭中7頭は中山芝1800m以上のG2戦かG1戦で3着以内に好走したことがあった。
■表5 過去10年のアメリカJCC好走馬(2)
年 |
着順 |
人気 |
馬名 |
前走 |
前走着差 |
前走斤量 |
主な重賞連対実績 |
08年 |
1 |
2 |
エアシェイディ | 中山金杯2着 | 0.3 |
57 |
中山記念2着 |
2 |
9 |
トウショウナイト | 中山金杯11着 | 0.7 |
58 |
アルゼンチン共和国杯1着 | |
06年 |
1 |
5 |
シルクフェイマス | 京都金杯9着 | 0.7 |
58 |
宝塚記念2着 |
05年 |
1 |
1 |
クラフトワーク | 中山金杯1着 | -0.2 |
57 |
中山金杯1着 |
2 |
3 |
エアシェイディ | 京阪杯3着 | 0.4 |
54 |
||
04年 |
1 |
2 |
ダンツジャッジ | 中山金杯3着 | 0.7 |
57.5 |
ダービー卿CT1着 |
03年 |
2 |
3 |
グラスエイコウオー | 中山金杯5着 | 0.4 |
56 |
NHKマイルC2着 |
3 |
2 |
アグネススペシャル | 中山金杯11着 | 1.0 |
55 |
オールカマー2着 | |
99年 |
2 |
3 |
サイレントハンター | 中山金杯1着 | -0.1 |
58 |
札幌記念2着 |
3 |
7 |
メジロスティード | 京都金杯12着 | 1.3 |
55 |
次に前走G3戦組を見ていこう(表5参照)。ほとんどが中山金杯組になるが、前走着順は1着から二桁まで様々。重要なのは前走着順より前走着差。好走馬10頭中8頭は前走着差が勝ち馬から0.7秒以内だった。また中山・京都金杯組に絞れば、9頭中6頭は前走で57キロ以上の斤量を背負っており、中山・京都金杯で軽ハンデだった馬の成績はイマイチになっている。さらに好走馬10頭中8頭は重賞連対実績があり、重賞実績がない馬は好走が難しい。
■表6 過去10年のアメリカJCCの好走馬(3)
年 |
着順 |
人気 |
馬名 |
前走 |
近5走成績 |
主な重賞実績 |
08年 |
3 |
6 |
ブラックアルタイル | クリスマスC1着 | (3.0.0.2) |
重賞初出走 |
07年 |
1 |
2 |
マツリダゴッホ | クリスマスC1着 | (2.1.0.2) |
青葉賞5着 |
3 |
6 |
シルクネクサス | 寿S1着 | (2.1.0.2) |
京都新聞杯4着 | |
04年 |
2 |
3 |
ウインジェネラーレ | 冬至S1着 | (2.0.0.3) |
ユニコーンS5着 |
02年 |
1 |
8 |
フサイチランハート | 1000万下1着 | (2.0.0.3) |
重賞初出走 |
2 |
4 |
スパークホーク | 冬至S1着 | (2.1.0.2) |
||
01年 |
3 |
9 |
コスモブレイザー | グッドラックH1着 | (1.0.1.3) |
アメリカJCC5着 |
00年 |
1 |
3 |
マチカネキンノホシ | アクアラインS1着 | (1.0.0.4) |
ラジオたんぱ杯3歳S2着 |
続いて好走率が高い昇級戦組をまとめたのが表6。絶対条件は前走で勝利を収めていることで、これは全馬に共通する。そして好走馬の近5走成績を見てみると、近5走で2勝を上げている馬が8頭中6頭いて、前走勝利に加えて近走でもう1勝が必要なようだ。また昇級戦の馬でも重賞で5着以内の実績を持っていた馬が5頭いることにも注目できるだろう。重賞出走歴があり、重賞で5着以内の実績がなかったのは02年2着のスパークホークのみで、残る2頭はアメリカJCCが重賞初出走だった。つまり昇級戦組のアメリカJCC好走馬は重賞5着以内の実績を持つ馬か、重賞初出走になる馬の2パターンがあるようだ。
■表7 過去10年のアメリカJCCの好走馬(4)
年 |
着順 |
人気 |
馬名 |
前走 |
前年の中山重賞実績 |
05年 |
3 |
5 |
ユキノサンロイヤル | ニューイヤーS3着 | アメリカJCC3着 |
04年 |
3 |
8 |
ユキノサンロイヤル | ニューイヤーS11着 | 中山記念5着 |
01年 |
2 |
3 |
ロードプラチナム | ステイヤーズS5着 | ステイヤーズS5着 |
