データde出〜た
第130回 極限のスピード比べは軽さが命!?
2007/7/11(水)
今週から新潟と小倉が開幕。日曜日の新潟メインレースを飾るのは、一直線の芝1000mで行われるアイビスサマーダッシュ。昨年から開幕週に日程変更。極限のスピード比べを堪能できるはずが、あいにくの雨。その結果、軽量の牝馬が上位を独占したが、果してこれは偶然だったのだろうか? 8月開催時の例も含めて検討する。
サマースプリントシリーズの第二弾。シリーズ初戦の函館スプリントSはアグネスラズベリが優勝。今年の夏も「牝馬強し!」の印象を抱かせる出だしとなった。今週のアイビスサマーダッシュも牝馬が頑張るレース。昨年、同レースを担当したヒロデクロス氏もそのことを指摘。結果、牝馬のワンツースリーであった。
アイビスSDは昨年から2回新潟の開幕週に移行。過去のデータ・傾向に不都合が生じる可能性があったが、特別大きな変化はなかったように思える。したがって、01年の第一回からのデータを元に、占っていきたい。データ分析は、JRA-VAN
Data Lab. とTarget
frontier JVを利用した。
■表1 アイビスSD出走馬の性別成績
性 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
牡馬・セン馬 | 2-2-4-42/50 | 4.0% | 8.0% | 16.0% |
牝馬 | 4-4-2-21/31 | 12.9% | 25.8% | 32.2% |
手始めにおさらいとして、過去6年のアイビスSDの性別成績をチェックしておこう(表1参照)。出走頭数は牡馬・セン馬が多いものの、連対数では牝馬が2倍の数字。勝率、連対率、複勝率いずれも牝馬が優秀な成績を残している。基本事項として、ここはキッチリ押さえておきたいところだ。単純に「牝馬が強い」という認識でもいいのだが、別の角度から見てみると、さらに面白いことがわかる。
■表2 アイビスSD出走馬の斤量別成績
斤量 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
51キロ | 2-1-0-1/4 | 50.0% | 75.0% | 75.0% | 990% | 302% |
53キロ | 0-0-2-1/3 | 0.0% | 0.0% | 66.7% | 0% | 290% |
54キロ | 2-3-2-20/27 | 7.4% | 18.5% | 25.9% | 55% | 64% |
56キロ | 2-2-2-38/44 | 4.5% | 9.1% | 13.6% | 10% | 22% |
57キロ | 0-0-0-1/1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
58キロ | 0-0-0-1/1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
59キロ | 0-0-0-1/1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
それは斤量別成績(表2参照)。結論から言うと、軽い斤量の馬ほど優勢。51キロ、54キロ、56キロの馬がそれぞれ2勝を挙げているが、51キロの馬は4頭出走して2頭が勝利。53キロの馬は連対こそないが、3頭が出走して2頭が3着。複勝率でみると、51キロが75%とトップで、斤量が上がるごとにキレイに下がっている。一方、57キロ以上の斤量を背負った馬は、わずか3頭の出走だが好走例ナシ。05年にはこのレース3勝目を狙ったカルストンライトオが59キロで4着に敗れた。
このレースは賞金別定なので、斤量が性齢も示している。つまり、アイビスSDで51キロという斤量は3歳の牝馬しか背負えないということ。また、53キロという斤量は4歳以上の馬では背負えない。本質は単純に表1に集約されているのかもしれないが、芝1000mのレースは道中の遊びの部分が少ない特殊なレースだけに、わずかな斤量差が大きい可能性もある。よって、今回は斤量面にこだわってみたい。
