ハーツクライの活躍

 

●ディープを下した実力を世界で証明

 ディープインパクトとともに現在の日本競馬界を代表するトップホースの地位についたハーツクライ。今年上半期の世界での活躍で同馬を取り巻く環境、世間の評価は大きく変わった。約10ヶ月前、昨年末の有馬記念では4番人気。前走ジャパンCで2着に好走したが、ゼンノロブロイ、デルタブルースより低い評価だった。ファンの注目は無敗の4冠を目指すディープインパクトの走り一点に集中。そう言っても過言ではなく、ディープインパクトと肩を並べるライバル的な存在ではなかった。

 しかし、競馬は何が起こるかわからない。追い込み一手の脚質だったハーツクライは、好スタートから果敢に先行。最後の直線に入っても脚色は衰えず、外からの猛追するディープインパクトを半馬身抑えて優勝、初G1制覇を成し遂げたのだ。ディープインパクトの勝利を信じて疑わなかった中山競馬場の約16万人のファンが、一瞬にして静まり返った。同じ日本馬でありながらハーツクライは、まるでヒール役。無敗の絶対王者を倒した功績は、にわかには受け入れがたい事実だった。だが、ハーツクライの実力が本物であったことはすぐに証明された。


 06年3月25日、ナドアルシバ競馬場で行われたドバイシーマクラシック(G1・芝2400m)。ハーツクライが次走選んだのは世界の強豪を相手にした海外の競走だった。有馬記念で見事な手綱捌きを見せた鞍上のC・ルメール騎手の取った次なる戦法は逃げ。前走のレースぶりから考えられないわけではなかったが、驚くべき脚質転換。しかし、決して無理な走りではなく、折り合いはスムーズ。ハナへ行っても持ち味の終いの末脚はしっかりと発揮し、直線は完全に独走。直線半ばで勝利を確信できるワンサイドゲーム。結局、2着のコリアーヒルに4馬身1/4差をつけての圧勝だった。

 同レースには本当の欧州トップクラスの馬の参戦はなかったが、前走の有馬記念がフロックではなかったと、証明する価値ある勝利だった。格が違うと言わんばかりの楽勝劇に、陣営の期待・野望も増すばかり。レース後、橋口弘次郎調教師は早々と次走キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドS(G1・芝2400m)への挑戦を公言したのだ。

■2006年ドバイシーマクラシック
着順 馬名 性齢 斤量 タイム(着差) 所属 騎手 厩舎
1 ハーツクライ 牡5 56 2.31.89 C・ルメール 橋口弘次郎
2 コリアーヒル セ8 56 4馬身1/4 D・マッキョウン A・スウィンバンク
3 フォルスタッフ 牡4 56 1馬身1/4 南ア J・ムルタ M・ドゥ・コック


 同年7月26日、イギリスのアスコット競馬場。伝統の大一番を前に役者も揃った。前年の凱旋門賞馬ハリケーンラン、同年のドバイワールドCの勝ち馬エレクトロキューショニスト。前走以上の難敵との激しい戦いとなったが、ハーツクライは一歩もヒケを取らなかった。道中3番手の追走から直線は外に出し、3強の叩き合い。直線半ばで、一旦はハーツクライが先頭。しかし、内からハリケーンランの猛烈な末脚が炸裂、右に馬体を併せていたエレクトロキューショニストも執念の二枚腰を発揮。結局、1着のハリケーンラン、2着のエレクトロキューショニストから半馬身づつ遅れての3着に敗れたが、手に汗握るゴール前の攻防は見ごたえ十分だった。

 この一戦は間違いなく世界最強馬の座を懸けた戦い。日本調教馬はこれまで、何度か海外のG1競走を勝っているが、やはり伝統と格式がある“キングジョージ”は特別なレース。ハーツクライは悔しい惜敗を喫したが、日本調教馬のレベルの高さと、世界の頂点との距離はハッキリと認識することができた。「もしディープインパクトがあの場にいたら──」。そんな想像も可能になり、そこには決して小さくない希望がある。ハーツクライが果たせなかった世界制覇の夢は、今、ディープインパクトに託されようとしている。

■2006年キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドS
着順 馬名 性齢 斤量 タイム(着差) 所属 騎手 厩舎
1 ハリケーンラン 牡4 60.5 2.30.29 C・スミヨン A・ファーブル
2 エレクトロキューショニスト 牡5 60.5 1/2 UAE L・デットーリ S.B.スルール
3 ハーツクライ 牡5 60.5 1/2 C・ルメール 橋口弘次郎

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