最後に表7が過去10年のアメリカJCC好走馬(4)で、好走率が低い前走OPEN特別組とG2戦組をまとめたもの。好走馬3頭に共通しているのは前年の中山で行われたG2戦で5着以内に好走したことがあること。ただ過去10年で3例しかなく、あくまでも参考程度としておこう。
<結論>
それでは今年のアメリカJCC出走予定馬を前走レース別に分類してみよう。
■表8 今年のアメリカJCC出走予定馬(1)
馬名 |
年齢 |
前走 |
G2戦以上の実績 |
中山芝1800m以上の重賞実績 |
アルナスライン | 5 |
有馬記念6着 | 菊花賞2着 | |
エアシェイディ | 8 |
有馬記念3着 | アメリカJCC1着 | 有馬記念3着 |
ドリームジャーニー | 5 |
有馬記念4着 | 朝日杯FS1着 |

始めに表8が今年のアメリカJCC出走予定馬(1)で、前走G1戦組をまとめたもの。今年はアルナスラインを始め3頭が該当し、いずれも有馬記念組。G2戦以上の実績では各馬がG2戦連対の条件をクリアしているが、中山芝1800m以上の重賞実績ではエアシェイディのみが該当。この組からはエアシェイディが最も過去の好走馬に近いと言えるが、アルナスラインとドリームジャーニーは好走率の高い5歳馬。また過去の有馬記念組の好走馬と比較して、今年の3頭は有馬記念の着順が良く、アルナスラインとドリームジャーニーを割り引く必要もないだろう。そのため今年は3頭とも推奨馬として挙げておこう。
■表9 今年のアメリカJCC出走予定馬(2)
馬名 |
年齢 |
前走 |
前走着差 |
前走斤量 |
主な重賞連対実績 |
キングストレイル | 7 |
中山金杯7着 | 0.4 |
57.5 |
セントライト記念1着 |
グラスボンバー | 9 |
中山金杯9着 | 0.9 |
57 |
オールカマー2着 |
ネヴァブション | 6 |
中山金杯5着 | 0.2 |
57.5 |
日経賞1着 |
マイネルキッツ | 6 |
中山金杯4着 | 0.2 |
56 |
次に前走G3戦組を見ていこう(表9参照)。今年はキングストレイルを始め4頭が該当し、いずれも中山金杯組。前走着差が0.7秒以内で前走斤量が57キロ以上だった馬はキングストレイルとネヴァブション。2頭ともに重賞連対実績もあり、過去の好走馬の傾向と合致している。
■表10 今年のアメリカJCC出走予定馬(3)
馬名 |
年齢 |
前走 |
近5走成績 |
主な重賞実績 |
ドットコム | 4 |
美浦特別1着 | (2.0.0.3) |
|
メイショウレガーロ | 5 |
グレイトフルS1着 | (2.0.0.3) |
札幌記念5着 |

表10は今年のアメリカJCC出走予定馬(3)で、昇級戦組をまとめたもの。今年はドットコムとメイショウレガーロが該当。2頭ともに前走で勝利をあげ、近5走中2勝の条件もクリア。しかしドットコムは重賞経験があり、重賞5着以内の実績がない点が割引。一方メイショウレガーロは重賞5着以内の実績があるので、昇級戦組からはメイショウレガーロのみを推奨馬としたい。
■表11 今年のアメリカJCC出走予定馬(4)
馬名 |
年齢 |
前走 |
前年の中山重賞実績 |
ゴーウィズウィンド | 10 |
ステイヤーズS12着 | |
サンツェッペリン | 5 |
ニューイヤーS12着 | |
チェストウイング | 8 |
目黒記念14着 | |
トウショウシロッコ | 6 |
ディセンバ―S1着 | オールカマー3着 |
最後に前走OPEN特別組とG2戦組をまとめたのが表11。前年の中山重賞実績を持っているのはトウショウシロッコだが、これまで6頭の推奨馬を上げている上に、過去10年で連対馬がいない前走OPEN特別組を積極的に推せる材料もないだろう。そのためこの組からの推奨馬はなしとしたい。
よってもう一度話をまとめると、前走有馬記念組からアルナスライン、エアシェイディ、ドリームジャーニー、前走G3戦組からキングストレイルとネヴァブション、そして好走率の高い昇級戦組からメイショウレガーロの計6頭を今年のアメリカJCC推奨馬としたい。ライタープロフィール
フランキー森山(ふらんきー もりやま)
1984年1月、神奈川県生まれ。重賞レースにおいては、毎年同じようなステップで出走してくる馬が多いことから、データ競馬の有効性に着目。データde出〜たでは主に過去の好走馬の実績を重視し、予想を展開している。馬券を買うのはもちろん、競馬場へ行くことも好きなタイプ。好きなレースは平安S。05年に中央競馬の全場踏破達成。その後は、地方、海外の競馬場へもたびたび訪れている。