■表3 アイビスSDを斤量51キロで3着以内に好走した馬
年 | 着順 | 人気 | 馬名 | 前走成績 | 芝OP実績 |
06年 | 1 | 7 | サチノスイーティー | 白河S1着 | |
2 | 3 | マリンフェスタ | バーデンバーデンC4着 | ||
05年 | 1 | 7 | テイエムチュラサン | 新潟日報賞6着 | 橘S2着 |
まず、過去6年のアイビスSDで斤量51キロを背負って3着以内に好走した馬を見ていく(表3挿入)。昨年優勝したサチノスイーティーは前走1000万クラスを勝ち上がったばかりだが勢いは十分。2着のマリンフェスタも格は見劣ったものの、前走のバーデンバーデンCで大きく負けておらず、好走も納得がいくところ。注目は05年の優勝馬テイエムチュラサン。過去にOPの橘Sで2着の実績があったものの、前走同じ新潟芝1000mの新潟日報賞で6着に負けていながら巻き返した。好走できなかったのが、前走未勝利を勝ったばかりの01年ゲイリートリック(12着)だけということで、斤量51キロの馬はかなり警戒する必要があるだろう。
■表4 アイビスSDを斤量53キロで3着以内に好走した馬
年 | 着順 | 人気 | 馬名 | 前走成績 | 芝OP実績 |
03年 | 3 | 10 | トーセンオリオン | NHKマイルC10着 | クロッカスS1着 |
01年 | 3 | 1 | カルストンライトオ | 北九州短距離S1着 | 葵S1着 |
次は斤量53キロで3着以内に好走した馬(表4参照)。過去2頭おり、いずれも3歳の牡馬。昨年、ステキシンスケクンが2番人気に推されて12着に大敗したが、同様のローテーションで03年のトーセンオリオンは3着に好走している。過去に芝のOPで勝ち鞍がある馬に注意したい。
■表5 アイビスSDを斤量54キロで3着以内に好走した馬
年 | 着順 | 人気 | 馬名 | 前走成績 | 芝OP実績 |
06年 | 3 | 6 | レイズアンドコール | さくらんぼS1着 | |
05年 | 2 | 2 | ウェディングバレー | 新潟日報賞2着 | |
04年 | 2 | 3 | タカオルビー | 新潟日報賞1着 | 福島民報杯3着 |
03年 | 1 | 6 | イルバチオ | 関屋記念5着 | NSTオープン3着 |
2 | 5 | ティエッチグレース | バーデンバーデンC1着 | ||
02年 | 3 | 5 | タイキメビウス | 飯豊特別1着 | |
01年 | 1 | 2 | メジロダーリング | 函館スプリントS1着 | アンドロメダS1着ほか |
次に斤量54キロで3着以内に好走した馬(表5挿入)。過去7頭の好走馬が出ており、すべて牝馬。年齢は4歳から6歳。そして重要になるのが前走成績。03年1着のイルバチオを除く6頭は、前走1000万クラス以上の芝1000〜1400mで連対していた好調馬。イルバチオも前走関屋記念5着と、決して悪くない成績。過去に芝のOPクラスで好走実績があれば、なおよし。
■表6 アイビスSDを斤量56キロで3着以内に好走した馬
年 | 着順 | 人気 | 年齢 | 馬名 | 前走成績 | 備考 |
05年 | 3 | 4 | 4 | スピニングノアール | 疾風特別3着 | 前走:疾風特別3着(58キロ) |
04年 | 1 | 1 | 6 | カルストンライトオ | 函館スプリントS3着 | 02年優勝馬 |
3 | 4 | 6 | ネイティヴハート | NSTオープン2着 | ||
02年 | 1 | 2 | 4 | カルストンライトオ | 小倉日経OP3着 | 3走前:TUF杯1着(58キロ) |
2 | 1 | 5 | ブレイクタイム | NSTオープン2着 | 4走前:安田記念2着(58キロ) | |
01年 | 2 | 4 | 6 | シンボリスウォード | 札幌日刊S杯5着 | 3走前:バーデンバーデンC2着(58キロ) |
最後に斤量56キロで3着以内に好走した馬(表6挿入)。過去6頭が該当し、同斤量の複勝率は13.6%。ここは当たりを引くのが難しいゾーンだが、何はともあれ前走成績はチェックしたいところ。全6頭は前走1000万クラス以上の芝1400m以下のレースに出走して5着以内の成績を収めていた。そして、近5走以内に斤量58キロ以上を背負って3着以内に好走した経験があったことにも注目。04年優勝のカルストンライトオも含めれば、6頭中5頭が今回よりも2キロ重い斤量で最近結果を残していた。このあたりも取捨材料に取り入れてみたい。
【結論】
それでは今年のアイビスSDを占っていこう。出走予定馬は下の表7の通り。
■表7 今年のアイビスSD出走予定馬順位 | 馬名 | 性齢 | 斤量 | 前走成績 | 備考 |
7 | クーヴェルチュール | 牝3 | 51 | バーデンバーデンC1着 | 福島2歳S1着 |
21 | モルトグランデ | 牡3 | 53 | あじさい賞1着 | 橘S3着 |
2 | サチノスイーティー | 牝4 | 54 | かきつばた記念2着 | 06年優勝馬 |
9 | サンアディユ | 牝5 | 54 | 京葉S12着 | |
10 | モンローブロンド | 牝5 | 54 | 高松宮記念18着 | ファンタジーS2着 |
15 | ショウナンパントル | 牝5 | 54 | マーメイドS12着 | 阪神JF1着 |
19 | テイエムチュラサン | 牝5 | 54 | バーデンバーデンC10着 | 05年優勝馬 |
3 | アイルラヴァゲイン | 牡5 | 56 | オーシャンS1着 | 3走前:サンライズS1着(58.5キロ) |
4 | ジョイフルハート | 牡6 | 56 | ガーネットS13着 | |
5 | スピニングノアール | 牡6 | 56 | CBC賞競走中止 | |
8 | ナカヤマパラダイス | 牡4 | 56 | CBC賞2着 | |
11 | フサイチホクトセイ | 牡6 | 56 | 京阪杯11着 | 3走前:トリトンS1着(58キロ) |
12 | ダイワメンフィス | 牡6 | 56 | 東京新聞杯14着 | |
13 | ロイヤルキャンサー | 牡9 | 56 | バーデンバーデンC3着 | |
14 | シルヴァーゼット | 牡6 | 56 | バーデンバーデンC2着 | |
20 | プレミアムボックス | 牡4 | 56 | さくらんぼ特別1着 | |
1 | ゴールデンキャスト | 牡7 | 57 | CBC賞13着 | |
6 | ギャラントアロー | 牡7 | 57 | バーデンバーデンC12着 |
注目の51キロの斤量を背負う3歳牝馬で出走を予定しているのはクーヴェルチュール。前走49キロという超軽量だったが、休み明け、初の古馬相手の条件となったバーデンバーデンCを優勝。なおかつ、2歳時にOPの福島2歳S勝ちの実績があるのもプラス材料。ここは最有力馬の1頭として推奨してみたい。
同様に有力馬として推せるのが、昨年のアイビスSDの優勝馬サチノスイーティー。前走はかきつばた記念で2着という成績。ダート戦だが、好調子と捉えられる。56キロを背負う4歳以上の牡馬ではアイルラヴァゲインに注目。前走オーシャンS1着、3走前のサンライズSではトップハンデ58.5キロで快勝の実績。前走から間隔が開いた点がどうかだが、データからは推してみたいところ。
あとは、次点で斤量53キロの3歳牡馬モルトグランデ。前走1000万クラスのあじさい賞で1着、OPクラスの実績は一応橘Sで3着がある。あとは、近走斤量58キロ以上で好走実績がない点が割引だが、前走OPの芝1200mで連対しているナカヤマパラダイス、シルヴァーゼット。
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2007/6/17 福島11R バーデンバーデンC 1着 2番 クーヴェルチュール |
2007/3/3 中山11R 夕刊フジオーシャンS(G3) 1着 3番 アイルラヴァゲイン |
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
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